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学校に通えない、通わない… 不登校児が増え続ける今こそ考えたい、論争中の「義務教育」の在り方

少子化が進む中、不登校児生徒が増加傾向にあります。しかし、万人に合う教育が疑問視される中、従来の価値観のまま「学校に通うのが是で、それに対応できない子どもを否」として、解決を図ろうとするのは早計ではないでしょうか。今こそ学校の役割、義務教育の意義や在り方を考え直すときです。

古堅 政義

執筆者:古堅 政義

専門学校選びガイド

少子化が進む中、増加傾向にある不登校児生徒

少子高齢化が急速に進む日本の18歳人口は、1992年の約205万人をピークとして、2020年には117万人と減少の一途をたどっています。しかし、そのような状況の中で見過ごすことのできない数字が不登校の割合です。 
小・中学校における不登校児童生徒数と1,000人当たりの不登校児童生徒数(出典:文部科学省「平成30年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」)

小・中学校における不登校児童生徒数と1,000人当たりの不登校児童生徒数(出典:文部科学省「平成30年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」)

文部科学省より発表されているデータを見ても分かる通り、近年その割合は急増しており、年を追うごとに高くなっています。このままの数値が推移すれば、もしかしたら数十年後にはマイノリティである不登校の児童生徒がマジョリティになっているかもしれません。

そもそも、不登校の原因として挙げられるものは、いじめなどによる人間関係の不振、起立性調節障害により昼夜逆転した生活リズムの乱れ、発達障害に伴うコミュニケーションの苦手意識など幅広くあります。また、際立った要因が特定されないケースも少なくありません。

それらを踏まえて不登校の問題を扱う上で留意しておきたいのは、なぜそうなったのかという原因究明よりも、これからどういう選択肢があるのかを的確に認識して情報収集することです。
 

小学生・中学生の不登校に対応するフリースクールの役割

実は、不登校と障害者への対応は、所轄する省庁が文部科学省と厚生労働省という違いはあるものの課題解決のアプローチはとても似ています。今までの学校教育は集団における行動規範、協調性といったものを重視する傾向にありましたが、近年は個性の進展、個人の尊重といった観点が求められています。そうした個別の特性に配慮した支援という点では、まさしく不登校の児童生徒への対応も、障害者へのそれも近いものがあるのです。
 
それらの課題をかかえた児童生徒の受け入れ対応をしている教育機関は、発達障害に関連したところでは放課後等デイサービス、高校進学からは私立の通信制高校、サポート校などがあります。
不登校に対応する教育支援機関

不登校に対応する教育支援機関

義務教育における不登校の課題を考える上で大きな役割を担っているのが、フリースクールの存在です。フリースクールは行政からの許認可が必要とされる機関ではありません。NPO法人や社会福祉法人、塾、通信制高校などが運営母体となっており、さらにはオンラインでの活動を中心とするところもあり、多様なタイプの不登校の“子どもの居場所”を提供してきました。

中には、子どもの在籍校である小学校や中学校と提携関係を結び、たとえ学校に通えなくてもそのフリースクールに来れば出席扱いになるようなところもあります。在籍校だけで抱えていた課題も、フリースクールとともに共有することにより解決の糸口が見出されることも少なくありません。

そして、そういった取り組みから見えてくるものは、集団規範を尊重した従来の義務教育の在り方も、子ども一人ひとりの特性に合わせて変化できることの可能性を示唆しています。
 

万人に合う教育が疑問視される中、義務教育や学校の今後の在り方は?

学校の在り方、義務教育の意義とは

様々な論争を呼んでいる義務教育の在り方

高校からは義務教育の範疇にはあたらないため、当然のことですが、進学するか否かも自由意志です。しかし、義務教育である中学校への進学拒否を宣言する12歳のYouTuberも現れ、学習システム、学校の在り方なども含めて、様々な論争を呼び話題となっています。
 
こうした義務教育の意義が取り沙汰される昨今において、不登校をポジティブに捉えた独自のシステムを作り、公教育として取り組み始めている自治体も現れています。2021年4月、公立の不登校特例校として開校した岐阜市立草潤中学校は、これまでのシステムでは自分の才能を生かせなくて学校に行けなかった生徒、不登校を経験した生徒のため、ICT機器を活用した個別学習など多様な学びを提供し、毎日登校する必要のない革新的なシステムを目指しています。
 
このように、既存のシステムで成り立つ学校に通うことが全てではなく、世代ごとに変化する子どもの特性に合わせた学校づくり、教育の在り方を、地域や社会全体で考えなくてはいけない時代になっているのではないでしょうか。
 

これまでの不登校児へのアプローチと重なる、コロナ禍の学校の対策

2020年度は世界的なパンデミックが生じ、コロナ禍で学校が閉鎖され教育の空白が生じる事態となりました。入学式や卒業式までもが見送られ、分散登校、オンライン学習、様々な支援機関との協力をしながらの学校生活を余儀なくされました。今までのように通学して、授業を受け、皆で行事をこなしていく学校の存在意義とされていたものを覆して対応しなくていけなくなったのです。

奇しくも、逆の視点から見れば、まさしく学校に行けない子どもたちに教育を行ってきた不登校対策のアプローチと同じ状況になっています。大人社会でさえ、ITインフラを活用したリモートワークが推奨され、出勤しなくとも業務ができるような環境を創出させています。

そのような社会変化の中で、既存のシステムで運用されている学校に通うのが是で、それに対応できない子どもを否とみるのは、早計な捉え方かもしれません。

文部科学省は「子どもたち一人ひとりに個別最適化され、創造性を育む教育ICT環境の実現に向けて ~令和時代のスタンダードとしての1人1台端末環境~」とGIGA構想を掲げています。そうした、国が主導するICT教育の実現も見据えた上での新たな学習の在り方、学校の役割、義務教育の意義が模索されています。

【参考資料】
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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