お金の悩みを解決!マネープランクリニック/50代シングルの人のお金相談

50歳、貯金50万円。子どもは独立しひとり暮らしとなり、老後資金の不安を感じました(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、数年前に離婚して中古住宅を購入した50歳の会社員女性です。お子さんが独立して初めて老後の不安を感じたそうです。ファイナンシャルプランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 保険の見直しで毎月貯蓄を。60歳までにしっかり貯める

今現在、手元の貯蓄が少なく、不安になるのはわかりますが、これから貯蓄を増やしていけば過剰に心配されることはありません。大丈夫です。健康で1年でも長く働くことが大切になってきますので、体調管理だけは気を付けるようになさってください。
 
今、毎月の収支がほぼトントンで、貯蓄ができない状態とのことですが、家計支出のなかで削減できるのは保険です。お子さんも独立されたわけですから、保険は基本的に不要です。
 
まず、終身保険は払い済みとし、これ以降の保険料の支払いをストップします。ここまでの保険料分での保障は残ります。解約するのであれば、解約返戻金が支払われます。これまで支払った保険料総額よりは少ないですが、これ以上、保険料を支払って保障を確保する必要はありません。定期保険も同じです。お祝い金が出るタイプですので、解約すれば、いくらかの解約返戻金が受け取れると思います。がん保険は、がんが心配であれば残しても構いませんが、解約して医療共済に新規加入でいいと思います。2000円の掛金で最低限の医療保障を得ることができます。個人年金は、このまま続けてもいいでしょう。
 
こうして無駄な保険を解約することで、毎月の保険料を2万3000円ほど削減することができます。
 
さらに通信費の見直しを考えているとのことですから、併せて、毎月2万5000円は貯蓄できるようになります。
 
毎月2万5000円で年間30万円。これにボーナスから25万円を加えて、年間55万円です。60歳までの10年間で550万円、今ある50万円を加えて600万円まで増やすことができるわけです。
 
また、現在、車のローンがあります。約3年後に残価69万円は一括で支払ってください。約70万円として手元に残るのは530万円です。ただ、ローンがなくなったわけですから、その分も貯蓄に回すと年間で28万円、3年後からの7年間で196万円。合計すると726万円。これが60歳時点での貯蓄額になります。
 

アドバイス2 60歳で収入が減っても、支出も減っているので貯蓄も可能

管理職からはずれると3万円の収入減とのことで、その年齢がわかりませんが、仮に60歳以降、収入が3万円減ったとします。しかし、この時点で家計支出は22万円程度には抑えられていますし、個人年金の保険料支払いもなくなります。貯蓄はそれまでのようにできなくなるかもしれませんが、毎月の収支がトントンであれば、貯蓄からの取り崩しはしなくてすみます。
 
加えて、60歳から個人年金の受け取りがあり、10年間で493万円です。これをそのまま貯蓄として残せるので、60歳時点の貯蓄726万円に493万円を加えた1219万円が70歳時点での老後資金となります。
 
実際には、60歳以降については、ご相談者が何歳まで働けるか、働くことができるかによります。70歳まで働くことができれば、貯蓄からの取り崩しはゼロです。
 

アドバイス3 転職で金銭的には余裕ができるが、ストレスが心配

転職された場合、現在より手取りで約120万円は増えると思われます。その分がまるまる貯蓄となれば、60歳までの10年で1200万円、65歳までの15年で1800万円が、上乗せできます。金銭的にはかなり余裕ができるのではないでしょうか。
 
ただ、業種は同じでも、職場が変わることでのストレスは誰しもあることです。これまでとは勝手の違う職場で、これまでどおりの働き方とはならないでしょう。転職でのストレスだけが心配です。こればかりは、ご自身で判断していただくほかありませんが、現在の職場であれば、実際に80歳まで働くかは別として、勤務時間を減らしつつ、慣れた職場で働き続けられるという点は、大きなメリットのように感じます。
 
仮に、現在の職場で70歳まで働くとしたら、公的年金は繰り下げにし、年金額を増やすことができます。最大42%加算され、現在の見込み額である10万8000円から換算すると、月額15万4000円となります。
 
70歳時点の金融資産が前述のとおり、約1220万円あり、住宅ローンの残りは約500万円。これを一括繰り上げ返済すると、残りの金融資産は720万円ほどに減ってしまいますが、住宅ローンの支払いはなくなりますので、年金だけで十分に生活していくことができます。
 
また、辛いことですが、このころには愛犬も虹の橋を渡っていると思われますので、ペットにかかっていた病院代もなくなり、毎月の支出は10万円程度になっているのではないでしょうか。年金からの貯蓄も可能といえば可能です。
 
転職を判断されるときの、ひとつの材料にしていただければと思います。
 
最後に、住宅ローンの繰り上げ返済については、70歳時点で一括返済でも構いませんが、途中で200万円程度の繰り上げ返済が可能でしたら、返済期間の短縮にもつながり、75歳まで働かなくては、と無理をすることもなくなるでしょう。ただし、手元には1000万円は残すようにしてください。
 
老後にいくらあれば安心かは、人それぞれです。ご相談者は堅実に生活されています。本当の老後にどんな生活がしたいのか、そんなことも、この機に考えてみてください。健康で無理せず、1日でも長く働くことが、大切なことだと思いますよ。
 

相談者「愛犬吉宗」さんから寄せられた感想

貯蓄型保険の追加を考えていましたが、アドバイスは真逆のものでした。何かあった時の為にと加入していた保険が、経済的に圧迫していたことを痛感しています。家族状況の変化があったのにもかかわらず、見直しをしなかった。必要な保障だけを選び、貯蓄に回したいと思います。かなり不安だった老後ですが、アドバイスいただいた貯蓄額を見て、少しは安心できました。老後に、どんな生活をしたいのか……のお言葉に、正直考えたことがありませんでした。返済返済、仕事仕事。そんな人生になるだろうと覚悟していたので。一度きりの人生。したい生活とはどんなだろうと考えながら、心豊かな時間が生きられるように、今できることを一つずつ正していこうと思いました。背中を押していただき、ありがとうございました。

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教えてくれたのは…… 
深野 康彦さん  
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金まわり全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。著作に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/伊藤加奈子



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