課税所得金額900万円以下であれば配当控除の確定申告をしたほうがお得に
株や投資信託の取引をして配当収入がある人は、特定口座・源泉徴収ありを選択していると、配当収入について、税金が引かれます。一律で20%程度(所得税15%、住民税5%(※1))が証券口座で取引をされた際に、源泉徴収されるわけです。この源泉徴収されることにより、配当収入を得た人は確定申告をする必要はありません。ところが、配当収入については「配当控除」という制度があり、自発的に確定申告をし配当控除を利用することで、他の課税所得金額の合計によっては、負担税率20%よりも軽くなる可能性があるのです。
また、確定申告をすることで「住民税申告不要制度」を選択でき、特定口座・源泉徴収ありを選択している人に限り、配当所得について住民税は5%の負担税率のままで、配当控除が適用されるというメリットを受けられます。
ただし、給与所得が高い等で総合課税(他の所得と合算した総所得に基づき、所得税の税率を使って税額計算をする課税方法)がなされると、課税総所得金額が上がってしまい、負担税率が20%を超えてしまう場合があり、確定申告することで逆に損になってしまうケースもあるわけです。
確定申告をして「配当控除」を申請するかどうかを判断する際には、
・配当控除を受けると、20%だった負担税率はどう変わるのか
・さらに「住民税申告不要制度」を選択すると、負担税率はどう変わるのか
ということを念頭において決めるといいと思います。結論からいうと、課税所得金額900万円以下であれば、配当控除を利用したほうが税率はお得になると思います。
(※1)実務では所得税について復興特別所得税が課されますし、金融商品の種類等によっては必ずしもこの税率でない場合もありますが、この記事ではこの負担税率を用います
20%の負担税率が17.2%に下がってお得に
課税所得金額900万円以下の人が配当控除を受ける場合を例にあげ、注意点を整理してみましょう。配当控除を受けると税額控除の適用があるため、所得税・住民税の負担税率は下記のようになります。
●課税所得金額695万円以下の場合
・そもそも所得税率は20%ですが税額控除10%となるため、所得税の負担税率10%
・住民税の所得割の税率は10%ですが税額控除2.8%となるため、住民税の負担税率7.2%
……負担税率の合計17.2% したがって、17.2%<20%となり、「所得税15%・住民税5%差し引かれたまま申告不要とする」よりも税負担が軽くなります。
このように課税所得695万円以下の場合、確定申告を行い、配当控除を受けたほうが有利となります。
配当控除に住民税の申告不要制度を選択すると最終税率は?
さらにここに、住民税の申告不要を選択すると、住民税の負担税率は源泉徴収された5%のままですので、課税所得金額695万円以下、900万円以下の場合は以下のような負担税率になります。●課税所得金額695万円以下の場合
・そもそも所得税率は20%ですが税額控除10%となるため、所得税の負担税率10%
・住民税の所得割の税率は10%ですが税額控除2.8%となるため、住民税の負担税率7.2%→住民税の税率は源泉徴収されたままの5%
……負担税率の合計15%
つまり源泉徴収される20%よりも負担税率が低くなりお得です。
●課税所得900万円以下の場合
・そもそも所得税率は23%ですが税額控除10%となるため、所得税の負担税率13%
・住民税の負担税率は源泉徴収されたままの5%
……負担税率の合計18%
こちらのケースも、源泉徴収される20%よりも負担税率が低くなります。 実質負担率を考えると、課税所得金額900万円までの場合は、表のように配当控除と住民税の申告不要の組み合わせを利用した場合が最も有利、となるわけです。
確定申告時に、住民税の申告不要制度を選択すると国民健康保険等もお得に?
2021年分の確定申告から、確定申告用紙に「住民税申告不要」制度を申告する欄ができました。「特定配当等の全部の申告不要」という欄です(下記は確定申告A様式の第二表ですが、確定申告B様式の第二表にも同様の記載欄があります)。 課税所得金額900万円までの人は、ここに○をつけることで、住民税の申告は不要となり、住民税が増えません。所得金額や住民税額によって上下する国民健康保険や後期高齢者医療保険の負担も増えずにすむ、というイイとこどりができるのです。従来、所得税は配当控除を受けて、住民税は申告不要制度を選択する場合、所轄の税務署に所得税の確定申告書を提出し、それとは別に住んでいる市区町村に住民税の申告をするという2つの手続きがもとめられました。
ところが確定申告書にこのような欄が新設されたのでここに○印を付すだけで、別途、住んでいる市区町村に住民税の申告をする必要がなくなりました。
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