●厚生年金保険料は標準報酬月額によって決まります
●標準報酬月額は9月から適応され原則1年間変わりません
●標準報酬月額計算には手当を含んだ給与がつかわれる
●厚生年金保険料が上がらないようにできることは?
厚生年金保険料は標準報酬月額によって決まります
日本の公的な年金制度には学生や自営業、フリーターが加入している国民年金と、サラリーマンや一定の基準を満たしたパートさんなどが加入する厚生年金の2種類が存在します。このうち国民年金の保険料はその人の収入にかかわらず月額1万6610円(令和3年度)と決められており、物価や賃金の変動率を参考に毎年4月に改定されます。一方で厚生年金の保険料は一律ではなく、その人の給与に応じて保険料が決まります。しかし給与は残業代等により毎月変動しますので一定の基準が必要となります。具体的には4月、5月、6月の3カ月間の給与の平均額を一定の幅に区分された表に当てはめた「標準報酬月額」という額を用います。厚生年金保険料はこの「標準報酬月額」に保険料率(注1)をかけて計算され、会社が毎月の給与から徴収しています。
なおこの「標準報酬月額」は健康保険料を計算する際にも使用されており、社会保険料を計算する際の基礎となる金額と覚えておくとよいでしょう。
注1:厚生年金の保険料率は18.3%ですが半分は会社負担のため本人負担率は9.15%です。
標準報酬月額は9月から適用され原則1年間変わりません
4月、5月、6月の給与の平均額から決められた「標準報酬月額」はその年の9月から適用され原則1年間変わることはありません。そのため、それをもとに決められる厚生年金保険料も9月以降の1年間は原則変わらないことになります。しかしながら年の途中で昇給、減給、家族の増減等により大幅な給与の変更があった場合はその限りではありません。具体的には給与の変更があった月以降3カ月間の平均額が該当する標準報酬月額が、それまでと2等級以上違う場合には年の途中であっても厚生年金保険料が改定されます。
標準報酬月額計算には手当を含んだ給与が使われる
前述したように標準報酬月額は4月、5月、6月の給与の平均額をもとに決められますが、それには各種手当(残業、通勤、家族、住宅 、帰省、etc.)を含んだ給与が用いられていることには注意が必要です。普段の月はそれほど給与が多くないのに、4~6月は残業代などで極端に給与が多くなるような業態であるとか、なんらかの理由で4~6月だけ多額の各種手当が支給された場合なども、手当が含まれた給与をもとに標準報酬月額が計算されますので、9月から徴収される厚生年金保険料が増えてしまいます。つまり昨年と比べ年収は変わらないのに厚生年金保険料が増加し、年間の手取り額が減ってしまうこともありうるのです。厚生年金保険料が上がらないようにできることは?
前述したように厚生年金保険料は4月、5月、6月の手当を含んだ給与の平均から標準報酬月額を算出した上で決まりますので、対策としてはその期間の給与が上がらないようにすればよいことになります。例えば、4~6月は残業手当が多くなりすぎないように時間調整してみるとか、会社から住宅手当が支給されて自分で住居費を払っている人は、社宅扱いにし会社が直接大家に家賃を支払うようにすれば住宅手当が給与に反映されることはありません。また給与にインセンティブ制度などがある場合には、4~6月以外の月に支給してもらえないかを会社と交渉してみる、などが考えられるのではないでしょうか。
【関連記事をチェック】
公的年金いくらから税金はかかる?取り戻すことはできる?
年金額は毎年変わる、令和3年度からはどうなる?
厚生年金の受給額早見表!計算式と簡単試算表をチェック
年金保険料を未納にするとどうなる?未納にしない方法とは