紺・グレー、黒や白……色から考える、卒業式や入学式の親のスーツ
子どもが主役のセレモニーでは、親は、子どもをたてたその場にふさわしい格の装いをします。色によってもフォーマル度は変わるので、ご注意を!
セレモニー服は、スーツやワンピースなどの“色”で印象が大きく変わります。色のもたらすイメージや伝統的な意味から、子どもの行事にふさわしい親のスーツのマナーについてご説明します。
<目次>
子どもの節目に着たいスーツの色の選び方
子どもの成長を喜ぶ節目の行事において親の服選びの基本は、行事の意味を考え、主役である子どもをたてることです。その行事がどんな意味を持つのかを考えると、色合いも自然と決まってきます。「感謝」「別れ」の卒園・卒業式は、厳かな雰囲気ですから、やはりフォーマルな場になじむダークカラーがよいでしょう。
「お祝い」「出発」の入学式は、明るい色もよいですし、ダークカラーでも問題ありません。ダークカラーの場合、小物などで華やかさを足すことで、お祝いや感謝の気持ちも表現できますし、初対面の方にも優しげな印象を与えてくれます。
さらに、家族でポイントカラーをリンクさせるのもおすすめです。写真に映えますし、「小さなおそろい」が思い出にも残ります。
主役をたてるというのは、子どもと同じか、格下の装いをするということ。子どもは、和の行事であれば着物やスーツ、園・学校行事であれば制服や準制服のような服装をしますから、大人はさほど格式ばらない略礼装(洋装ならダークカラーのスーツ)が一般的です。格下でも、普段着ではカジュアルすぎます。
どんな服装を選ぶかは、色以外にも様々な要素の組み合わせで決まる
実際にどんな服を選ぶかは、もちろん色だけでは決まりません。素材やデザインによっても、フォーマル度は変わってきます。今は、スーツのほか、ワンピースやカセット服(マルチセットアップ)も人気です。ドレスコードは、地域や園・学校によって全く違いますから、先輩保護者や先生に聞いたり、園・学校のホームページの過去の式典をチェックしたりして、リサーチしてみてください。また、「黒」「スカート」などルールが決まっている園・学校もありますから、ほかの行事との兼ね合いで早めに購入前する場合は、事前に確認してみるとよいでしょう。
また、女性は装いの選択肢が多い分、悩んでしまいがちですが、色・ドレスコードのほかに、予算や求めている条件を整理してみると、したい装いが明確になるでしょう。たとえば、普段着・通勤にも着回したい、妊娠中、産後、式の後すぐに謝恩会があるなど、希望や事情は一人ひとり異なりますし、それにより選ぶ服も変わるはずです。
ネイビー:誠実、清潔感
それでは、スーツの色について見ていきましょう。ベーシックなルールが分かっていれば、アレンジも自在。どうかピッタリのスーツが見つかりますように!まじめさと信頼感を感じさせるネイビーは、男女ともに使い勝手がいいオールマイティーな色。清潔感もあるので、入園・入学式と卒園・卒業式で同じスーツを着たいというときには、ネイビーがおすすめです。堅苦しくなりすぎないよう、入学式には、インナーや小物で華やかさとやわらかさをプラスします。
同じネイビーでも、濃紺は厳格、明るめのネイビーはさわやかでカジュアルな印象です。とはいえ、ネイビーと表現できる範囲の色味であればフォーマル感は充分。式典だけでなく、学校行事やビジネスシーンに着回す場合は、明るめを選んでもいいですし、普段使いするなら色を濃紺にし、素材をカジュアルにするのも一つの方法です。
グレー:品格、スタイリッシュ
ビジネススーツの定番色であるグレーは、落ち着きと知性、洗練を感じさせる、フォーマルにも使いやすい色です。日本でも、藍みがかった薄墨色である鈍色(にびいろ)は、平安時代以降、公家の喪服に用いられた色の一つでしたし、江戸時代には「奢侈禁止令(しゃしきんしれい)」を出された町人たちが、「四十八茶百鼠(しじゅうはっちゃひゃくねずみ)」と表現されるほど多くの粋な鼠色を生み出しました。やや濃いめのグレーや黒とグレーのミックスツイードのジャケットは、入学・卒業両方に使いやすい
ライトグレーは、クールでスマートな色。入学式にも人気ですが、卒業式など格式を重んじる場では軽すぎることもありますから、注意が必要です。
ビジネスシーンでの定番色ですが、通勤用と兼ねるなら、小物でお祝いの雰囲気を出しましょう。お子さんも「いつもと違う」装いを、きっと喜んでくれます。
ブラック:重厚、モード
黒は、子どもの行事には賛否両論ある色ですが、全体にハレの日にふさわしい装いであれば、今は使用しても問題ないといえます。黒を避けた方がいいといわれるのは、喪の雰囲気を醸し出してしまうことがあるからです。また、黒は喪服やタキシードに使われる色であり、欧米ではビジネスシーンに黒のスーツを着用する習慣がないため、格が高すぎるとも考えられます。
とはいえ、日本での「黒」の位置づけには大きな変化がありました。着物が正式な装いとされていた昭和30~50年代くらいまで、園・学校行事の母親の定番のスタイルは、着物に黒羽織でした。その後、洋装化が進み、冠婚葬祭用(慶弔着回せるタイプ)のブラックフォーマルを着る人が増えましたが、行事そのものがカジュアルな位置づけになってくると、次第に黒が古めかしく感じられるようになりました。
しかし今また、モード感のあるおしゃれなイメージで黒のスーツを着る人が増えてきています。
ですから、お祝いの席で黒を着るならば、否定的な意見も理解した上で、デザインや素材、小物に気をつけましょう。園・学校行事の場合、全体の印象が硬いと、先生や来賓のように見えてしまいます。また、家族全員が黒の装いですと写真も暗くなってしまいますから、明るさや軽やかさを意識するとよいでしょう。
なお、黒のストッキングは、喪の行事以外では着用しません。
ホワイト:清潔、無垢
主役感が強いため、子どもの行事に着るスーツの色としては、気をつけたい色です。元来日本では、白は神聖な色でした。また、地域にもよりますが、昭和初期までは葬儀を取り仕切る人は白を着る人が多かったのです。
神社の白い紙垂(しで)。宮司・巫女・山岳信仰の行者・神様のおつかいや化身である白馬・白蛇なども白ですね
白を選ぶなら、アイボリーなど真っ白でないものや、ツイードなど表面がパリッとしていないものがおすすめ
なお、園・学校行事の場合、白いネクタイは、先生・来賓の色なので、避けた方が無難でしょう。
パステルカラー:華やか、優しい
明るい色のスーツは、お祝いらしく気分が晴れやかになりますし、周りにもやわらかな印象を与えます。入園式や小学校の入学式で人気の色です。華やかでやさしい明るい色のスーツは、入園・入学式にピッタリ! 一方で、厳かな雰囲気の卒園・卒業式では、少し重さが足りないことがあるかもしれません
男性のスーツとしては、入学式や春のお宮参りなどでも厳格さに欠けてしまいますが、淡い色付きのシャツは、問題ありません。
基本をアレンジして、特別な日にふさわしい装いを!
先述した通り、地域、園・学校によって、セレモニーのドレスコードは全く違いますし、また、長い目で見ると、色についての印象や意味さえも時代により変わっていきます。つまり、これが正解!という答えはありません。ですから、基本的なマナーを押さえて、大切なハレの日とその装いを、楽しんでくださいね。
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