俳優だからこそ、届けられる思い
――脚本を読んだとき「この物語をみんなに届けなくては」と思ったとおっしゃっていますが、「届けたい」という思いの根っこにあるものは?奈緒:この作品に限らず、全ての作品がそうなのですが、こういうお仕事をしているからこそ、届けられるものがあると思います。私、原作を読んだとき、最後に泣いてしまったんです。
シイちゃんは無鉄砲なところもありますが、人生と真剣に向き合って、どうやって生きるか常に闘っている。その姿が素晴らしいなと。この物語は、希望や勇気を与えてくれるので、絶対に皆さんに届けたいと思ったんです。 ――特に、マリコと同じような辛い経験をした方に届くといいなと思うのですが、奈緒さんは、そういう方にどんな言葉をかけますか?
奈緒:マリコのような思いを抱えた方には「生きているだけで絶対に誰かのためになっている」と伝えたいです。
毎日キツいな、嫌だなと思ったときは、一息ついて、明日まで生きてみようと思ってほしい。そして、そんな夜を繰り返しながら、いつか「この世界で生きていてよかった」と思える瞬間が来ると思うんです。私たちも同じように生きていくので、一緒にそんな未来を見られたら、うれしいなと思います。
完成した映画を見て、涙……
――タナダユキ監督も原作に衝撃を受けて、映画化を決めたようですが、タナダ監督の演出はどうでしたか?奈緒:タナダ監督とは最初に、シイちゃんとマリコの関係性について「ふたりのような言葉にできない親密な人間関係ってあるのではないか」という話をしました。マリコが命を絶ったことは悲しいけれど、悲しい物語ではなく、ふたりの関係に見える美しさを映画の中に残せたら……という思いも監督と共有できました。
最初にちゃんとお話できたので、撮影は何テイクも重ねることなく、スムーズに進みました。タナダ監督が誰よりも原作やキャラクターを大切にしていることは俳優側にも伝わっていたので「監督についていけば大丈夫だ」という信頼がありましたね。
――完成した映画を見た感想は?
奈緒:原作の最後のページをめくって涙が止まらなくなったときと同じ感動がありました。それも永野芽郁ちゃんが演じているシイちゃんに会えた感動は大きかったです。試写が終わった後、涙が止まらなくて、芽郁ちゃんとふたりで泣いていました。
>次ページ:俳優養成スクールと『半分、青い。』(NHK)で人生が変わった