年金

50代の約7割も準備をしていない! 介護費用はどれくらい必要?

高齢化が進む日本。それにともなって、介護を必要とする人も増えています。ご両親の体調が気になる人も多いのではないでしょうか。介護にかかる費用は原則自分で用意したいところ。本稿では、介護費用の目安やサービスの内容などご紹介します。

井戸 美枝

執筆者:井戸 美枝

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誰しも介護が必要になる期間がある?

皆さんは「健康寿命」をご存じでしょうか? 健康寿命は、文字通り「健康に過ごせる期間」のことで、平均寿命から寝たきりや認知症など介護状態の期間を差し引いたものです。

【ガイド井戸さんと福一さんが、動画で介護のお金について語っています】



厚生労働省によると、2016年の男性の健康寿命は72.14歳で、平均寿命は80.98歳。女性の健康寿命は74.79歳、平均寿命は87.14歳でした(※)。男性は約8年間、女性は約12年間、健康でない期間があることになります。

もちろん、大きな病気をせず介護が必要にならないこともあるでしょう。ですが、あらかじめ、介護の費用について調べたり、どういった介護を望んでいるかを家族で話し合っておくと安心です。

(※)厚生労働省 平均寿命と健康寿命の推移
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/19/backdata/01-01-02-06.html
 

50代からゆっくり準備を

先日公表されたメットライフ生命の「老後を変える全国47都道府県大調査(2021年度版)」によると、自分自身や配偶者の介護に不安を感じている人が7割を超えていました。

【参考】老後を変える全国47都道府県大調査
https://www.metlife.co.jp/changerougo/about/cr_survey/

一方で、約7割の人が「自らの介護費用の準備をしてない」とも回答しています。準備していないと答えた人を年代別にみると、60代~70代の人では52.3%、50代では72.5%、40代では82.2%、30代は84.2%、20代は88.3%でした。

若い年代の方が、介護費用を準備していないことは問題ありませんが、50代の方の約7割も準備をしていないとのこと。

理想をいえば、50代からゆっくりと介護を含めた退職後の準備を始めてもよいかもしれません。仮に、65歳以降に退職するのであれば、50代の方は10年以上準備期間をもうけることができます。

また、40代・50代の人は、自分の介護のことよりも、ご両親の体調が気になるタイミングかもしれませんね。まずは、ご両親がどういった介護を望んでいるかを話し合ったり、介護にかかる費用を考えてみましょう。自身や配偶者の介護を考えるヒントにもなります。

この記事では、家族や自分に介護が必要になったときに役立つ、介護にかかる費用の目安と、その対策をご紹介しましょう。
 

介護にかかる費用は約500万円?

介護にはどれくらいのお金がかかるのでしょうか。

残念ながら、一概に〇〇円、ということはいえません。介護の必要度合いや介護期間によって、その費用は大きく異なるからです。

生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査(平成30年度)」によると(※)、毎月の介護費用の平均は7万8000円。同資料での介護の平均期間は、54.5カ月で、その他にも住宅改造や介護用ベッドの購入などの一時費用が平均69万円かかっていました。

単純に計算すると、(7万8000円×54.5カ月)+69万円=494万1000円。1人あたりの介護費用の平均は約494万円ということになります。

(※)生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査(平成30年度)」 
2021年9月時点で最新情報
http://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/nursing/4.html
 

介護保険 自己負担に上限あり

ただ、上記の金額はあくまで平均。先述しましたが、人それぞれ介護費用は大きく異なります。

ポイントとなるのは、介護保険です。

介護保険では、65歳以上の人で「介護や支援の必要がある」と市区町村から認定されれば、介護費用の自己負担は1~3割になります。負担割合は、前年の所得によって決まります。収入が年金だけであれば、1割~2割の自己負担になるケースがほとんどです。

