中学受験

低学年で「そろばん教室」「公文式」に通っていれば楽勝?中学受験で必要な計算力や難関校対策の誤解

中学受験の合否に与える影響が大きい算数。低学年のうちにそろばん教室や公文式の教室に通ったり、大手中学受験塾で近年よくおこなわれているパターン学習をすることにより、本当に必要な力は身につくのでしょうか。

西村 創

執筆者:西村 創

学習塾・個別指導塾ガイド

低学年でそろばん教室や公文式の教室に通っていれば、中学受験で必要な計算力はつくのでしょうか。また近年、中学受験の大手塾でよくおこなわれる、解法を覚えて類題を繰り返すパターン学習の算数指導を受けていれば、難関校の入試問題に対応できるようになるのでしょうか。

中学受験算数の勉強法でよくある誤解について、自宅で取り組める問題集をご紹介しながらアドバイスします。
 

そろばん教室や公文式の教室のメリットと、中学受験で試される計算力

そろばんは、集中力が鍛えられるだけでなく、視覚と指先を使うことで右脳が鍛えられて記憶力や創造力を高められる効果があるといわれています。またそろばんで計算練習を繰り返すことにより、情報を早く正しく処理できるようになるというメリットもあります。

公文式の教室も、たし算、ひき算、かけ算……と一段ずつレベルを上げていきながら、繰り返し量をこなして計算することにより、計算の速さと正確さを身につけることができます。時間を計測して取り組むため、そろばんと同じように集中力も養われます。学習習慣も身につくというメリットもあります。

しかし実は、そろばんを5年以上やっている子でも、公文式の教室に小さな頃から通っていたという子でも、中学受験で求められる計算を工夫する力がないというケースは珍しくありません。そろばんを長く続けている子でも、意外とありえない桁ミスをすることもあるものです。

また、そろばんをやってきた生徒は、慶應中等部のような難関校でも出題される「虫食い算」が苦手な傾向があります。それは、筆算とそろばんでは、計算する際の考え方が異なるからです。そろばんがいいかダメかということではなくて、「そろばんをやってるから、中学受験算数の計算は楽勝!」とはならない、ということです。

そろばん同様に公文式の教室でも、計算を工夫する力は養われにくいでしょう。公文の先生が中学受験指導の先生と同じように「これは、こうするほうが早く簡単に計算できるよ」と教えるのはまれですし、そもそも公文は、先生が教えるものではありません。プリントの問題も、工夫することを前提に作られているわけではありません。
東大文の会式・東大脳さんすうドリル 基礎/画像提供:Amazon

東大文の会式・東大脳さんすうドリル 基礎』本郷東大・文の会(著), 田中 としかね(著)他/画像提供:Amazon

低学年の時期に中学受験で必要となる計算の工夫ができる子にしたいということであれば、SAPIXから市販されている『きらめき算数脳(進学教室サピックス小学部)』が有名です。

また筆者の受験指導仲間である、やまもと算数・数学塾の山本尚武氏によると低学年の時期に計算の工夫ができる子にしたいということであれば、『新 面積迷路(Gakken)』『エルカミノ式 理系脳をつくるひらめきパズル(幻冬社)』『東大・文の会式 東大脳さんすうドリル 基礎編(幻冬社)』の3冊をおすすめするとのこと。

また、現在受験Labの代表を務め『中学受験は算数で受かる(すばる舎)』という本を出版された州崎真弘氏によると、受験間際の小学6年生ということであれば、『中学入試 でる順過去問 計算 合格への920問(旺文社)』が、計算問題集にしては解説がわかりやすく見やすくておすすめとのことです。

なお『新 面積迷路』は、ニンテンドーSwitchのソフト『ひらめきパズル!面積迷路』として、なんと500円でダウンロードできます。ゲーム感覚で楽しみたいというお子さんなら、ニンテンドーSwitch版もおすすめです。
 

大手塾のパターン学習では行き詰まる!? 難関校合格のための算数勉強法

また、難関校の問題は基礎を積み上げれば解けるようになるというのもよくある誤解です。誤解とまでは言い切れない部分もありますが、いつまでも基礎ばかりを固めようと努力するだけでは難関校の合格に手は届きません。

近年の大手塾の算数指導は、例題で解法を覚えさせて、類題で数字を変えて練習をさせるパターン学習が多くなっています。しかし、この方法だと行き詰まる可能性があります。実際、行き詰まっている子が多くなっているのが現状です。

もちろん基礎は大事ですが、難関校を目指しているなら、月刊誌『中学への算数(東京出版)』の難問に2日に1問くらいのペースで取り組んでみてはいかがでしょうか。難関校を目指すのであれば、基礎の反復練習だけでなく、あえて難問にチャレンジしていきたいものです。与えられた未知の問題に対して、これまで学習してきた基礎知識を組み合わせて類推し、その場で新しい解法を生み出す力は、難問にチャレンジすることでしか得られない思考です。その力こそが、難関校の入試問題に対応できる力につながります。

塾の宿題が多くてそこまで手が回らなければ、宿題は取捨選択しても大丈夫。すべてをやる必要はありません。難関校をめざすのであれば、いつまでも基礎の反復練習にとどまっていないで、難問にチャレンジしていきましょう。

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