Q:家族構成によって「ふるさと納税」の上限額が違うのは、なぜでしょうか?
「ふるさと納税をする場合、独身や共働き夫婦の場合と、高校生や大学生の子どもがいる人では上限額が違うと聞きましたが、上限額が違うのはなぜなのでしょうか?」(50代・会社員・高校生の子ども2人)家族構成で、ふるさと納税の上限額は変わる? どうして?
A:家族構成によって、そもそも支払っている税金が違うためです
ふるさと納税によって全額控除される年間上限額の目安を調べるためには、総務省から発表されている資料を見てみるといいでしょう。・総務省「ふるさと納税ポータルサイト」
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/mechanism/deduction.html
全額控除されるふるさと納税額(年間上限)の目安(出典:総務省「ふるさと納税ポータルサイト」から抜粋/筆者一部加工)※1「共働き」は、ふるさと納税を行う方本人が配偶者(特別)控除の適用を受けていないケースを指します。(配偶者の給与収入が201万円超の場合)※2「夫婦」は、ふるさと納税を行う方の配偶者に収入がないケースを指します。
※3「高校生」は「16歳から18歳の扶養親族」を、「大学生」は「19歳から22歳の特定扶養親族」を指します。※表は、住宅ローン控除や医療費控除等、他の控除を受けていない給与所得者のケースとなります。社会保険料控除額について、給与収入の15%と仮定しています。
図表では、「ふるさと納税を行う人の給与収入」による区分だけでなく、「独身又は共働き」「共働き+子1人(大学生)」「夫婦+子2人(大学生と高校生)」といったような「ふるさと納税を行う人の家族構成」が区分されています。
ふるさと納税額が全額控除される年間上限に、家族構成が影響を与えるため、このような区分となっています。
なぜなら、ふるさと納税の上限額を計算する上では、どういった「所得控除」が適用されるかどうかがポイントとなるためです。家族構成別にみると、以下のような所得控除が適用される・されないことになります。
- 「独身又は共働き」……配偶者(特別)控除も扶養控除も適用がない
- 「夫婦」……配偶者(特別)控除の適用がある
- 「高校生」……「16歳から18歳」の扶養控除が受けられる
- 「大学生」……「19歳から22歳」の特定扶養控除が受けられる
したがって、たとえば「独身又は共働き」の人と比べて、「夫婦+子2人(大学生と高校生)」の人は、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除等の適用がされるため、納税額がそもそも少なくなっています。結果、ふるさと納税の上限額が下がるということになります。
実際に、年収500万円の「独身又は共働き」の人のパターンと、「夫婦+子2人(大学生と高校生)」のパターンで課税所得にどの程度、影響があるのかを計算してみましょう。
※資料の前提の通りに、住宅ローン控除や医療費控除等、他の控除を受けていない給与所得者のケース。社会保険料控除額について、給与収入の15%と仮定しています
・独身又は共働きの人の場合
500万円(給与の年収)-144万円(給与所得控除額)-75万円(社会保険料控除)-48万円(基礎控除)=233万円(課税所得金額)
・夫婦で子2人(大学生と高校生)の人の場合
500万円(給与の年収)-144万円(給与所得控除額)-75万円(社会保険料控除)-38万円(配偶者控除)-63万円(特定扶養控除)-38万円(扶養控除)-48万円(基礎控除)=94万円(課税所得金額)
所得税の場合も住民税の場合も、収入から必要経費を差し引き、そこから所得控除額を差し引いたものが課税所得、つまり税率が課される所得となります。
課税所得が少なくなれば、当然、ふるさと納税が適用される前の所得税と住民税が少ないということになります。
実際には、ふるさと納税の上限額には、15種類のすべての所得控除が影響してきます。資料で想定している「住宅ローン控除や医療費控除等、他の控除を受けていない給与所得者のケース」「社会保険料控除額について、給与収入の15%」以外にも、所得控除がある人はこの目安よりも上限額が下がる、ということを押さえておきましょう。
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