この自己負担額には月ごとに上限が設けられており、一定額を超えると払い戻しを受けられる「高額介護サービス費」という制度があります。

上限額は、所得によって異なります。2021年現在、所得が低い場合は1万5000円、世帯の誰かが現役並み所得者で、市区町村民税の課税対象になっている場合は、4万4400円が上限額となっています。

ただし、利用できる介護サービスの量(支給限度額)が要介護別に定められており、それを超えた分に関しては、全額自己負担となります。

どういった介護サービスを受けるか、毎月の費用はどの程度まで負担できるか、など、介護サービスや費用については、ケアマネージャーと相談しながら決めることができます。たとえば、できるだけ支給限度額内で介護サービスを受ける、といったプランを立てることが可能です。
 

施設の費用は大きく異なる

このように、介護保険が適用されるサービスであれば、極端に高い費用がかかることはありません。問題は、介護保険が適用されない費用です。特に、自宅での介護が難しくなり、施設に入所することになった場合。施設の種類によって、その費用は大きく異なります。

介護サービスを提供している施設には、介護保険を利用して入所できる「介護施設」と、民間が運営している施設の2種類があります。

「介護施設」の1つである「特別養護老人ホーム」は、入居時に支払う一時金が不要で、毎月の費用は7~16万円程度。ただし、入居希望者が多く、介護度が「要介護度3」以上であることが入居の要件であったりするなど、なかなか入れないことが多いようです。

一方、民間の企業が運営する施設には「有料老人ホーム」「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」などがあります。入居時に支払う一時金を必要とする施設もあり、毎月の費用も施設によってさまざまです。都市部など地価が高いところにある施設は費用が高く、それに比べると地方の施設は安い傾向にあります。

上の介護施設よりも、費用はかかるものの、立地やサービス・設備の充実度によって、入居先を選べることが利点です。こちらは、亡くなるまで住むことを念頭においた施設がほとんどです。
 

介護の費用 原則は本人のお金で

こうした介護にかかる費用は、原則として介護を受ける本人のお金で支払いましょう。年金や貯蓄、資産などから逆算して、どういった介護サービスを受けられるか決められればベストです。

そこで、切り出しにくい話題ではありますが、「いざというとき、どういった介護を受けたいか」「どれくらい資産があるか」「誰が手続きをすすめるか」を、親、兄弟、姉妹などの家族と共有しておくとよいでしょう。

特に、親の資産は、ある程度知っておきたいところです。亡くなった後はもちろんのこと、病気になったり認知症が進んだりすると、どの銀行にお金を預けてあるのか、保険には加入しているのか……など、分からなくなる可能性があります。

もちろん、具体的な金額まで確認する必要はなく、ざっくりと知っておくだけでもOKです。親自身に一覧表を作ってもらうのも一案ですね。

現金、預貯金、株式などの金融資産は、銀行名・口座番号などを記載した一覧表にまとめておくと便利です。その際、使っていない口座などがあれば、解約しても良いでしょう。というのも、口座の名義人が亡くなると口座は凍結されます、遺族であっても、預金を引き出すには、所定の書類に法定相続人全員がサインをして、印鑑証明などを添えて金融機関に提出……という煩雑な手続きが必要となります。口座は、ある程度少なくしておいた方がよいでしょう。

保険についても、情報を共有しておきたいところです。

死亡したときに保険金が支払われる生命保険、入院したときや手術を受けたときに保険金が受け取れる医療保険、がん保険など、さまざまな保険がありますが、いずれも、こちらから保険会社に請求をしなければ保険金を受け取れません

特に生命保険は、相続税の対策として加入している人も少なくありません。請求漏れがないように、確認が必要です。その他、自宅などの不動産、自動車などの資産も一覧にしておくと良いでしょう。

元気な親に、介護や資産のことを尋ねるのは、なかなかハードルが高いことと思います。とはいえ、話し合っておいた方が良いのもまた事実。本稿のような記事をきっかけにして、何か話すきっかけを探ってください。

執筆協力:ファイナンシャルライター 瀧 健

参考本:『私がお金で困らないためには今から何をすればいいですか?』

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