鉄道

鉄道の春ダイヤ改正、「減便」が相次ぐ中で朗報といえる変更ポイントは

鉄道各社の春のダイヤ改正。2022年は3月12日から各社一斉に改訂された。例年と少々異なり、目を惹くのがコロナ禍の影響での利用者減に伴う減便ダイヤである。その要点について、首都圏をメインにご紹介しよう。

野田 隆

執筆者:野田 隆

鉄道ガイド

毎年恒例となっている鉄道各社の春のダイヤ改正。2022年は3月12日(土曜)から各社一斉に列車ダイヤが改訂された。例年だと、新しい列車など華やかな話題に包まれるのだが、今年は少々異なる。もちろん、新型車両の登場もあるとはいえ、目を惹くのがコロナ禍の影響による利用者減に伴う減便ダイヤである。そのポイントについて、首都圏をメインにご紹介しよう。
 

JR東日本、臨時列車が増えた新幹線、在来線は編成短縮も

はやぶさ

東北新幹線「はやぶさ」は一部列車が臨時列車化される

東北新幹線、上越新幹線など多くの新幹線が走るJR東日本では、在来線を含めて運行本数を平日で239本減らす。全体で2%減り、削減数はJR東日本発足(1987年)以来、最大規模となる。

新幹線に関しては、列車の廃止ではなく、定期列車の一部を臨時列車化することで本数を調整する。例えば、東北新幹線の最速列車「はやぶさ」の場合、これまでの定期列車は58本だったが、13本を臨時列車にする。これにより利用が見込める時期はこれまで通りとなるものの、閑散期には運転本数が45本にまで減少する。

山形新幹線「つばさ」に関しては、列車本数は32本と変わらない。しかし、自由席車を廃止して全車指定席となる。ある意味、値上げして増収を図ろうとしているかにもみえる。例えば、東京~山形を利用する場合、810円の値上げとなる。ただし、これまでの指定料金よりは安くなるため、指定席利用に関して比較をすると、改定後は100円安くなる。

上越新幹線も、定期列車の一部を臨時列車とする。さらに、北陸新幹線でお馴染みのE7系を追加投入するので、全席コンセント付きの新型車両に遭遇する確率は高まる。快適性が向上することになろう。

・山手線も減便
在来線

在来線は1時間当たりの本数が若干減少する

在来線、とくに首都圏の線区では、ラッシュ時の時間帯の本数が若干減少する。例えば、山手線の場合、外回りが1時間当たり21本から18本に、内回りが22本から20本へと若干少なくなる。常磐線では、19本から15本に減少する。

また、常磐線の取手以北に直通する普通列車は、これまでグリーン車を2両連結した10両あるいは15両編成であった。ところが、ダイヤ改定後は、昼間の場合、ほとんどの列車が土浦止まりになり、水戸方面へ向かうには土浦で短い5両編成の普通列車に乗り換えなければならなくなった。長大編成では持て余し気味の利用状況が続いていたための変更であろう。

これによって、青春18きっぷなどと組み合わせて優雅にしかも安く水戸方面へ出かける人にとっては、グリーン車利用は土浦までとなってしまう。勝田行きの中にも、土浦以北へ直通するのは15両のうち5両だけ、しかもグリーン車は土浦止まりという列車がある。安くて快適な「乗り鉄」を目指す人にとっては、受難となる改訂であろう。

一方、首都圏を発着する特急列車「あずさ」「ひたち」の中には、一部新宿~東京、上野~品川の区間延長を行う列車が増えた。特急ユーザーにとっては朗報であろう。
 

JR東海、「のぞみ」一部列車の速達化は朗報

のぞみ

「のぞみ」の中には速達化される列車がある

東海道新幹線では、「のぞみ」の速達化が改正の目玉である。すなわち、出張客の利用が多いと思われる、東京発6時台、7時台、夜の20~22時台の下りを中心に30本の「のぞみ」の東京~新大阪間の所要時間が最大で6分短縮となる。

例えば、東京発6時42分の「のぞみ201号」は新大阪着が、これまでの9時12分から6分繰り上がり9時6分、所要時間は2時間30分から2時間24分となる。忙しい出張客にとっては6分といえども朗報であろう。他の区間でも、発着時間や乗り換え時間の変更により滞在時間が長くなったり、所要時間が短くなるなどの改善がみられるのは好ましい。
 

東京メトロ、運転本数の減少や座席指定列車のダイヤ見直し

丸ノ内線

丸ノ内線など本数が若干削減される

東京メトロは、列車本数の見直しが大々的に行われた。1時間当たりの運転本数が、時間帯によって以下のように減少する。

●銀座線
(1)平日10~16時、土休日8~19時:
・浅草駅~渋谷駅間、渋谷および浅草方面行きを1時間あたり20→18本
(2)平日夜間
・21時台の渋谷および浅草方面行きを15→14本
・22時台の渋谷方面行きを14→13本、浅草方面行きを15→14本
・23時台の渋谷および浅草方面行きを13→12本

