予防接種・ワクチン

新型コロナウイルスワクチンの副反応・副作用が強いのはなぜ?

【医師が解説】新型コロナウイルスのワクチンの副反応として、接種部位の痛みや発熱、頭痛、疲労感、筋肉痛や関節痛などの症状が報告されています。インフルエンザワクチンなどの他のワクチンよりも副反応の報告が多いのはなぜでしょうか? モデルナ製とファイザー製のワクチンの副反応の違い、アナフィラキシーの頻度などを含め、ワクチンによって抗体ができるしくみの基本を解説します。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

新型コロナワクチン接種が本格化……大規模接種センターや職域接種も

新型コロナウイルスワクチンの副作用・副反応

様々な副反応が報告されている新型コロナウイルスワクチン。これは有効性の高さゆえに起こるものです

高齢者や医療関係者から優先的に接種が進められた新型コロナウイルスワクチンですが、いよいよ本格的に大規模接種センターでの接種や職域接種も始まりました。

自衛隊大規模接種センターを始め、自治体での集団接種、職域接種もそれぞれ進んでいます。令和3年6月22日現在、1回接種を終えた人は14.8%、2回接種を終えた人は4.63%まで進みました。
 

コロナワクチンで報告されている主な副反応(副作用)・傾向

ワクチン接種時に多くの人が心配されるのが「副反応」についてでしょう。「ワクチンの副作用」という方も多いですが、正しくは「ワクチンの副反応」です。治療のための薬で起こる、期待した効果以外の作用については「副作用」と呼びます。

新型コロナワクチンの主な副反応(副作用)としては、以下のことが報告されています。
  • 接種部位の痛み
  • 疲労
  • 頭痛
  • 筋肉や関節の痛み
  • 発熱
  • 下痢など
こうした症状の大部分は、接種後数日以内に回復します。稀に重篤な副反応としてアナフィラキシーが起こることが報告されていますが、より早く接種が進んでいるアメリカの調査では、100万接種あたりのアナフィラキシーの頻度はファイザー社で11.1件、モデルナ社で2.5件とのことで、高頻度で起こるものではありません。また、接種後に接種会場でしばらく様子を見れば、万一異変が現れた場合にも適切な処置を受けることができます。

さまざまな報告から見える傾向としては、高齢者よりも年齢の若い層、男性よりも女性の方が副反応が起こる頻度が多いようです。
 

モデルナとファイザーのワクチン、副反応の違い

新型コロナワクチンは様々な製薬会社が開発していますが、日本で現在メインになっているのはモデルナ社とファイザー社のワクチンです。どちらも同じmRNAワクチン(メッセンジャーRNAによるワクチン)で、効果もほぼ同等で有効率は90%以上です。2回接種しないと高い効果が得られないため、2回接種完了後に抗体ができるまでは安心できませんが、それでもワクチンで90%という有効率の高さは素晴らしいと思います。

一方で、抗体をつくるためには体の免疫反応が正しくはたらく必要があり、その結果として副反応が起こります。正常な免疫反応が起こっている証拠ともいえますので、接種後の有効率の高さを考えると、副反応は避けられないものかもしれません。

モデルナ社もファイザー社もともに、接種部位の痛み、疲労感、頭痛などが、よくある副反応として報告されています。2社のワクチンを比較すると、モデルナ社の方がやや筋肉痛、吐き気、嘔吐の頻度が多く、「リンパ節症」というリンパ節の腫れと痛みが起こる頻度が高いようです。頻度は10%までですが、モデルナ社は接種後7日以降の接種部位の痛みがあります。

日本におけるアナフィラキシーの報告は、ファイザー社ワクチンで2324万5041回接種中238件、モデルナ社ワクチンで44万278回接種中0件でした。接種回数が異なりますが、前項で挙げたアメリカの当初の調査では、100万接種あたりのアナフィラキシーの頻度がファイザー社で11.1、モデルナ社で2.5ですので、モデルナ社の方が頻度として少ない可能性があります。

