返礼のしるし「内祝い」、基本マナーと現代事情

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慶びをたくさんの人と分かち合うために物に託したものが「内祝い」。現在は、返礼のしるしといった意味でも使われている

おめでたいことに対する嬉しい気持ちから贈り物をしているにもかかわらず、その後、相手からお返しを頂き、かえって負担させているような気持ちになってしまったことはありませんか?

日本は昔からの慣習として、慶事や弔事、行事や記念日、お中元やお歳暮などにおいて贈答を交わす機会が多く行われてきました。その際のお返し文化「内祝い」の本来の意味を正しく理解すると現代事情とは少し違うことがわかります。
 

「内祝い」の本来の意味と現代事情

小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』によると、内祝いの意味は下記のようになります。

本来は内輪だけ(身内)のお祝いの意味です。出産、婚礼、年祝いなどは、かつての古い村の生活では個人の問題として済ますことはできませんでした。なぜなら共同体の1人としての位置づけがあったからで、ともに喜び、ともに祝うという習慣がありました。

その後、時代の変化によって、個々の家のなかだけで済まそうとする傾向が強くなり、招いて喜びをともにすべき人に対して、贈り物で代用する習わしが増えてきたのです。喜びをともにする、といっても中心は共同の食事でしたが、その祝宴に招くかわりに贈るという気持ちもあったようです。昨今では内祝いとして贈る場合、祝い品を贈られた際の返礼のしるしといった意味でも使われています。

このように内祝いは本来、相手からお祝いを頂かなくても感謝の気持ちを表すためにこちらから贈ることでした。いわゆる“幸せのおすそ分け”ですね。

現代ではお祝いを頂いていない相手に幸せのおすそ分けとして内祝いを贈ってしまうと、半返しを催促されたような変な誤解を与えてしまいます。お返しはお祝いを頂いたからであって、今はそのお返しが内祝いとして贈る意味合いになってきたようです。
 

お返しを必要とする行事

慶事はもともとお返しという形ではなく、「内祝い」としてお返しをします。昔から「半返し」が基本とされていますが、これはあくまで目安だと思ってください。先方との関係性や事情に合わせることが大事ですので、あまり金額にこだわらなくてもよいでしょう。
金額もいろいろと悩むところ、お返しを贈るタイミングもそれぞれの場面によって違ってきますので注意すること

金額もいろいろと悩むところ、お返しを贈るタイミングもそれぞれの場面によって違ってきますので注意すること

■結婚祝い
披露宴に招待しなかった場合、結婚式の1カ月後くらいまでを目安に贈るようにします。式後は
いろいろと諸手続きなどで忙しく、お礼状を出すのを忘れがちになりますが、頂いたらできるだけ早く送るのが礼儀。だいたい結婚内祝いは招待しない人に贈るものなので、入籍や結婚式の1カ月前後がちょうど良いタイミングになります。

■出産祝い
「内祝い」として、頂いた額の3分の1~半額程度が目安だと考えればいいでしょう。くださった方が多く、それぞれのお祝いの額に合わせて品選びをするのも大変な場合、一律で全員に同じ品物を贈ってもかまいません。グループなどで頂いた場合は、お菓子などが全員に行き渡るように品を選びましょう。

■不祝儀のお返し
不祝儀をいただいたら、3分の1~半分程度を目安としてお返しします。不祝儀は、もともと遺族の経済的な負担を軽くするものとして始まった習慣。一家の働き手がなくなったり、子どもの養育費に当てるような場合は、あえてお返しなしでも差し支えありません。その場合、お礼状は必ず出すのがマナーです。

■快気祝い
見舞っていただいた金額の3分の1~半分程度。頂いた金額がまちまちでも、一律で贈ってかまいません。会社関係で部課などからという場合は「○○課御一同様」としてお菓子などを贈る場合が多いようです。退院や床上げ後、10日ぐらいが目安。贈る品は病気が残らないようにということで、お菓子類(クッキー・チョコレートなど)、石鹸、タオルなど消耗品が一般的。お礼状を添えることも忘れずに。ちなみに退院後もまだ療養が続くなら「快気内祝い」とします。
 

お返しが不要な行事

子どものお祝いで頂いたとき、また災害・火事など大きな出費のあった場合などは、基本的にお返しはしません。しかし品物で返さなくても感謝の気持ちを込めてお礼状は贈りましょう。先方との関係性や事情に合わせることが大事です。

■子どもの成長に対するお祝い
出産祝いを除いて、入学式、卒業式、成人式、また初節句などのお祝いは主に身内のお祝いのため、お返しをしないのが基本です。子ども本人から電話や手紙などで感謝の気持ちを伝えるようにしましょう。また身内以外の方からいただいた場合はお返しをしますが、その場合は実用品を贈られるとよいでしょう。