●丸ノ内線
(1)平日10~15時、土休日10~19時
・池袋駅~中野坂上駅間、中野坂上および池袋方面行きを1時間あたり15→13本
・中野坂上駅~荻窪駅間、荻窪および中野坂上方面行きを1時間あたり12→11本
・中野坂上駅~方南町駅間、方南町および中野坂上方面行きを1時間あたり9→7本
(2)平日夜間、池袋駅~荻窪駅間
・21時台の荻窪方面行きを14→13本、池袋方面行きを13→12本
・22時台の荻窪および池袋方面行きを12→11本
・23時台の荻窪方面行きを11→10本

●日比谷線
(1)平日夜間、北千住駅~中目黒駅間
・22時台の中目黒方面行きを1時間あたり13→12本
・23時台の北千住方面行きを1時間あたり12→11本
(2)平日夜間時間帯におけるTHライナーの運転時間変更

●千代田線
(1)平日夜間、綾瀬駅~代々木上原駅間
・22時台の代々木上原方面行きを1時間あたり11→10本、綾瀬方面行きを1時間あたり12→11本
(2)平日夜間、特急ロマンスカー「メトロホームウェイ号」の運転時間帯変更

●有楽町線
(1)平日10~16時、土休日10~17時、小竹向原駅~池袋駅間
・12本の運転を1時間あたり2本は池袋駅~新木場駅間、10本を小竹向原駅~池袋駅間に変更
(2)平日夜間、小竹向原駅~新木場駅間
・21時台の小竹向原方面行きを13→11本
・22時台の新木場方面行きを14→12本
・23時台の新木場方面行きを11→10本、小竹向原方面を12→11本

参考:東京メトロ発表資料
 
・座席指定列車についてダイヤの見直し
THライナー

THライナーは発車時刻の見直しがあった

日比谷線から東武線に直通するTHライナーおよび千代田線から小田急線に直通するロマンスカーは、ともに22時台の列車を廃止し、代わりに17時台の列車を新設する。夜遅くまで残業したり、飲み会をする人が減ったためであろうか?
 

小田急電鉄、残念な「白いロマンスカー」引退

VSE

定期運行から引退した「白いロマンスカー」VSE

目に付くのが小田急の看板列車ロマンスカーに関するものである。ゆったり通勤や「密」を避ける乗車の高まりにともない、ラッシュ時を中心に運転される「モーニングウェイ号」が増発される。例えば、朝の6時台から6時台にかけて新宿に到着する「モーニングウェイ号」は9本から12本に増発される。

一方、観光需要の低迷にともない箱根湯本に直通するロマンスカー「はこね号」は上下45本から30本に削減される。この影響で「白いロマンスカー」こと50000形VSEは定期列車から引退してしまった。登場以来17年なので、早すぎると惜しむ声は多い。
 

京王電鉄、準特急が特急に格上げ?

準特急

消滅した列車種別「準特急」

京王独自の列車種別だった「準特急」がなくなり、すべて「特急」となった。これまで、新宿~調布間の停車駅は、特急が、明大前のみ、準特急が笹塚、明大前、千歳烏山だったのが、すべて笹塚、明大前、千歳烏山に停車するようになる。

実質、特急が廃止となり、準特急の名称が特急に変わるとみる方が実態に合っている。遠距離利用者にとってはまどろっこしく思う人もいるだろう。一方で、千歳烏山駅の利用者にとっては、毎時、京王線系統の特急が6本、相模原線系統の特急が3本利用できるので極めて便利になったことであろう。

座席指定列車「京王ライナー」に関しては、停車駅に明大前が追加された。渋谷や吉祥寺など井の頭線沿線からの乗り換え客には便利になった。また、週末の行楽用「Mt.TAKAO号」は、増発の上、通年運行となったので、利用しやすいであろう。
 

京急電鉄、末端区間の本数大幅減

京急

末端区間の本数が大幅減となった京急

列車ダイヤのパターン化や発着時刻の見直しによって使いやすくなった。その一方で、利用者の減少がみられる京急久里浜~三崎口間に関しては、日中時間帯(11~15時)の本数が20分毎と半減してしまった。何とも厳しい状況である。

以上、首都圏のいくつかの鉄道会社のダイヤ改正の状況をみてきたが、合理化や減量化がすすんだ改訂といえるだろう。もっとも、今後の利用者増があるのならば、いたずらに詰め込むようなことをしないで、編成車両増や列車本数を戻すなど柔軟に対応してほしいと思う。



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