しかし、それでも多くの人が起業に挑戦する。それだけ起業には魅力があるのだ。夢や大志を抱き、起業することしか自分には興味がないと考える人も稀にいるかもしれないが、いくつかの点で現状の働き方に満足していないことで、起業に踏み切る人もいるのではないだろうか。
たとえば、若い人であれば、年功序列が残る会社で働くかぎり、誰にも指図されずに働くことは難しく、若手の頃の稼ぎは中堅やシニア社員よりも圧倒的に低くなる。まして社長など、今の自分の位置からは程遠い存在である。
仮に管理職であっても、サラリーマンである限りは、ビジネスを所有することはできないし、稼ぎにも限界がある。もちろん誰もが社長になれるわけではないし、仮に社長になれても、早々に退任することになるかもしれない。そう考えれば、やはり起業とは特別なものである。
起業のイメージは時代とともに変わってきた
起業をする年齢やタイミングは人それぞれ
起業する理由は人それぞれあるとしても、起業する年齢に制約はなく、職種も多岐にわたる。企業によっては社員の副業を認める会社も増えつつあり、副業は、起業するための良い助走期間にもなっている。
世の中にはインターネットやソーシャルメディア、そして便利なアプリやソフトウェアがそろい、そのどれもが安価で簡単に利用できる。スモールビジネスを始めるための環境は、整備されているのだ。
サラリーマンにとって、まさに起業が身近なものになったのである。コロナ禍によって、在宅勤務をはじめとした多様な働き方にますます弾みがついてきた。今の時代は、誰もが起業を視野に入れる時代がきているといっていいのではないだろうか。
起業の形にはいろいろある。仲間と一緒に始める人、一人で始める人、家族の事業を引き継ぐ形で自らは脱サラし、ファミリービジネスの立て直しに挑戦する人も一種の起業であるだろう。
どの場合でも、起業する時の心構えとしては、従来は自らの退路を断ち、貯蓄した大切な自己資金を事業の運転資金にあてがうか、金融機関や家族等から借金して起業した人が多かったから、起業することは一大決心だったはずである。
しかし、法人設立や維持費が安くなったことや、インターネット銀行が普及し、スマホで決済のすべてが管理できるようになった。オフィスを借りなくてもポータブルなノートブックやタブレット等を使って、自宅やコワーキングスペース等で働くこともできる。
業務を効率化させるさまざまなアプリやソフトウェアもそろい、事業を始めるための初期投資もそれほどいらなくなった。起業に必要な事業資金やさまざまな手間が少なくなったことで、起業するためのハードルは明らかに低くなり、「ちょっと起業でもしてみるか」という具合に、比較的気軽な気持ちで、現在働く会社を辞めて起業に挑戦する人がいても不思議ではない。
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