2020年4月、コロナウイルスの感染拡大で保育園の自粛要請が続く中、最大手のベビーシッターマッチングアプリに登録している男性ベビーシッターが、5歳男児へのわいせつ行為で逮捕されました。
男の子の後ろ姿

男の子も性被害にあうということは、あまり知られていません。 

コロナ流行に関わらず、子どもを預けて働かなければならない親はたくさんいます。しかし、保育士やシッターに性暴力の可能性があれば、子どもを安心して託すことはできなくなります。子どもたちが被害に遭わないよう、そして被害を最小限に抑えられるよう、親は何ができるのでしょうか。
 

前科があるにも関わらず保育に携わる事例が多発している

AERAdot.の記事によると、容疑者の男性ベビーシッターには複数の前科があり、ほんの数か月前の1月と2月に強制性交等の疑いで警察に逮捕、起訴されています。類似の犯罪歴があるにも関わらず、なぜ容疑者はシッターを継続できたのでしょうか。
 
2016年秋、その前年に神奈川県で生後4か月の男児を死亡させたとされる元保育士が女児にわいせつ行為をして再逮捕され、保育士資格の取消し手続きの不備が問題視されるようになりました。
 
保育士資格は都道府県が登録の実務を担っています。児童福祉法では保育士が禁錮以上の刑に処せられた場合、2年間は保育士として働けないと定めており、都道府県が登録を取り消しています。しかし、自らの犯罪歴を「本人が」都道府県知事に届け出ることが前提となっているため、都道府県は保育士の犯罪を市町村からの情報やマスコミ報道などで把握するしかなく、取消し漏れが起らないような法整備を求められているのが現状です。また、登録が取り消されても、2年後に再登録すれば、再び保育士として働くことができるようになります。
 
まして、今回の事件に関係するシッターマッチングサイトは、登録に保育士資格は必須ではありません。犯罪歴の把握はさらに困難だったことでしょう。
 
筆者は、男性の保育士が増えることは良いことだと思っています。「男性のシッターなら、息子とたくさん遊んでくれるのではないか。お兄さんのようなシッターさんなら、色々な話もできるのではないか」と、男の子のシッターに男性を望む親の気持ちも理解できます。そして、登録されているシッターの大半は、性別に関わらず、子ども好きで親切な方々です。
 

小児性愛とは何か?

子どもに性的な関心を持つことは「小児性愛(障害)」と言われ、世界中で使われている、医療情報を集約したMSDマニュアルでは、次のように定義されています。
 

小児性愛障害は,思春期前の小児または若年青年(通常13歳以下)を対象とする性的興奮をもたらす反復的な強い空想,衝動,または行動を特徴とするが,本人が16歳以上で,かつ空想または行動の対象である小児より5歳以上年長の場合に限り診断される。

 
また、大半の小児性愛者は男性で、小児にしか魅力を感じない場合(純粋型)と、成人にも魅力を感じる場合(非純粋型)があり、自分の身内である小児にしか魅力を感じない小児性愛者もいるとのことです。

小児性愛障害の治療では、グループワークなどの精神療法や、依存症の治療、薬物療法などが行われます。
 

加害者はどんな人たちなのか?

筆者は、過去に携わった加害者プログラムで、子どもへの性犯罪歴を持つ人たちとも関わってきましたが、彼らの多くがソフトな雰囲気を持った人です。いかにも子どもに好かれそうな……。そうなのです。子どもへの性加害には、脅しよりも、親しみやすさが利用されるのです。外見で彼らを性犯罪者だと見分けるのは不可能だと思いました。
 
私は彼らと関わるうちに、傷つきを抱えた「支援が必要な人」だと感じるようになっていきました。DV家庭で育っていたり、虐待やいじめなどの暴力被害を受けていたり、発達の問題を抱えていたり。子ども時代に大人の男性から性被害を受けたことのある人も少なくありませんでした。加害行為を依存症的に繰り返し、犯罪だとわかっていてもやめられず困っている人もいました。

しかし、どんな理由があろうと、性犯罪は決して許されるものではありません。どんなにつらい過去を抱えていたとしても、性犯罪を正当化することはできません。

性被害を受けると、被害者は恐怖のあまりフリーズすることがほとんどです。子どもならなおさら。それを彼らは「受け入れてくれた」と都合良く解釈してしまう。子どもがなついてきたことを「性的に誘ってきた」と信じて疑わない。加害者プログラムでは、そのような「認知(考え方)のゆがみ」を修正し、大人である自分が子どもに対し、圧倒的な力の差を利用して加害したことに気付かせ、自分の問題点と向き合うことを支援します。
 
2020年5月、福岡県で、性暴力加害者の相談窓口が設置されました。わが国では大阪府に続いて2例目の取り組みです。再犯率の高い子どもへの性犯罪の再犯防止のほか、加害者になる不安を抱えている人の相談に乗り、専門家の治療や支援につなげます。
 
   

息子を加害者にしないために

「男らしさ」「女らしさ」のことを「ジェンダー」と言います。性別によって、社会から「こうあるべき」と求められる規範のことです。多くの男の子たちは「強くあれ」と言われて育ちます。「負けるな」「泣くな」「隙を見せるな」「言い訳するな」と、常に頑張ることを期待されます。人より上に立つことが「男らしい」と評価されます。
 
「男らしさ」にとらわれていると、男としての自信を回復するために、自分より弱いものを利用しようとします。それが女性や子どもへの性加害にも繋がります。
 
痛かったら泣いてもいいのです。弱くてもいいし、女の子より背が低くてもいい。勉強ができなくてもスポーツができなくても、それは個性の一面でしかありません。「男らしく」なくたって、たくさんいいところを持っています。子どものありのままを受け入れ、長所を伸ばしていく。それが、子どもたちを伸び伸びと成長させるのではないでしょうか。誰かを支配して自分の優位性を確認したがるのは、自信のなさの裏返しであることがほとんどです。
 

被害を最小限にするために

子どもを加害者にしないために親ができることはあっても、子どもが被害者にならないよう親ができることはあまりありません。せいぜい「どのように気をつけるか」といったところでしょう。全ての犯罪は加害者がいなければ起こりませんし、加害者は、被害者がどんなに気をつけていても、巧みに加害するからです。ですから、被害を最小限にとどめることが、現実的な対処法になってきます。
 
今回の男性シッターから男児への性暴力は、男の子が「パンツを脱がされて触られた」と親に伝えたことで発覚しました。容疑者の携帯電話には複数の子どもの裸の写真や加害の動画が残っていたそうですから、いやなことをされても親にうまく伝えられなかった子どもがたくさんいたことがわかります。
 
親は、保育士や教師、スポーツクラブのインストラクターなど、子どもに深く関わる人を疑いたくないものです。そして実際、そうした仕事に就く人のほとんどは、子どもに性加害をしたりはしません。

しかし「子ども好き」の中には、間違った「好き」が混在しているのも現実です。ですから「もしも先生にいやな触られ方をしたら、話してね」と、子どもに言っておくことはとても大切です。多くの加害者は加害の後に口止めをしますので「言っちゃだめ、言ったらひどいことになるぞ、って言われたとしても、必ず教えてね。大丈夫だから」とも伝えておきましょう。
 
 
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