最悪な対応は「そんなこと言うもんじゃありません」

子ども

子どものつらい気持ちに寄り添うことが大事です

「死にたい」……年端もいかない我が子からそんな言葉を聞くと、親は動揺してしまうものです。悲しみや怒り、不安、やるせなさなど、色々な感情がわき起こって、果たしてこの子にどのように対応すればいいのだろうと戸惑ってしまいますよね。今ここでの親である自分の対応が、子どもを更に傷つけ、最悪の事態を招いてしまったりはしないかと、怖くなるかもしれません。

「こんなに愛しているのに」「大事に育ててきたのに」という気持ちが強ければ強いほど、子どもから自分の人生を否定されるようなことを言われると、親は傷ついてしまいます。驚きのあまり「そんなことを言うもんじゃありません!」などと叱ってしまいそうにもなるでしょうが、そこはぐっと我慢しましょう。子どもには「つらい気持ちになってはいけない」と、否定や批判のように伝わってしまいます。


最悪の状態を想定して対応する

子どもの多くは、「死」というものを身近に経験したことが大人よりはるかに少ないので、「死」の持つ意味も影響もよくわかっていません。子どもの「死にたい」には、積極的に自分を破壊したいというものから、消えてなくなってしまえればいいのにといううっすらとした願い、明日学校に行きたくない、といったものまで、色々な段階があります。

大人がイメージする「死」と、子どものイメージする「死」は違います。大人同士でも人によって違いますから、大人と子どもならなおさらです。この段階では、親が命の大切さや自分の死生観を説いても、追いつめられている子どもの心には届きません。むしろ逆効果です。

最悪の状態、最高にリスキーな状態を想定して、「つらい」という気持ちを受け止めることに専念しましょう。子どもの置かれている状況を知ろうとして、詳細を聞き出そうとするのは、後にしましょう。感情が大きく揺れ動いている時に、我が身に起こったことを客観的に表現することのできる人は、大人でも少ないでしょう。

「そう。死にたいと思ってしまうくらい、つらいんだね」これをまず、しっかり言葉に出して伝えることが大切です。高ぶった気持ちが落ち着いてきたら、子どもは自分に起こった出来事を、ポツリポツリと話し始めるでしょう。


大人の基準で判断しない

大人の価値基準で「死にたくなるほどのことかどうか」を判断したり評価したりしないようにしましょう。

状況が見えてくるにつれ、大人からすると「なんで、そんなことで」と思ってしまうことがあるかもしれませんが、「死にたい」と言葉にするというのは、「余程のこと」です。毎日がつらくてつらくて仕方がない。それを表現する最大級の言葉として「死にたい」が出てきているのだということを理解しましょう。子どもの目から、今世界がどのように見えているのか。それを共有しようとする姿勢を見せることが大切です。

「たいしたことじゃない」とか「もっと強くなれ」などと、言わないように注意しましょう。大人でも、自分で「たいしたことじゃない」と思うようなことで悩んでいる時の方が「たいしたこと」で悩んでいる時より、自分を情けなく感じてしまって、つらくありませんか。突き放すような態度や激励は、「わかってもらえない」と、子どもを孤独に追いやることになりかねません。一度閉ざされた心を開くのは大変です。

子どものつらさに共感し、「この状況を変えるには何か方法があるはず。それを一緒に考えよう」と提案してみましょう。


何があっても味方だと伝える

窮地に追い込まれたときに、助けてと言える相手がいる。しかもそれが親である自分であることに自信を持ちましょう。これまでの子育ての中で、子どもとしっかり関わってきた証拠です。死にたいほどのつらさを打ち明ける相手は、その子が最も信頼している人です。「この人なら、わかってくれる」と思ってくれたということです。「話してくれてありがとう」と、まずは言葉に出して伝えましょう。

そして、「何があっても味方だよ」とか「力になりたい」と、しっかり目を見て伝えましょう。「そんなにつらい思いをしていたことに、気づかなくてごめん」と率直に謝るのもいいでしょう。「言葉で伝えること」、これが、案外大事です。

お友達とのトラブルなど、自分の子どもにも非があったと感じてしまうこともあるでしょう。でも、それは、事態が落ち着いてから後でゆっくり子どもと考えればいいことです。子どもの、絶望するほどつらい気持ちをなんとかするのが先。子どもが嫌がらなければ、たくさん抱きしめてあげましょう。子どもが「ひとりじゃない」と感じられることが大事です。

人生経験の少ない子どもは「今の生活や人間関係が全て」と感じて煮詰まりやすく、その中で対処できない自分に絶望してしまうことがあります。なので、「そんなにつらければ、学校を休んだっていいし、不登校になってもいい。あなたがいなくなるより、ずっといいよ」というふうに、生き方には色々な選択肢があること、世界は学校の外に大きく広がっていることを、人生の先輩のひとりとして、自分の言葉で伝えてあげられるといいですね。

くれぐれも「お父さん(お母さん)は、こうやって乗り越えたぞ!」と武勇伝を語らないようにしましょう。子どもは「そんなふうにできない自分」に更に情けなさを感じてしまいますので、「今のあなたくらいの年に、同じような思いをしたことあるよ。苦しいよね」と、つらさや情けなさに共感しましょう。


「死なない」と言葉に出して、約束してもらう

子どもが少し落ち着き、話が一段落したら「私はあなたに死んでほしくないよ。生きていてほしいよ。死なないって、約束してくれる?」とたずねましょう。たとえ前向きに考えられるようになりつつあったとしても、子どもが「死にたい」と言ったことを、なかったことにしないようにしましょう。

「死なない?」という問いかけに頷いたら、「声に出して、死なないって言って。死なないって約束して」と、言葉にすることを求めましょう。

言葉に出して「死なない」と約束し、その声を子どもが自分で聞くことが大切なのです。私たちは、自分が声に出して言ったことに対して、責任を持とうとするからです。

「死にたい」は「生きたい。でも、どうやって生きていけばいいのかわからなくて、つらい」というS.O.Sだと思って対応しましょう。


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※乳幼児の発育には個人差があります。記事内容は全ての乳幼児への有効性を保証するものではありません。気になる徴候が見られる場合は、自己判断せず、必ず医療機関に相談してください。