夫、主人、旦那……配偶者の呼び方、今のスタンダードは「夫」
男性配偶者の呼び方に戸惑うことはありませんか? 今のスタンダードは「夫」! オン・オフ共に使用できる表現です
そして、こちらが「夫」を表す主な呼称の例です。
- 主人 …… 家の長・店の主・自分の仕える人
- 旦那(だんな) …… お布施をする人・雇用主や顧客などのお金を出してくれる人
- 亭主 …… その家の主・茶の湯で茶事を主催する人
- パパ・お父さん …… 父親
ここからは、国語教員・図書館司書を経て、現在は作文を始めとするライティングや情報リテラシー教育のアドバイザーとして活動する高橋真生が、男性配偶の呼称についてより詳しく解説していきます。
使い分けを求められる「夫」「主人」「旦那」
ただし今でも、正式な「夫」ではなく、男女同権の観点から問題であるとされている「主人」を使った方が受け入れられやすい状況は、珍しくありません。また、「夫」という呼び方に冷たさを感じる人もいるようです。そのため、TPOに沿った使い分けが求められることになります。
●オフィシャルなシーンでの「夫」
ビジネスなどオフィシャルな場面、知人や不特定多数(SNSなど)とのやりとりでは、「夫」を使います。上で述べた通り、基本的には「夫」はどんなときでも使える表現です。
●プライベートでは「主人」
プライベートに近い場面では「夫」という呼び方は、生意気・よそよそしいなどと言われてしまうことがあります。特に、目上の人のいるときや妻としての立場で行動するとき(夫の仕事関係者への挨拶など)は、「主人」がよく使われます。
●親しい友人同士で使われる「旦那」
「旦那」は、親しい人やママ友同士のくだけた会話で多く使われますが、自分の配偶者を「旦那」と呼ぶ人が多い場では、「夫」は壁を感じさせてしまうこともあるようです。そこで、まわりに合わせて「旦那」、響きが強すぎるときは「主人」「うちの人」に置き換える人もいます。
ちなみに「旦那」は、オフィシャルな場面や目上の人には、使えません。「主人」よりも格は上とはされていますが、今は、カジュアルでやや雑な印象を与えてしまいます。
配偶者の呼び方を使い分けるのはマナー?
こういった使い分けに抵抗のある方は、呼称を考えてもらうためのアクションとして「夫」を使い続けてもよいでしょう。ことばは意外と伝染しやすいですし、聞く方が慣れるということもあります。ただ、使い分けが暗に強制されるようなコミュニティでは、無理をせず、「夫」以外のことばに置き換えてもよいと思います。身近なことばを一朝一夕に変えるのは難しいものですし、自分と異なるマナーやルールに対する複雑な感情が絡んでくることもあるからです。
時間はかかるかもしれませんが、上手にコミュニケーションをとりつつ、その違和感も持ち続けていれば、適切なタイミングに行動を起こすことができるでしょう。
日常的に「主人」という呼称を使う人は、本来の意味を意識することはないのかもしれません。けれど、日本の一般常識にとらわれていない、たとえば子どもや外国人の目から見たとき、「主人」ということばが主従関係を連想させることは、理解しておきたいものです。そう知ることで、自分の子どもに「お父さんは、お母さんの"主人"である」と思わせたくないという人も、きっと出てくるでしょう。
今話している相手の配偶者を何と呼ぶか
話している相手の配偶者を何と呼ぶかについては、今のところ、「ご主人」が一般的です。「主人」ということばに抵抗があっても、これに代わるちょうどいい呼称が見つからないために、やむを得ず使っている人も多いのでしょう。なお、ご本人が「パートナー」など、上下関係を感じさせない呼び方をしている場合は、「パートナーの方」と相手に準じます。「〇〇さん」と名前で呼ぶ方がスッキリするケースもあります。
また、「〇〇さんのお宅では」「〇〇さんのご家族は」など、あえて「夫」に該当することばを使わない方法もあります。
バランスのいい「パートナー」、考えていきたいこれからの呼び方
配偶者の呼称については、これまでも議論が重ねられてきましたが、実態に合った、心理的にも落ち着くことばは、まだ見つかっていないと言えます。最もフォーマルに使える「夫」であっても、既婚・未婚、相手の性別など、相手のプライベートに踏み込んでしまいます。だからこそ、今、誰もが使える呼称が求められているのではないでしょうか。
たとえば「パートナー」は、まだなじみがなく、ともすると主張の強いことばに聞こえてしまうかもしれません。でも、どんな要素にも左右されませんから、便利です。海外の方と日本語でやりとりする場合にも、使いやすいと思います。
既婚・未婚、相手の性別などに踏み込まない「パートナー」という呼称
配偶者の呼称については、「なんとなく使っている」「ただの呼び方の問題」という人も多いでしょう。けれど、「正式にはなんと呼ぶのか正解か」といった話題は、実は配偶者の呼称ということば上の問題だけではなく、同時にその呼称がもたらす優劣のイメージや、その表現に抵抗があったり困ったりする人についても考えているのです。
ことばには、枠組を作る働きがあります。私たちは、それにとらわれてしまうこともありますが、自分で選択することもできます。これから自分が生きたい世界に合った表現を真摯に選んでいきたいものです。
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