アドバイス1 貯蓄ペースを維持すれば老後資金は準備可能
最初に結論から言えば、老後資金は用意できると考えます。しっかり今のペースで貯蓄を継続すれば、そう心配する必要はありません。
では、試算をしてみましょう。現在の貯蓄ペースはデータでは月5万9000円ですが、収支(計算上は6万6000円の黒字)から見て、月6万円は可能としました。ボーナスからは、投資分も含めて70万円ですから、年間の貯蓄額は142万円。ご主人が定年となる60歳までの19年間で2698万円となり(途中、児童手当は途切れますが、昇給でカバー)、これに今ある貯蓄等と合わせて約3100万円(投資商品は元本で試算)となります。
ここから60歳までにかかる大きな支出を差し引きます。
まず教育費ですが、高校までは公立希望とのことですので、今後のコスト(小学校は残り3年間として試算)は、大学を私立文系とすると卒業までにトータルで800万円、理系なら940万円ほど(高校までの学校外教育費を含む)。しかし、想定外のこともあるかもしれません。多めに見積もって、ざっと1000万円とします。ただ、先の試算で、教育費に月1万1000円を計上していますので、19年間で約250万円。したがって、新たに差し引く額は750万円となります。
あとはクルマの買い替えです。次回が、ご主人48歳頃でしょうか。その次が58歳で、60歳までに計2回。車両価格が今の車両と同じなら230万円×2回=460万円。
したがって、3100万円から教育費とクルマの買い替え費用を差し引くと、約1900万円。これに退職金700万円を加えた、2600万円が老後資金となります。
アドバイス2 60歳からの5年間は赤字が出ないよう収入を得る
次に、ご主人60歳以降について考えてみましょう。
65歳になるまでの生活費は、今とほぼ変わらず、お子さんが独立していることを考慮すると月25万円。これに、ボーナスから捻出していた生活費のうち、60歳以降も発生するものを30万~40万円とすれば、月割りで3万円ほど。これを加えると、毎月28万円が必要となります。
収入はご主人が再雇用で65歳までは働くことができますので、収入は不確定ですが、りんごさんも勤務時間はセーブするとしてもパートを継続すれば、生活費分の収入は得られる可能性があります。逆に言えば、65歳までは、収支で赤字を出さないような働き方、あるいは家計を目指してほしいと思います。
65歳以降ですが、住宅ローンが67歳までですが、便宜上、65歳で完済し、残り2年分のローン残高170万円ほどを貯蓄から差し引きます。また、65歳のときに終身保険を解約し、解約返戻金350万円を受け取るとすれば、相殺して180万円のプラス。老後資金が65歳まで目減りしていなければ、2780万円が手元に残ることになります。
65歳以降の生活費は住宅ローンや保険料を差し引くと、月20万円ほど。公的年金の受給額は正確にはわかりませんが、不足しても月2万~3万円ではないでしょうか。仮に月3万円不足なら30年間で1080万円。95歳の時点でまだ1700万円余ります。老後の予備費(住宅リフォーム・修繕、医療・介護費用など)にクルマの買い替えを1回行っても、一般的には1000万円を想定すれば十分。それでもまだ700万円が手元に残ります。
つまり老後資金はほぼ心配がないということになるわけです。
アドバイス3 パートで今無理をせず、長く働く方を優先
さて、りんごさんが気にされている働き方ですが、現在、パート2つの掛け持ちは体力的にきびしいとのこと。無理をして身体を壊すリスクを考えると、以前のようにパートは1つにとどめてはどうでしょう。
その場合、年収が25万円下がります。先の試算では、19年間現在のパート収入が続くとしていますので、仮に今から以前の働き方に戻すと、19年×25万円=475万円、貯蓄が目減りします。それでも95歳のときに、予備費を引いてもまだ手持ち資金は200万円残ります。
ただ、長生きリスクを考慮すれば、多少不安に思うかもしれません。ならば、老後の生活費を抑える、あるいは65歳以降も元気であればご夫婦ともに働いて月数万円でも収入を得る。そういったことで、収支の調整は十分可能だと考えます。そもそも、長く働くことは有効な老後対策でもあるのです。
また、りんごさんが「娘が小学校になったあたりから貯まり始めました」と言われているとおり、それまでは、貯めたくても貯められない時期でした。そもそも家計に対する意識は高いので、多少波はあっても、今後は順調に貯められるはず。これまで貯められなかったことを悔やむ必要はありません。
最後に、保険の見直しについて。りんごさんの医療共済を残して、ご主人の終身2本は払済保険に。こども共済も必要性は低いでしょう。10年前に加入された終身保険は、今後支払う保険料が280万~290万円。払済保険なら、10年分の保険料に対しての解約返戻金があるわけですから、大きく損はしないはずです。それよりも65歳まで月1万円払い続ける負担より、その分貯蓄して資金の流動性を確保しておく方が賢明と考えます。また、資金に余裕があれば、住宅ローンの繰上返済をして支払利息を軽減する、その原資にもなります。
新たな保障はご主人に死亡保障1500万円を10年か15年定期で確保。さらにりんごさんと同じ医療共済に加入して、保険料は月7000円ほど。月1万2000円保険料が浮きますから、必要十分な保障が確保でき、貯蓄ペースも上がります。検討してみてください。
相談者「りんご」さんから寄せられた感想
このままの貯蓄ペースで老後資金は大丈夫と言っていただき、また、身体がしんどくなったらパートの時間を減らしても大丈夫と思うことで、気が楽になりました。しかし、油断せずに最低限の貯蓄はしっかりしつつ、60歳からの5年間で赤字を出さないよう心がけます。また、保険の見直しは頭になかったので、アドバイスしていただいたことを検討いたします。いつも拝見させていただいている深野先生に家計を見ていただき、アドバイスをいただいたことで家計管理のやる気もアップしました! このたびは本当にありがとうございました。
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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金まわり全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。著作に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など
取材・文/清水京武
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