アドバイス1 貯蓄ペースを維持できれば老後資金は大丈夫
老後資金のご相談ですが、ともあれ試算をしてみましょう。現在、新型コロナウイルスの影響で、失業中ながら以前の給与水準と同等の失業手当が支給されていて、終息後、職場復帰できるとのことですから、収入は家計データに記されている額が継続するとします。また、為替換算も便宜上、いただいたデータどおり1米ドル=108円としました。
毎月の貯蓄(家計黒字)が15万~20万円ですので、間を取って月17万5000円が貯蓄に回るとします。年間で210万円。63~65歳まで働き、その後、リタイアを希望されている。63歳まで働くならあと19年間。その間に3990万円貯蓄が上積みされますので、その時点で手元にある資金は約6300万円。これがティーポッドさんの老後資金です。
米国の公的年金の支給開始年齢は、ティーポットさんの年齢であれば67歳ですので、それまでの4年間は全額貯蓄で生活費をまかないます。毎月の生活費が今と変わらないとすれば、4年間で約1300万円。先の貯蓄から差し引くと、67歳の時点で手元に残る資金は5000万円。
公的年金の支給額は63歳で退職、リタイアなら日本円で約18万3000円とのこと。したがって、生活費の不足額は毎月8万2000円。ただし、米国も日本同様、公的年金に対して一部所得税が課税されます。その額は不明ですが、それも考慮して月9万円不足なら、年間108万円。100歳までの33年間で3564万円。それでもまだ手元に1400万円超が残ることになるわけです。
結果、老後資金が大きく困ることはないと考えていいでしょう。さらに言えば、もし65歳まで働けば、当然、貯蓄も公的年金も増えます。計算上、100歳の時点で残高はおよそ3700万円。安心の度合いはさらに高まります。
アドバイス2 医療費は貯蓄でカバーするという発想
ある程度の変動があったとしても、概ねこのまま貯蓄ペースを維持できれば、63歳でフルリタイアしても資金的には問題ありません。それを踏まえていくつかアドバイスをするなら、まず保険については、死亡保障は独身である以上、不要です。医療保障については、勤務している間は医療保険に加入できるとのこと。問題は退職後ですが、すでにまとまった資金を用意できるのですから、無理に保険料の高額な民間の医療保険に加入せず、かかった治療費は貯蓄でカバーするという発想でもいいと思います。そもそも、保険に頼るより、日頃から健康維持に気を配る。定期検診を受け、ストレスをためず、豊かな気持ちで日々を送る。そのために必要なコストは惜しまない。その方が合理的と言えます。
またリタイア後に帰国し、日本に移り住むとすれば、住民票も移しますから、原則、国民健康保険と介護保険に加入することになります。その場合、高額療養費制度などが利用でき、かつ手元にまとまった資金もありますから、やはりあえて民間の医療保険に加入する必要はないと考えます。ただし、国民健康保険料と介護保険料が発生します。所得税、住民税とともに、それらコストは米国の公的年金の受給額の10~15%程度が目安です。
アドバイス3 あえて投資コストを取る必要はない
もうひとつ、投資について。投資をする資金的余裕はあります。ただし、ティーポッドさんが「自分には貯蓄が向いている」と思うなら、無理にする必要はありません。ご相談文にある、米国の定期預金の金利が今後続くかどうかは不明ですが、仮に毎月17万5000円を金利1.5%の積立預金で19年間(63歳まで)積み立てたとすると、利息だけで600万円を超えます(1年複利、税引き前)。つまり、先の試算は正確には、こういった利息分を加算すべきであり、さらに余裕があるということ。10年定期でも金利0.002%(メガバンク)の日本から見れば、はるかに高金利です。もちろん投資をすればもっと増えるかもしれません。しかし、老後資金は足りるのですから、あえて投資コストを取る必要はないと考えます。
相談者「ティーポッド」さんより寄せられた感想
深野先生からの詳細なアドバイス大変参考になりました。専門家の方から、今までどおりのマネープランで問題ないこと、保険や投資も特にする必要がないと聞いて安心しました。不安定な世の中ですが、なんとか現在の収入をこの先も維持できるよう努めたいです。●マネープランクリニックのラジオ番組を始めました!
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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など
取材・文/清水京武
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