アドバイス1 子どもの援助をあてにせず、自力で老後資金を貯めること
ぷっちゃんママさん。これまで1人で子育てをし、息子さんの就職が決まり、ようやく一息つけますね。でも、息子さんからの生活費援助をあてにしてはいけません。老後資金に不安があるからといって、就職したばかりの息子さんを頼るのではなく、まず、家計支出を整理し、できるだけ自力で貯めるようにしてください。アドバイスを読んでいただければ、息子さんからの援助がなくても、大丈夫なことがわかると思います。もしも、息子さんが、1万円でも2万円でも家に入れたい、と言ってきても、それは使わずに、独立するときの資金として出してあげるぐらいの気持ちでいたほうがいいのではないでしょうか。
まず、現在の家計のなかで、通信費が重複して計上されています。息子さんが1万2000円負担してくれているのなら、実際は6000円ですね。通信費だけは、これからも息子さんに1万2000円は負担してもらうようにしてください。事実、息子さん自身が利用している分ですからね。
そうすると、現在の収支差は4万5000円ですが、プラス1万2000円で5万7000円が差額となります。このうち、毎月2万円を貯蓄、2万円を予備費とされていますが、毎月4万円の貯蓄はできるはずです。予備費を1万7000円とすれば、他の支出が現状のままでも大丈夫です。予備費も使わない分は貯蓄とされているわけですから、年間でかかる車関連費などを再度チェックして、予算組みをしてみてください。
もうひとつ、見直しをするとしたら、息子さんの県民共済。現時点でも不要です。就職したら、お子さんはお子さんで保険加入すればよく、親が出す必要はありません。もっとも、息子さんも最低限の医療共済などに新規加入すれば十分です。
毎月4万円の貯蓄ができれば、60歳になるまでの12年間で576万円、これに今ある貯蓄160万円を加えて、合計736万円貯めることができます。この間、車の買い換えで50万円の出費があったとしても、686万円は残すことができます。
アドバイス2 生活費をコストダウンできる2~3年後からが最後の貯めどき
ぷっちゃんママさんが、あまり無駄使いされていないのは、データからも文面からもわかります。さらに2~3年後に息子さんが転勤で独立されたら、引っ越しして、住居費をコストダウンされるとのこと。理に適っていると思います。2~3年後に、おひとりになってからが、最後の貯めどき、と言えるでしょう。住居費が下がり、食費や光熱費も今より下げることができるでしょう。毎月2万円を追加で貯蓄できれば、9年間で216万円、月3万円追加できれば、324万円を上乗せできます。60歳時点で約1000万円残すことができるのです。
1人の生活は、いろいろと不安があるかもしれませんが、60歳時点で1000万円残せ、生活費をキープしていければ、問題ないのではありませんか? 最初から息子さんの援助をあてにするのではなく、60歳までの貯蓄プランを立て、今からコツコツと貯蓄額を積み上げていってほしいと思います。
アドバイス3 公的年金の不足分をできるだけ抑えれば、90歳過ぎまで大丈夫
60歳以降も、職場が変わったとしても働き続けたいと決意されていることも、立派です。公的年金の受給開始65歳までは、収支がトントンになるような働き方ができればいいと思います。貯蓄はできなくても、60歳までに貯めた資産をできるだけ取り崩さないようにすれば、その後の生活も不安なく過ごすことができるでしょう。年金の見込み額が月換算で5万円強とのことですが、国民年金でも満額受給で月7万円程度です。厚生年金の加入期間があれば、さらに多くなります。派遣社員でも厚生年金加入ではありませんか? いただいたデータは現時点での見込み額だと思いますが、65歳から受け取れる公的年金額を再度確認しておくようにしてください。
仮に、公的年金が8万円、毎月の支出が11万円とすると、不足分は月3万円、年間36万円。貯蓄から取り崩していくことになりますが、ゼロになるのは27年後で、92歳のときです。
70歳以降の生活がどうなるかは、現時点ではなんともいえませんが、働けるうちは働く。息子の自立を応援する。本当に介護が必要になったときに、息子さんにサポートをお願いする。そういうことでいいのではないでしょうか。
老後に必要なお金は、人それぞれです。1億円あっても足りないと言う人もいれば、500万円あればなんとかなる、と考える人もいます。ぷっちゃんママさんが派手な生活を望んでいないのであれば、老後はそれほど心配する必要はないと思いますよ。
相談者「ぷっちゃんママ」さんから寄せられた感想
自分の家計管理が果たして正解なのか?誰にも聞くことなどなかったため、深野先生のアドバイスが『大丈夫だよ! 正解だよ!』と言われているように思えて安心しました。息子が家に入れてくれるお金は全て息子用の貯蓄にします。そして、息子が独立した後はおひとり様を満喫しようと、今から楽しみな気持ちでいっぱいでいます。この度は、深野先生、マネープランクリニックスタッフの皆様、ありがとうございました。●マネープランクリニックのラジオ番組を始めました!
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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など
取材・文/伊藤加奈子
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