お金の悩みを解決!マネープランクリニック/老後のお金や介護費用が心配な人の相談

49歳専業主婦、貯金4300万円。夫のリタイア時期によっては老後資金がきびしくなりそう……(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、老後の資産運用を模索中の49歳の主婦の方。ご主人がコロナ禍で減収、さらに体調も崩し、老後資金づくりや保険について悩んでいるとのこと。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 住宅ローンはすぐに完済を

私の家計防衛に関するポッドキャストを繰り返し聴かれているとのこと。ありがとうございます。

さて、ご相談は、老後に向けての資産づくりということになりますが、その要因となったのが、ご主人のコロナ禍での減収。しかし、これはある意味、仕方がないことです。今後をより考える機会になったと前向きにとらえていきましょう。
 
さて、家計データを拝見してまず思ったのは、住宅ローンについて。2022年に、財形貯蓄を解約して、繰上返済で完済する予定とのことですが、それを待たずに今すぐに完済してしまっていいのでは。管理等の理由で、手を付けたくない貯蓄があるのかもしれませんが、支払利息を考えれば、早いに越したことはありません。
 
あと、保険についても先に結論を言えば、ぴょんたさんが言われるように、ご夫婦加入のがん保険は、解約されてもいいと思います。医療費負担という点では貯蓄で十分カバーできるからです。ただし、実際にご主人ががんを発症され、診断給付金等を受け取られたわけですから、今後まだ不安があるのなら、備え、もしくは安心料としてご主人加入の分は残してともいいと思います。

また、ご主人加入の共済も、死亡保障の必要性が低いので、解約でいいと思います。
 

アドバイス2 60歳リタイアでも老後資金は十分用意可能

先の2点を踏まえて、今後のキャッシュフローを見てみましょう。

住宅ローンの支払いがなくなり、保険料コストも月4600円(ご主人のがん保険は継続とした場合)に下がりましたので、毎月の収支は約11万6000円の黒字。また、ボーナスからの貯蓄分がデータによれば年間43万6000円。結果、ご主人定年の60歳までの9年間で、約1645万円が貯蓄に回ります。これに今ある金融資産(運用商品は評価額の増減なし、貯蓄商品の利息分は考慮せず)と、退職金等は60歳受け取りの場合の上乗せ分が不確定ですが、きびしめに見て変わらず1700万円(一括受け取り)とします。これらを合算して、約7700万円。
 
ここから、今後想定されるまとまった額の不定期支出を差し引きます。まず、クルマの買い替えが700万円。それと、住宅のリフォームが400万円。したがって、前倒しで差し引いている部分もありますが、6600万円が老後資金となります。
 
定年後ですが、再雇用で65歳までは勤務予定とのこと。収入は不確定ですが、仮にボーナスなし、給与をおよそ3割減、手取りで月20万円とすれば、毎月の生活費については老後資金を取り崩すことなく、家計は十分回ります。

しかし、これまでボーナスから捻出していた支出が、定年後も変わらないとすれば、月割りで約8万円を毎月の生活費に上乗せしなくてはいけません。そうなると。月の生活費は25万4000円程度になりますから、赤字額は月5万4000円。65歳までの5年間で324万円。残る手持ち資金=老後資金は6276万円となります。
 
65歳からの年金額はご主人の分が、手取りで月14万~15万円。その2年後に受給となるぴょんたさんの分が、同様に手取りで月7万~8万円でしょうか。仮に65歳以降も支出が変わらず、ご主人がこの時点でフルリタイアとなった場合、最初の2年間は月11万円程度を老後資金から取り崩すことになります。それでもまだ手持ち資金は6000万円が残ります。
 
それ以降(ご主人67歳)は月3万5000円程度の家計赤字ですから、老後の予備費(医療・介護費用、住宅の修繕等)として、多めながら1000万円を別に確保しても、残りの老後資金で120年分の生活費がカバーできます。ここまでの計算には含めませんでしたが、趣味のホームシアターに使っても問題ありません。また、仮にご主人が体調面で再雇用がきびしく、60歳でフルリタイアとなっても、それによる老後資金の目減り分は1200万円。それでも、資金的に老後はまったく心配ないと考えていいでしょう。
 

アドバイス3 iDeCo利用で節税効果を確実に得る

最後に、今後の運用について。遺産として受け取った1800万円について、1/2~1/3程度を投資に回すことを検討されているとのこと。先のキャッシュフローから考えて、1000万円程度を運用してもいいと思います。それだけリスクを取れるほど、余裕資金があります。
 
運用先はぴょんたさんが言われるように、世界株のインデックス投信が私もいいと考えます。購入のタイミングについても、今は先がより読みにくい市場ですから、積立で分散して買われる方法が有効でしょう。待機資金の預け先は、多少でも金利の有利なネット銀行の定期預金がいいでしょう。

また、投資でいえば、ご主人名義でiDeCoを始めてもいいのでは。2022年5月から、掛金の積立がそれまでの60歳から65歳まで延長されます。該当するケースは、例えば再雇用で引き続き厚生年金に加入する場合(自動的に国民年金の被保険者となるため)などです。51歳からの加入でも最長14年間の積立が可能となり、その間、節税効果が確実に得られます。勤務先が企業型の確定拠出年金を実施していないなら、上限月額2万3000円まで掛けることができます。
 

相談者「ぴょんた」さんから寄せられた感想

家計相談への詳細なアドバイスをいただき、ありがとうございます。住宅ローンの一括返済時期と保険の解約、iDeCoの活用、遺産の運用について、アドバイスに従って実践していきたいと思います。特に遺産については似たようなケースでの参考になる情報を見つけられなかったため、
深野先生に具体的な数値や手法を教えていただき、大変勉強になりました。ようやく運用に向けて動き出せそうです。今回の相談をきっかけに、家計の細かいムダを洗い出したりやり繰り方法を見直すこともできました。深野先生、編集部の皆様に心より感謝申し上げます。

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教えてくれたのは…… 
深野 康彦さん  
  
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金まわり全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。著作に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など


取材・文/清水京武


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