数字としては大きな差ではありませんが、強いて比較するならアナフィラキシーの頻度が少ないのはモデルナ、局所の副反応が少ないのはファイザーとなりそうです。
 

コロナワクチンの副反応はなぜ重い? 人体に有害なのではなく免疫原性が高いから

ワクチン接種をためらう人が気にされているのは、上記のような副反応が、インフルエンザワクチンや多くの小児が受ける予防接種以上に多く報告されている点でしょう。

「人体に有害なワクチンなのではないか」「体が毒に反応しているのではないか」と考える方もいるようですが、医学的な基礎知識としてそもそもなぜワクチンが「効く」のかが理解できれば安心できるのではないかと思います。

千葉大学病院の調査が注目を集めていますが、ファイザー製ワクチンを接種した病院職員1774人の中和抗体を検査したところ、2回接種後は1773人が抗体を有していたことが報告されました。これは2回目接種を終えた人の99.9%が抗体を持っていたということです。私も小児科で多くの予防接種を行っていますが、これはワクチンの中でも非常に高い有効率であり、生ワクチンに近い抗体陽性率だといえます。

イメージしやすいように身近な例を挙げると、毎年接種する方も多いインフルエンザワクチンの発症予防効果は60%です。これに対し、新型コロナワクチンの発症予防効果は95%と報告されています。千葉大学病院の調査では99.9%という結果が出ていますし、この高さは実際にその通りなのでしょう。新型コロナワクチンがいかに効果の高いワクチンかが判るかと思います。その意味では新型コロナウイルスのワクチンは、免疫をつける力である「免疫原性」が高いワクチンであるともいえます。

高い免疫原性を得る上では、体が免疫反応を起こして免疫をつけていく必要があります。その結果として起こるのが、頭痛や発熱などの風邪をひいたときのような様々な症状の副反応です。また、新型コロナウイルスのワクチンは筋肉注射です。皮下注射よりも筋肉痛が起こりやすいことも、副反応の数の多さの一因かと思います。
 

ワクチン接種はすべき? 大切なのはリスクを冷静に天秤にかけること

ワクチンの副反応は、ワクチンによって病原体に対する予防効果を発揮できるようになるための正常な体の反応です。そして副反応の程度は、それぞれが持っている免疫力によって異なるため、個人差があります。

体に悪い症状を出すものは全て毒でしかないと考えるのは、少し極論な考え方です。毒は体にとって害にしかならないものですが、ワクチンは体を守るはたらきを持っています。もちろん新型コロナウイルス感染症がなければ、副反応を伴うワクチンは不要でしょう。しかし現実に新型コロナウイルス感染症は1年以上経過しても終息しておらず、重症化や人に感染させてしまうリスクも変わっていません。新型コロナウイルスにかかってしまった場合、発症2日前から発症後7~10日間は感染力があります。2020年6月以降に診断された人の中では、重症化する人の割合は約1.6%(50歳代以下で0.3%、60歳代以上で8.5%)、死亡する人の割合は約1.0%(50歳代以下で0.06%、60歳代以上で5.7%)です。また、このデータは最近不安視されている変異株のものではありません。新型コロナウイルス感染症が持続する限り、変異株が発生し、変異株によって重症化する割合、死亡する割合が増えてくる可能性もあります。

罹患しても特効薬がなく、後遺症の報告も多数挙げられていることと天秤にかけて考えれば、有効な予防法としてワクチン接種を考えるのがよいかと思います。ワクチンの副反応はある程度予想することができ、多くの症状は数日、ほぼ1週間以内に消失します。痛み止めなどで症状を軽減することも可能です。

感染症とワクチンの歴史を見ても、かつて多くの人命を奪ってきた天然痘はワクチンによって撲滅できましたし、ポリオもワクチンによって減らすことに成功しています。

ワクチンによるアナフィラキシーなどがあり接種できない人を守る上でも、ワクチンによる集団免疫を目指していくことは大切です。ワクチン接種が可能な人はできるだけ接種することが望ましいでしょう。

■参考
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