川上未映子さんの「夫婦の呼び方」に関するコラムが話題に

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夫婦でどんな呼び方をしていますか?

2017年3月6日配信の「朝日新聞デジタル」に掲載された、芥川賞作家の川上未映子さんのコラム「主人や嫁という言葉を使うのはやめよう」が話題を集めました。

川上さんがご自身の息子さんに男女のフェアネスを意識しながら接している話を通じて、「『主人』や『嫁』という言葉は賞味期限」「まずは家庭の中を変えよう」という意見を述べています。

これに対してネット上では賛成・反対の様々な意見が集まっています。そこで、この機会にパートナーの呼び方について考えてみたいと思います。


妻と夫の「パートナーの呼び方」の実態

パートナーの呼び方は2通りあると考えられます。ひとつは夫婦間でお互いを呼ぶ場合、もうひとつは第三者に対してパートナーを呼ぶとき(指すとき)の場合です。


あなた?お前?夫婦間での妻や夫の呼び方は?

夫婦間の呼び方に関しては、こんなアンケートがあります。ORICON STYLE eltha(エルザ)が、2014年に20~50代の既婚男女を対象に調査したところ、次のような結果になりました。

現状の呼び方TOP3は以下です。

1位【パパ、ママ/お父さん、お母さん】27.6%
2位【名前をそのまま】18.6%
3位【あだ名】15.7%


これに対して、理想の呼び方TOP3は以下です。

1位【名前をそのまま】24.5%
2位【パパ、ママ/お父さん、お母さん】19.3%
3位【名前にちゃん、くん付け】15.4%


現状と理想で、1位と2位が入れ替わった形になりました。

子どものいる家庭では立場上「パパ、ママ」という呼び方になってしまっていても、本当は名前で呼んでほしい、という皆さんの「理想と現実」が現れた調査といえるでしょう。


他人に話すときの妻や夫の呼び方は?

もうひとつの、「第三者に対してパートナーを指すときの呼び方」に関しては、リクルートのブライダル総研が2011年に首都圏、東海、関西に在住の既婚者および離婚経験者1200人を対象に実施したアンケートが公表されています。

それによると外で他人に話すときの配偶者の呼び方は、男女で以下のようになっています。

【男性】
1位:「嫁・嫁さん」 33.6%
2位:「名前」「家内」 いずれも10.0%
4位:「奥さん」 8.8%
5位:「妻」「かみさん」 いずれも8.6%
7位:「女房」 7.8%
8位:「うちの」 4.4%
9位:「ニックネーム」 2.6%
10位:「お母さん・ママ・お母ちゃん」 2.2%


【女性】
1位:「旦那・旦那さん」 33.6%
2位:「主人」 28.6%
3位:「お父さん・パパ・おとうちゃん」 9.6%
4位:「名前」 9.2%
5位:「夫」 7.8%
6位:「ニックネーム」 5.4%
7位:「うちの」 1.8%
8位:「姓」 1.4%
9位:「呼ばない」 0.8%
10位:「相方」 0.6%


結果は様々な呼称に分かれましたが、男性は「嫁」「家内」「名前」の3つ、女性は「旦那」「主人」の2つで半数超になっており、これらが主流であることがわかります。

細かく見ると回答者の年齢層による違いもあり、男性の「嫁」は若い層が多く、年齢が上がると「家内」が増えます。女性も若い層は「旦那」が多く、年配になると「主人」が増えるという傾向があります。


使う場や対象者によっての呼称の使い分け

さらに、この調査ではそこまでわかりませんが、その言葉を使う場がカジュアルな場合かフォーマルな場合か、相手がパートナーのことを知っている場合か知らない場合かによっても使う呼称は変わってくるでしょう。

カジュアルな場であれば「うちのパパは」というのもありですが、フォーマルな場ではちょっと場違いです。また、話の相手が既にパートナーのことを知っているなら「○○が」と名前だけでもいいでしょうが、知らない人でしたら名前だけでは通じない場合が出てきます。

さらに自分のパートナーを呼ぶ場合と、相手のパートナーを呼ぶ場合でも異なってきます。

自分の配偶者の場合なら「うちの夫が」、「私の妻が」などと言えても、相手の配偶者を「おたくの夫が」、「あなたの妻が」と呼ぶわけにはちょっといきません。「夫様」、「妻さん」という言い方に日本語として違和感がある以上、やはり相手の配偶者への敬意をこめて「おたくのご主人」、「あなたの旦那様」と呼ぶことになるでしょう。

「主人」や「旦那」という上下関係をイメージさせる言葉は嫌いという方でも、この場合は他に置き換えられる適切な言葉がないので、これらの言葉を使わざるを得ないのではないでしょうか?


「主人」という呼び方に込められた妻の気持ち

つまり現代では「主人」という言葉は、もともとの意味(=自分が仕える相手の意味)で使うというよりも、一種の旦那様への「敬意」の表れ、「敬称」として使っている人が多いのではないかと考えることもできそうです。

もちろん、冒頭でご紹介した川上さんがおっしゃる

「言葉って本当に大事」
「主人とか嫁とか呼ばれていると、そういう関係性が内面化されていく。だから言葉の力を馬鹿にしてほしくないんです。」

という主張も十分納得ができます。人は言葉で物事を定義する以上、使う言葉はその人の意識と深く結びついています。

しかし私は「主人」という言葉には、わざと意図的にパートナーを立てて、持ち上げて、「あなたが一番偉いのよ、一家の中心よ」とおだててやる気にさせる「戦略的」な一面もあると思っています。夫を「あなたがこの家庭の支配者よ」と持ち上げておきながら、実はしっかり大事なところは妻が握って、掌で夫をころがす。

日本女性ならではの家庭円満の知恵が、この言葉には含まれているのではないでしょうか。

「主人」、「嫁」という言葉を字面通りとらえて「封建的だ」というだけでなく、そこに込められた「意図」もくみ取って考えるといいのではないかなと思います。

むしろ、私が夫婦間の呼び名で注意すべきと感じるのは、この第三者に対してパートナーを呼ぶとき(指すとき)ではなく、夫婦間でお互いを呼ぶ場合ではないかと思います。

夫婦間の中でお互いを「おい」、「お前」のように呼ぶような場合は、もしかすると相手を見下すような夫婦関係であったり、心情的に距離感があったりという関係である可能性があります。馴れ合いとはおそろしいものです。

妻が夫を「ねえ」、「ちょっと」、「あのさ」と呼んでしまうのも注意信号です。名前を口にするのも面倒くさいという気持ちの現れかもしれません。古いテレビドラマに出てくる「あなた~」は、甘える気持ちを込めて使うと効果的かもしれません。

セックスレスの悩みを長年受けていますが「パパ・ママ」、「とうさん・かあさん」派は、いざというとき、名前を呼ぶのが恥ずかしくなってセクシーモードに切り替わらないと言われます。セックスレス予防のためには普段から名前で呼び合うことが重要です。

夫婦関係を考える上では、「お互いを呼び合う時にどう呼んでいるか?」がひとつのフィルターになるのかもしれませんね。


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