子育て/プラス思考の子を育てるコツ

子どもの傷つきを見逃さないために気をつけたいこと

子どもの「異変」に気づいたとき、そのはるか前に子どもからS.O.S.が出されていたことに思い当たることは少なくありません。早い段階で子どもからのS.O.S.に気づくためにはどうすればいいのでしょうか。

福田 由紀子

執筆者:福田 由紀子

臨床心理士/メンタルケア・子育てガイド

後になって気づく、子どもからのS.O.S

女の子

親の知らないところで小さな胸を痛めていることがあります

子どもが学校に行かなくなった、成績がガタ落ちした、親に対して反抗的な態度を取るようになった、など、子どもの「異変」に気づいたとき、そのはるか前に子どもからS.O.S.が出されていたことに思い当たることは少なくありません。

そういえば、いつも遊んでいたお友だちの名前を最近聞いていない。休みの日に友だちと出かけることがなくなった。ずっと前に友だちとケンカしたと言っていた。など、思い当たることはあるものの、それがいつのことだったのか思い出せないということもあるでしょう。それほど深刻なものとは思わず受け流してしまっていることも多いものです。

早い段階で子どもからのS.O.S.に気づくためにはどうすればいいのか、S.O.S.に気づいたとき親はどのように対応すればよいのかについて考えます。


わかりにくい子どもからのS.O.S.

子どもの傷つきに気づいたとき、「どうしてあの時、気づいてあげられなかったのだろう」と自分を責めたり、「もっと早く言ってくれればよかったのに」と子どもに対してじれったい思いを抱いてしまうこともあるでしょう。

しかし、そもそも子どもからのS.O.S.はわかりにくいものです。それにはいくつかの理由が考えられます。


「親に心配をかけたくない」

子どもなりに、プライドもあります。自分の身の回りのトラブルは自分で解決したい。解決できる自分でありたい。そう思うのもまた成長の印。

また、子どもは親の状況をよく観察しているものです。相談しようとしたとき、親が忙しそうにしていたなど、たまたまタイミングが合わず、言いそびれてしまったということもあるかもしれません。

今相談したら、心配をかけてしまう。負担をかけたくない。そんなふうに気を使っていたのかもしれないし、親に言っておおごとになるのを恐れたのかもしれません。

いずれにせよ、子どもを責めても自分を責めても、あまりいい結果は生みません。今回は自分ひとりで背負うには重すぎたけど、「自分でなんとかしようとしたんだね」と、その心意気を十分に受け止めましょう。

そして、これからの対処について一緒に考えましょう。子どもに内緒で親が動かないことを約束するのも大切なことです。子どもには子どもの人間関係があり、その子なりの考えもあります。子どもの気持ちを尊重する姿勢を見せると、今後もっと早い段階で相談してもらえるようになるでしょう。

「あなたが悩んだ時には、一緒に考えたいし、心配もしたい」そんなふうに伝えるのもいいですね。


うまく言葉にできない

いじめにしても、暴力に振るわれる、持ち物を取られたり壊される、クラス全員に無視される、といったわかりやすいものから、「え、それって、いじめなの?」と思ってしまうようなものまで様々です。

もしかしたら気のせいなのかもしれない。そんなふうに気持ちを切り替えながら、どうにか対処しようとしてきたのかもしれないし、自分の感じていることをうまく言葉にできないできたのかもしれません。

「モヤモヤ」や「イライラ」というのは、気持ちのざわめきの正体がよくわかっていない時に抱く感情でもあります。なんとなく不快。でも、何が不快なのかを説明しようとすると、それをうまく伝えられる自信がない。そんな時は、なかなかS.O.S.を出せないものです。

ただ、そうした言葉にならない思いは、語尾や動作が乱暴になるなど、行動に出がちでもあります。単なる「反抗」ではない可能性を頭の片隅に入れておくと、子どものS.O.S.をキャッチしやすくなるでしょう。


私たちは「些細なこと」で傷つく

子ども自身は、自分の傷つきを自覚していて、それでもなかなかサインを出せないこともあります。

もしかしたら、自分が悩んでいるのは、取るに足らない些細なことかもしれない。そんなふうに思うと、なかなか「相談」というアクションは起こせません。

でも、「些細なこと」というのが、実は問題だったりします。

大人でもそうですよね。些細な出来事だと自分でもわかっている。でも、その些細なことに傷ついた自分が、小さいなあ、弱いなあ、と思って、自己嫌悪に陥ったりしませんか。

発端となった出来事は些細なことかもしれないけれど、それまでに積もり積もったことがあるのかもしれない。表面張力でギリギリ保っていたストレスが、たった1滴の「些細なこと」であふれ出すのは、珍しいことではありません。

声をかけても無視された。すれ違いざまに舌打ちされた。授業中うまく答えられなかったときにクスリと笑われた。自分にだけ連絡が回ってこなかった。などなど、子どものいじめも大人のいじめも、「些細なこと」の積み重ねという形で行われることが多いものです。もしかしたら自分の勘違いかもしれないと思うからこそ、本人に聞くこともためらわれる。

そうやって追いつめられていった時に、いちばん言われたくないのは「考えすぎじゃない?」という言葉かもしれません。何度も自分で検証してみた。些細なことだと自分に言い聞かせてもきた。そういうつらさはわかってもらえないんだ思うと、絶望的な気持ちになるかもしれません。

「この人は、どうしてそんな些細なことで傷ついてしまうのだろう?」と感じるとき、私たちは「この人の心が弱いからだ」ということで片付けてしまいがちです。自分の子どもなら、叱咤激励したくもなるでしょう。でも、悩みを抱えながらこれまで頑張ってきたことを労ってあげたいものです。

子どもからのS.O.Sは「些細な傷付きの告白」という形で行われることが多いことも知っておきましょう。

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