「登校しぶり期」から「復活期」までの、5つのサイクル
「登校しぶり期」から「復活期」までのサイクル
しかし、不登校が段階的にどういう状態にあるかを把握することで解決の糸口が見つけられるケースもあります。今回は、不登校にも5つのフェーズがあることを紹介した上で、それぞれのステージの特徴とそれに応じた関わりのポイントについてお伝えします。
<目次>
不登校は原因究明より“現状認識”が大切
不登校や引きこもりについてのご相談を承る中で、原因を伺うと主に次の3点が挙げられます。- 人間関係の不振(対教員、対生徒)
- 発達障害や自閉症スペクトラムなどへの無理解が招くコミュニケーションのトラブル
- 起立性調節障害による生活リズムの変化
さて、現状といっても漠然ととらえるのではなく、具体的な次の5段階に分類できるところから認識していただきたいと思います。
- 登校しぶり期
- 混乱期
- 安定期
- 回復期
- 復活期
これらの5つの段階の特徴とフェーズに応じた関わり方のポイントについてお伝えします。
1. 保健室登校などとも呼ばれる「登校しぶり期」
この時期の特徴的なことは、本人が学校に行く意欲を見せている点です。頭では、学校に行きたい、行かなくてはいけないと認識しているものの、校門の前で足が止まる、教室に入ると気持ちが悪くなる、腹痛・頭痛が起きるなど……心と体のバランスをコントロールできなくなっています。しかし、帰宅したり保健室に入ると落ち着きを見せるなど、一歩進んで二歩下がるようなイメージです。「五月雨登校」や「保健室登校」といわれる状況です。
この時期ですと、本人と話し合っていく過程で「どうしてそうなったのか」と原因を探ることは問題ありません。ただし、登校できない状況を一方的に否定的な側面だけでとらえないようにしたいものです。
2. 気分の抑揚、心のふり幅が大きくなる「混乱期」
「登校しぶり期」を経て、徐々に通学できなくなる割合が増えてきます。何かと周りと比べて落ち込む機会が多くなり、気分の抑揚が激しくなります。心のふり幅が大きくなる結果、自己肯定感が一気に低くなり、被害妄想に陥ったり、自虐的な言動が多くなったり、場合によっては暴力や自傷行為など家族を巻き込んだ状況になってきます。肝心なのは家族が本人と一緒にアップダウンしないことです。学校に行く、行かないではなく、いかに心の平安を保てるかを心掛けてください。そして、通学できる状態になること、つまり、学校復帰だけがゴールではないことを認識していただきたいと思います。
3. 学校に行かない状況が固定化する「安定期」
混乱期はアップダウンが激しい状況ですが、暫くすると気分の抑揚が収まり、昼夜逆転した生活リズムや不登校である状態が、良くも悪くも落ち着いて続く状態になります。「引きこもり」といわれるのはこの時期になります。学校に行かない状況が固定化されますが、スマートフォンやタブレットを使ってオンラインゲームやSNSなどを通じ、何らかの形で外界との繋がりを保つようになります。
このような状況を目の当たりすると、つい「このままいったら、ダメ人間になる」などと言ってしまいがちですが、否定的な言葉がけが有効に働くことはありません。保護者にとっては忍耐を伴う時期でもあります。また、学校に行かないことで授業や宿題から解放された感覚になっているため、時間があるからといって学習に取り組むことは期待しない方がいいでしょう。
4. 進級・進学がリセットの機会になることも「回復期」
「安定期」が長く続くこともありますが、進級や進学というタイミングが訪れると、子どもも今までの在り方をリセットできるチャンスととらえ始めます。小学生ならば次の中学進学、中学生ならば高校進学、高校生ならば卒業が近づき進路選択の時期になると、家族との会話が増えたり、友達のやり取りが頻繁になったりします。この時期には、子どもと一緒に進路選択のためのサイトで学校情報を探ったり、資料などを取り寄せたりして、今まで以上に将来に向けた未来軸のコミュニケーションの機会を増やすとよいでしょう。
5. 回復期からアクションが見え始める「復活期」
「回復期」で進路・将来に向けた的確な情報収集ができていれば、学校見学、合同相談会への参加など積極性がある程度見られる生活リズムとなってきます。たとえ回復期で進路に向けた動きが取れていなくても、この時期からでも決して遅くはありません。子どもにとっても、おぼろげながらも自分の将来・未来に対してのイメージが持てるようになると周りとの関わり方や生活の在り方も自ずと見直してきます。
ただし、行ったり来たりの状況は続きますので焦らずに見守ってほしいところです。そうはいうものの、進級・進学には入試の期限が伴う手続きがありますので保護者にはその辺りも含めたタイムマネジメントが求められます。
不登校の5つのサイクルは復帰に向けたロードマップの目安に
不登校が5つのどの段階にあるかを考える際、親と子どもとの認識に注意
たとえば、子どもにとっては混乱期からようやく安定期に入りかけた時期なのに、親はもう回復期にきていると思い、あれやこれや多くの情報を詰め込もうとしたり、積極的な行動を促したりするあまり衝突を招いていることも少なくありません。
厳密に5段階のどれかということに重きを置くのでなく、あくまでも目安として参考として見立ててください。また復帰に向けたロードマップも上がったり下がったり、行ったり来たりしながら、徐々に回復に向かうイメージを持つとよいでしょう。
不登校については、現状だけをとらえて悩むのではなく、5つの段階を参考にしながら、今はどういう段階で、次にどういうことが起こり、それにはどういう対処が必要かを自分だけで抱え込まずに不登校専門の支援機関などに相談するとよいでしょう。
明けない夜はないと信じています。
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