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ブラックな職場がタイムループを可能にした?
物語はとてもシンプルです。小さな広告代理店は激務のあまり社員は全員泊まり込み。会社で朝を迎えると、再びプレゼン資料作りに取り掛かります。ところが吉川(円井わん)は、後輩二人にこうささやかれるのです。「先輩、僕たち同じ1週間を繰り返しています!」
そんな馬鹿な!と相手にしなかった吉川ですが、後輩に「朝、窓にぶつかる鳩を覚えておいてほしい」と言われます。すると翌朝、吉川は鳩が窓にぶつかる音で目覚め、やっと気づくのです。「そういえば同じ仕事を繰り返している……!」と。 小さな会社なのでみんなハードワーク! それがタイムループを可能にしました。忙しすぎて毎日同じことをしているのに気づかないんです。
そして物語は、社員一人ひとりに、タイムループの真実を信じてもらうために、あれこれ策を練るところが描かれます。それと同時に、彼らは会社員として仕事もしなくてはいけない。ところが、同じ1週間を繰り返しているので、なんと仕事は好転していくのです。 同じミスを繰り返さないように気をつけたり、クライアントの注文を事前に把握しているのでプレゼンがうまくいったり、仕事がサクサクはかどっちゃう。タイムループを逆手にとって事態が好転していくところが楽しいんですよ!
上司に気づかせるための「プレゼン大作戦」が最高!
しかし、タイムループから逃れないと明日は来ない。自分たちの未来はないということなので、吉川たちは原因を探り、元の世界に戻ろうとします。そして原因は、部長(マキタスポーツ)にあることを突き止めるのです。部長だけがタイムループに気づいていないんです。 そこで、みんなで協力して、上司にタイムループを気づかせるためにあの手この手を繰り出していくのですが、特に上司にタイムループを気づかせるためのプレゼンが最高! 同じことの繰り返しで、こんなに笑えるなんて。これはもう演出と脚本の勝利ですね!マキタスポーツさんに最優秀助演男優賞を!
この映画の素晴らしさはタイムループの楽しさだけじゃなく、みんなで協力し合って、ひとつの目標を達成することの大切さを感じさせ、それが仕事につながっていくところです。冒頭は、社員同士、たいした会話もなく、ボロボロになりながら仕事をしているんですが、タイムループをなんとかしようと行動に移すようになってからは、お互いに協力し合い、社内の風通しが良くなっていくんですよ。筆者はお仕事映画が大好きなので、ワクワクする展開でした。 また、マキタスポーツさんが演じる上司が、愛嬌があり、憎めない魅力を放っていて、この上司のキャラクターがこの映画を成功に導いているといっても過言ではないでしょう。個人的には2022年の最優秀助演男優賞を差し上げたい気持ちです!
世界でも類を見ないタイムループ映画?
後半のハイライトは、上司の秘密を中心にタイムループを止めるための大作戦なのですが、仕事について、人生について、しみじみ考えさせられる展開。こんな濃厚な内容で上映時間が約80分ですから、本当に素晴らしい! タイムループ映画は、『恋はデジャ・ブ』(1993)、トム・クルーズ主演映画『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014)や『パーム・スプリングス』(2020)が代表的。そして、この映画と同時期に公開された橋本環奈主演映画『カラダ探し』(2022)もタイムループ映画です。つまり、映画ネタとして人気の設定なのですが、1週間が繰り返されるというのは、ちょっと珍しいかも。スカッと楽しく、めちゃくちゃ笑えて、かつ、感動もある映画を見たいという人にオススメの『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』。ぜひ劇場でご覧ください!
『MONDAYS/このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』
2022年10月14日(金)より、東京・渋谷シネクイント、大阪・TOHOシネマズ梅田、名古屋・センチュリーシネマ先行公開、2022年10月28(金)より全国にて順次公開。監督:竹林亮
脚本:夏生さえり、竹林亮
出演:円井わん、マキタスポーツ、長村航希、三河悠冴、八木光太郎、高野春樹(高野のタカはハシゴダカ)、島田桃依、池田良、しゅはまはるみ
配給:PARCO