きゅうりの栄養は? ギネスでも紹介されたもっとも低カロリーな果実
95%は水分のきゅうり、栄養学的なメリットはあるのでしょうか?
きゅうりは「ウリ科キュウリ属」の植物で、日本では平安時代から栽培されていたお馴染みの野菜のひとつです。1年中出回っていますが、夏が旬の野菜です。サラダにしても美味、漬物にしても美味で、夏のおやつに1本丸かじりしたことがある人もいるかもしれませんね。
そんなきゅうりは、ギネスブックに「Least calorific fruit」と紹介されています。直訳すると「もっともカロリーの低い果実」です。このためでしょうか、きゅうりは水分ばかりで栄養がないというイメージを持っている人も少なくないようです。
きゅうりのカロリー・栄養素・健康効果
実際、きゅうりの栄養価を調べてみると、100gあたりのエネルギーは13kcal、水分95.4gです。95%が水分では、たしかに栄養がないと思われても仕方がないのかもしれません。多い栄養素を探してみると、カロテン(ビタミンA)が330μg、カリウムが200mg。他の野菜でも代用ができそうな栄養素が主であり、正直、きゅうりが苦手な人が無理して食べるほどの栄養はなさそうです。しかし、本当はこの「95%が水分である」ことが最大のカギ。きゅうりは夏が旬の野菜ですが、夏に多い熱中症の対策法として「水分を摂る」ことがあります。きゅうりを食べることで水分摂取ができます。またカリウムも含まれていますから、熱中症対策として必要な「ミネラル」も同時に摂取できます。夏にきゅうりを食べることで、水分やミネラルを摂取することができるのです。旬の時期に旬の野菜を食べることの大切さが分かりますね。また、カリウムは、むくみ予防にも効果が期待できます。
「きゅうりはビタミンCを壊して健康に悪い」という説はウソ
たまに「きゅうりはビタミンCを壊して健康に悪いというのは本当ですか?」という人がいますが、解答を先に書いておきますとこれは「誤り」です。ビタミンCには「還元型」と「酸化型」の2つがあります。以前は、このうち「還元型」だけがビタミンCとしての活性を持っているため、「酸化型」になると活性を持たなくなると思われていた時期がありました。この頃、酸化型になってしまうことを“壊れた”と称していました。きゅうりには、還元型ビタミンCを酸化型に変える「アスコルビン酸酸化酵素」が含まれているため、きゅうりは栄養を摂れるどころか、ビタミンCを破壊する悪いヤツだとウワサされてしまったのです。
しかし、本当は「還元型」と「酸化型」は可逆的。つまり、一旦、変化してもまた元へ戻ることができるため、「アスコルビン酸還元酵素」で「酸化型」になってもビタミンCとしての効果は変わりません。よって、「きゅうりがビタミンCを壊す」ことはありません。安心して召し上がってください。
きゅうりの食べ過ぎ……冷え・腎臓への負担にやや注意
きゅうりは夏が旬の食べ物ですので、どうしても体を冷やす力が強いです。真夏の暑くてたまらない時期であれば、多少は問題ないと思いますが、特に冷え性を自覚している人は注意が必要です。またカリウム含量が多いので、腎臓に負担がかかっている場合は少し控えて食べるのがよいでしょう。
きゅうりの塩もみ……栄養学的な意味はないが、調理学上はメリット大!
塩もみをしても「栄養学的に」はそこまで大きな意味はありません(むしろ、食塩を追加してしまうので栄養学的には嬉しくないかもしれません)。一方で、塩もみは「調理学上」は非常に有意義です。- 日持ちするようになる……塩もみすることで、きゅうりの中の水分が抜ける(浸透圧で水分が抜ける)ため、保存がききやすくなる。漬物と同じ原理です
- 色鮮やかに料理が仕上がる……切ってしばらく置くと鮮やかな緑色がくすんできますが、塩もみをしておくと、この変色を抑えることができます
- 味がしみこみやすくなる……塩もみをしていないきゅうりに味付けをしても表面に味がつくだけで美味しくありませんが、塩もみをしたきゅうりだと中まで味がしみこんで、しっかりした味付けになります。酢の物などは典型的です
- たくさん食べられる……塩もみすることでカサが減り、量を食べられるようになります
栄養学的というよりは、美味しく食べるためのひと手間と考えるとよいと思います。美味しく食べるためのひと手間といえば、ぜひやってほしいことがあります。「きゅうりのあく抜き」です。やり方は、きゅうりのヘタの部分を切って、断面同士をこすり合わせるだけ。白い泡のような灰汁が出ます。灰汁を洗い流すか、布巾できれいにふき取って、あとは普通に調理すればOK。これはぜひやってください。味が全然違います!
きゅうりは栄養価以外の魅力にも目を向けて
きゅうりは栄養学的にはさほど価値はなく、「嫌いかぁ~、なら無理して食べなくてもいいよ」というレベルになってしまうのですが、独特の気持ちの良い食感で、食欲が進むことも期待できます。水分補給やカリウムの補給など、夏にほしい栄養素を補給してくれる優秀な野菜といってよいでしょう。また、「もっともカロリーが低い」ことを逆手に取れば、ダイエット食品には向いているともいえます。腎臓に負担がかかっている場合は、カリウム含量が多いので、気をつけなければなりませんが、肥満が気になる人には夏の食材のひとつとしてオススメです。■参考
- Guinness World Records Limited
- キュウリ(旬の食材百科)
- 紅葉おろしのビタミンC(PDF)(調理科学 Vol.23No.4(1990) p.361-366)
- 実は奥が深い「野菜の塩揉み」、その効果と向いている野菜とは?(オリーブオイルをひとまわし)
- 青菜に塩(辻調理師専門学校)
- キュウリの「ヘタ」と「実」の切り口をこすりあわせることにより渋味を低減できる(農研機構)