自粛による運動不足……高齢者は持病悪化や死亡率増加リスクも懸念

室内での運動を楽しむシニア

運動不足によって体が受ける悪影響は、特にシニアには深刻です。室内でも体を動かすことを楽しみましょう


運動不足は健康に様々な影響を与えます。特に高齢者の場合、若い方よりも受ける悪影響が大きいです。それには、高齢者の生理的な体の特徴が関係しています。多くの方に実感があると思いますが、年齢が上がるにつれ、人間の体は回復しにくくなり、回復するとしても時間がかかるようになります。20代の頃は徹夜しても平気だった人も、30代、40代になると、徹夜の後は2日くらいスッキリせず、疲れを引きずってしまう、というのも、よく聞く話ではないでしょうか。「歳をとる」ということは、予備力がなくなること、そして回復しにくくなることでもあります。

2020年2月の時点で、日本整形外科学会の下部組織である、私たち『ロコモチャンレジ!推進協議会』が行なった全国調査では、新型コロナウイルスの影響で、60歳以上の方は過半数の方が外出を控えており、およそ半分の方が運動が減り、4割近くの方が家で座っている時間が増えた、という回答をされました。

この調査は緊急事態宣言の前のものですから、その後、もっと多くの方が体を動かさない時期を過ごされたと考えられます。若い方でも運動不足は問題ですが、若い方の良いところは、一時的な運動不足があっても、すぐ回復する余力があることです。高齢者の場合は、一旦体の状態が悪くなってしまうと、改善に時間がかかることが心配されます。
 
高齢者が体を動かす機会が減ると、足腰の衰えはもちろんのこと、例えば糖尿病、高血圧、心臓病など生活習慣病の持病が悪化する可能性があります。さらに、長期的にはその他の合併症や死亡率を上げることも危惧されています。
 

事故や怪我の外科治療だけではない整形外科の役割

「整形外科」と聞くと、若い方は怪我や交通事故の治療をする場所だというイメージが強いかもしれません。しかし、人生80年、90年の現代、大きな問題になっている「一生の間、どのように動ける体を維持するか」ということに取り組んでいるのも整形外科です。

整形外科では、運動器、つまり体を動かす部分である骨や筋肉や神経を扱います。車でいえばボディや、タイヤなどの動く部分です。同じく車で例えると、エンジンは心臓、制御コンピュータは脳にあたりますが、いくらエンジンが丈夫でも、タイヤがパンクしていたら動けません。そのため整形外科医は、どうやれば長期間、車を動かしてゆけるか、つまり一生の間、元気に動ける体でいるために、どうお手伝いすれば良いのかをいつも考えています。

高齢者が動ける体を保つためには、毎日少しでも良いので、安全で、自分にあった効果的な運動をすることが重要です。運動というレベルに達しなくても、体を動かす工夫をぜひ取り入れてください。詳しくは「高齢者にオススメの運動」でも解説します。
 

ロコモチャンネルのトレーニング動画もぜひ活用を

外出自粛は孤立を引き起こします。自粛により、外での運動も、他の人とのつながりも難しくなってしまうからです。緊急事態宣言中は、腰や膝が痛くても生死に関わらないものは不要不急だと、病院へ行かずに自宅でじっと我慢していた方もいると聞きます。

緊急事態宣言は多くの地域で解除されましたが、今後も自粛要請がある可能性もあります。整形外科医として、新型コロナウイルスと共存していく間も、動ける体を保つことをお手伝いしたいという思いから、ロコモチャンネルというサイト内で「全国の整形外科専門医のトレーニング動画」などの特設ページも立ち上げています。これらのコンテンツを発信しながら、高齢者を含む多くの方々に寄り添っていければと思います。コロナがおさまってもおさまらなくても、私たちの生活は続きます。ぜひ、一緒に頑張りましょう!
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