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中学受験の難化により「連戦連敗」してしまう子も
「たくさん受ければどこかには通る」は親の勘違い
最近の中学入試は「午後入試」というものが一般化しているため、たとえば、2月1日午前、2月1日午後、2月2日午前……というように1日に午前・午後と受験していき下手すると3日間で6連敗、なんてことにもなりかねません。中学入試は高校受験と違い「併願確約」のようなものがありませんので、不合格が連続してしまうことは決して特異な例ではないのです。
実は、高校受験しか経験していない親世代の中には、「たくさん受けていればどこかには必ず引っかかるでしょ」と軽く考えている人が少なくありません。高校受験のシステムが「高校未合格者をできる限り減らす」という観点から様々なセーフティーネットが張られているため、どこかには合格できるはずという安心感があるのですが、中学受験には残念ながらそれがないのです。ですから「どこからも合格がもらえず公立中学に進学する」というケースが存在してしまうわけです。
「連続不合格」はそれほど珍しいことではないですし、また第一志望に合格できず涙を呑む小学6年生が少なくないことも確かです。中学受験という世界は厳しい世界なのです。
第一志望に落ちてしまったら、親はどう声をかけるべき?
では、実際に子どもが第一志望で合格を勝ち取ることができなかった場合、どんな声かけが有効なのでしょう。「よく頑張ったね」とねぎらってみても、白々しくなってしまう可能性があります。「第二志望の入試がまだ残っている」と声をかけると、かえって傷つけてしまう危険もあります。私はこうした場合は「あたたかく見守る」ことを、ぜひおすすめしたいと思います。子ども達は今まさに大きな挫折を経験し、それを乗り越えるために必死に悲しみや苦しみと向き合っています。あれほど恋焦がれてきた第一志望にはもう通えません。これほどの辛さはこれまでの人生できっと感じたことがない筈です。しかし辛く苦しいことを経験している今まさに、子ども達は大きく精神成長しようとしているのです。
そしてそれは、自分の力で乗り越えてもらうしかないことなのです。親にできることといったら、ただあたたかく見守ることだけなのです。
親が気を落としていると、子どもも責任を感じて苦しむ
我が子の現実をしっかり受け止め、子どもの前では落胆する様子を見せない
保護者の皆さんもさぞやガックリされているでしょう。3年間あるいは4年間も塾に通わせ、お弁当を作りお尻を叩いて一緒に頑張ってきたのですから、その落胆は想像を絶するものがあります。
しかしだからこそ、親には相当の胆力が必要です。我が子の現実をしっかり受け止め、そして子どもの前では決して失望や落胆を見せてはいけません。そうした親の姿を見せれば子はきっと、必要以上に親への責任を感じてしまい、今後伸び伸びと生きていけなくなるかもしれません。ここは親にとっても正念場なのです。
「全落ち」という不幸を避けるために、まだ出願できる学校を探してあげるのもひとつの手です。学校によっては前日の夜や当日の朝まで出願を受け付けているところもあります。どこかしらから合格をもらえれば、少なくとも「公立か私立か」選択することができます。その方が「行くところがなくて仕方なく公立」に進むよりは遥かにいいでしょう。
偏差値だけでなく、指導方針や価値観で学校選びを
最後にこれを読んでいる小学5年生以下の保護者の皆さんにお願いがあります。もし中学受験を志すなら、お子さんが現時点で持っている偏差値に相当する学校群の中で、お子さんに将来通わせてもいいと思える学校を見つけておいてください。その際、偏差値ではなく「指導方針」や「校風」に価値観の比重を置いてください。魅力的でお子さんに合った学校は、探せば必ず存在するはずですから。
偏差値が高い学校ほどいい学校と親が思い込んでしまい、子どもに無理な挑戦をさせても、結果として失敗につながったり、子どもの心に大きなダメージを残すことにもなりかねません。
私の教え子には、大手模試の偏差値50未満の学校でも、6年間楽しく余裕をもった学校生活を送った子がたくさんいます。そしてその後、偏差値が高いといわれる慶應や早稲田大学といった有名大学に進学した生徒も少なくありません。中学受験のときの学力なんてそんなもんです。
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