運動と健康

「実年齢より体力年齢が若い人」は運動経験がある?若さを保つ運動習慣

【アスレティックトレーナーが解説】実際の年齢と体力年齢の差には、運動経験の有無も関係しているようです。スポーツ庁が公表している『体力・運動能力調査』をもとに、学生時代の運動経験と体力年齢・暦年齢の関係を紐解いてみましょう。年齢をかさねるごとに高まる運動習慣の必要性とメリット、どのような運動から始めればよいかもあわせて解説します。

西村 典子

執筆者:西村 典子

アスレティックトレーナー / 運動と健康ガイド

「実年齢=体力年齢」を変える運動の効果

「実年齢より体力年齢が若い人」は運動経験がある?

運動をした方がいいのはわかっているけど、なかなか続かない人も多いのでは


健康的な生活を送るために運動はもはや欠かせない習慣です。運動によるメリットは枚挙に暇ありません。生活習慣病の予防、いつまでも好きなことができるように体力維持すること、加齢による体型の変化をなるべく抑えること、心身のリフレッシュなど、運動を行わない理由が見当たらないほどです。

しかしすべての人が運動を習慣としているわけではなく、人によっては実際の暦年齢と体力年齢に大きな差が見られることもあります。

スポーツ庁が公表している『体力・運動能力調査』は最初に東京オリンピックが開催された昭和39年(1964年)以降、毎年実施されているものですが、この中には学校で運動部(クラブ)活動を経験した人と未経験の人の暦年齢に対する体力年齢との比較について、調査が行われています。体力年齢は平成11年(1999年)度以降に採用されている新体力テストに基づき、20歳~64歳の成人には握力、上体起こし、長座体前屈、反復横とび、急歩、20mシャトルラン(往復持久走)、立ち幅とびの7項目が実施されています。詳しく知りたい方は、令和4年度体力・運動能力調査結果の概要及び報告書について 統計数値表(PDF)をあわせてご覧ください。
 

運動経験の有無も関係する体力年齢の差

高校又は大学在学中の運動部活動経験について、経験のある人と経験のない人のデータを見てみると、運動部活動の経験がない群では「実際の年齢よりも体力がある」とされる体力年齢<暦年齢の割合は、運動部活動の経験がある群と比較して各年代とも低くなっています。

一方、運動部活動の経験がある群では年齢が高まるごとに体力年齢<暦年齢の割合が増えています。運動部活動の経験がある群で体力年齢<暦年齢の割合が多い背景には、学生時代に経験した競技スポーツをレクリエーションレベルでも続けている可能性や、運動そのものに抵抗がなく気軽に行っていること、自分の体力レベルを理解した上で、自分に合った運動を選択して行っていることなどが考えられます。

一方、運動部活動の経験がない群では運動習慣のなかったところから運動を始めるという行動が必要になりますが、日常生活で多忙な日々を過ごしているうちに運動をするタイミングを失っていること、運動そのものに対する抵抗があること、運動の必要性は理解していても何から始めていいのか分からないといったことが運動習慣を妨げるボトルネックになっているのではないかと推察されます。
 

年齢が高くなるほど、運動の必要性も高くなるわけ

テニスをする人々

日頃の運動習慣が体力年齢に大きな影響を及ぼす


若い年代ほど今持っている体力で日常生活を問題なく過ごせると思いますが、加齢とともに体力はゆるやかに減少していきます。この時に運動習慣のある人とない人では日常動作にちょっとした違いが見られるようになり、その差がどんどん大きくなるにつれ、体力年齢にも差が見られるようになります。

例えば小さな段差でつまずきやすい状態を放置しておくと、転倒による骨折のリスクが高まることが懸念されますし、運動不足によって体重過多となった状態では、やがて膝や足首など荷重関節と呼ばれる部分を中心に痛めてしまうことも考えられます。さらに肥満(体脂肪率が男性では25%以上、女性では30%以上)傾向が見られると、生活習慣病のリスクが高まることも想定されます。こうしたことからも年齢があがればあがるほど、体力年齢を維持するために運動する必要性が高くなると言えるでしょう。

毎年無事誕生日を迎えられたときには、この1年に感謝し、さらに体を動かして元気に過ごすという目標をもって気軽に運動を続けられるようにできるといいですね。
 

下肢筋力のトレーニングで日常生活で効果を実感

スクワットをする女性

日頃の活動量を支える下肢筋力を意識して鍛えよう


どのような運動でも構わないのですが、自分の体力レベルにあったものを選んで行うことが大切です。運動習慣のなかった人がいきなりハードなトレーニングを行ってしまうと、翌日ひどい筋肉痛に悩まされたり、トレーニングによってケガをしてしまったり……といったことも考えられます。

まずは「少しもの足りないかな」というレベルから始めてみて、もう少し続けたいと思えるようになったら段階的に運動強度を上げるようにしていきましょう。特に下肢筋力の衰えは日常生活に支障を及ぼしやすいので、その場でできるスクワットやカーフレイズ(その場でのつま先立ち)を繰り返し行ったり、ウオーキングやジョギングなどの軽い有酸素運動を行ったりすることをオススメします。

体を動かすことに慣れてきたら、スポーツジムやスポーツ教室などを利用することも良いですし、やりたかったスポーツに挑戦してみると楽しく体を動かすことができそうです。最も大切なことは運動を始めることではなく「運動を続けること」。楽しく取り組めるものを長く続けられるようにしていくことが理想的です。
 

初心者でも始められる運動を! まずは身構えずスタートを

高校又は大学在学中の運動部活動経験から考えられるのは、運動そのものが身近にあったかどうかということですが、経験のなかった人でも運動は思い立ったら今日から、今すぐにでも始められるものです。年齢があがるにつれて運動の必要性は大きくなるため、暦年齢よりも若々しく、活動的に過ごすためにも今できることから始めてみましょう。

■参考
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