■お歳暮・お中元
目下の者から目上の方へ感謝の気持ちを伝えるものなので、贈られた側からのお返しはしません。その場合は届いたらすぐに電話をしたりお礼状を出すのがマナーです。

■災害・火事見舞い
災害見舞いの場合のお返しはしません。生活が落ち着いたら、お礼状、もしくは直接お礼のご挨拶に伺うようにします。お礼の品を持参する場合は、無地の短冊に「粗品」「御礼」とします。火を出してしまったお詫びの挨拶には品物を「御詫び」「お詫び」「粗品」として持参します。

■栄転・昇進・転勤
昇進・栄転祝いのお返しはしません。新しい部署に就いたときに知らせる挨拶状などにお礼の言葉を添えればよいでしょう。個人的にお世話になった方から頂いたような場合は、お礼状を出します。転勤で餞別を頂いた場合もお返しは不要、お礼状を出します。金額的に多く頂いたなら転勤先の名産品(銘菓)などを礼状と一緒に送るといいでしょう。

■陣中見舞い
陣中見舞いとは、選挙運動、受験勉強、スポーツの合宿、芝居や催し物の練習、舞台などに対して激励のつもりで現金やお菓子、花束などを贈ること。お返しは基本的にしませんが、終わったり結果が出たら、報告をかねてお礼状を出したり電話をしましょう。お返しをする場合は、時期を改めてしたほうがよいでしょう。

■引越し
ご近所の方などからお餞別をいただいたり、送別会をして頂いた場合のお返しは基本的にしません。新しい場所での生活が落ち着いた頃にお礼状を出しましょう。特にお世話になった方には、二千円から三千円ぐらいを目安にその土地の名産品などを贈ることもよいでしょう。

■新築
新築披露に招待しておもてなしすることがお返しになりますので、あらためてする必要はありません。ただし、招かなかった人で高価なものを頂いた場合は、御祝いの3分の1~半額くらいの金額を目安にお返しをすればいいでしょう。
 

“半額”返しって本当に必要? 半返し文化の現代事情

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何かに役立ててほしいと贈ったはずが、反対にお返しによる金銭を負担させてしまうことになりかねない

お祝いを頂いた相手へのお返しは、昔から「半返し」が基本とされてきました。たとえば現金や品物を頂いたなら、その半分相当になる品物をお返しとして、もらった相手へ贈るという慣習であり、儀礼とされてきました。

しかし、「物入りで大変なときだからこそ、何かに役立てて欲しい」「困ったときは皆で助け合いましょう」と贈ったはずが、反対にお返しによる金銭を負担させてしまうという、本末転倒な話にもなってしまいかねません。ですので、必ずしも半返しでなくてもいいのではないかと思います。特に甘えることができる家族や親しい友人には、気遣いする必要はないでしょう。

昨今は、結婚や出産が同時期でお互い様のような立場でしたら、お互いに欲しいものを選んで“お返しなし”のお祝いを贈るケースも増えているよう。ただし、このように半返しをしない選択は、親しい間からでこそ成り立つもの。今の日本の慣習では「非常識」と捉われても致し方ないともいえるため、相手との関係、ケースバイケースで考えてみればよいでしょう。
 

「お返し要りません」と言われたら?

結婚祝いの場合、お返しがないのは「片祝い」といわれ、縁起がよくないといわれています。「お返しはいりません」と先方に言われても、真に受けてしまわないようにしましょう。その場合はいただいた金額の3分の1程度のお返し、またお返しはしなくても感謝の気持ちのお礼状を贈ってくださいね。ちなみに結婚式に出席された方は「引き出物」がお返しになります。

その他の贈答を交わす機会では、最近はお返しをしない若い方も増えているようです。煩わしい贈答の習慣を仲間内で撤廃する――理にかなった考え方ですね。

一方で「お返しは要りません」と言われたとしても、何もお返ししないのは非常識に当たることもありえます。頂いた相手によっては社交辞令ということも考えられます。その辺の見極めは正直難しいものです。

そんなときは、形式ばったお返しではなく、別の機会を利用するという考えはいかがでしょうか。例えば旅行先でのお土産、珍しい食べ物を見つけた、美味しいお菓子の嗜好品などを「よろしかったら召し上がってください」と贈るのです。お返しをするときはタイミングも大切。適当な機会をよく見計らって贈るとよいでしょうね。

親族や親しい方でしたら家や飲食店に招待してご馳走するのもひとつの方法。またお誕生日やクリスマスなど季節の挨拶として、さりげなくお返しするとよいかもしれませんね。


いかがでしたでしょうか。「内祝い」や「半返し」を言いかえれば、感謝の気持ちを物に託して相手に伝えるということ。煩わしいと思えばそれまでですが、日本人ならではの「真心を贈る」ことを知っておいてください。
 

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