運動神経は遺伝で決まる? 生まれつきのものと諦める前に……

運動が苦手な女性

「親も運動音痴だったから、私もどうせ運動神経が悪い」……運動能力は遺伝で決まるのでしょうか?

五輪で活躍するような有名選手の親もまたトップアスリートだった、というケースをみると、「運動神経は遺伝だ」と考えてしまいますよね。両親ともにアスリートとして活躍した子どもは、血統になぞらえて「サラブレッド」と呼ばれることもあります。では実際に、いわゆる「運動神経のよさ」を指す運動能力の高さは、遺伝だけで決まるものなのでしょうか?
 

そもそも「運動神経」とは? 脳から末端に指令を伝達する神経回路

私たちの体は、脳からの指令が末端の筋肉にまで届くことで動くことができます。この指令の通り道となっているのが運動神経です。人間の神経系は脳と脊髄からなる「中枢神経系」と、そこから出る刺激を末端にまで届ける「末梢神経系」がありますが、運動神経は脳から末端に向かって指令を伝達する神経回路です。一般的に「運動神経がよい/悪い」という文脈で使われるときの「運動神経」とは、この神経が引き出す運動能力のことを指しているのではないかと思います。
 

運動神経は双子でも異なる? 遺伝だけでは相関しない項目も

運動能力のことを指す運動神経の遺伝性については、比較対象となりやすい双子と運動に関する研究が昔から行われています。しかし遺伝によって影響を受ける可能性があるのは筋線維のタイプなどに関する項目が多く、運動神経との関連は環境要因を無視することはできないという先行研究が見られます。

一卵性双生児90組、二卵性双生児68組を対象にした研究では、握力、立ち幅跳び、長座体前屈では遺伝的な影響が示唆される一方で、腹筋、サイドステップ、50m走については相関関係を認められませんでした。普段から運動をしていたかどうかといった運動頻度、食生活などによっても発育・発達に影響があるのではないかと指摘されています。(参考論文:Okuda Enji et al.(2005) Genetic and Environmental Effects on Physical Fitness and Motor Performance. Int. J. Sport and Health Science (3), 1-9)
 

運動神経は先天的な才能ではない! 運動量で脳の神経回路を刺激

運動神経そのものは誰にでもあるものであり、脳からの指令を伝達するスピードにも個人差は見られないといわれています。「運動がうまい」と評価されるのは、あるプレーを思いどおりにできる一連の動作のことであり、頭ではわかっていてもそれを動作に落とし込めないときに、運動が下手と評されることが多いようです。

ただそれは生まれ持った才能ではなく、スポーツを習得する上で必要な動作を繰り返し練習し、脳の神経回路を刺激してきたかによって変わってくるといわれています。一般的な「運動神経のよさ」は後天的にも鍛えられることができると考えるべきでしょう。
 

運動神経の伸ばし方・鍛え方・"運動音痴"の克服法

「運動神経は悪いのは遺伝」「どうせ運動音痴だから」と思い込んでしまっている人も、運動神経を伸ばすことはできます。運動がうまくなるために、まずはさまざまな運動に触れることや運動する機会を増やしていきましょう。

日常生活の中では屋外で体を動かす機会も少ないと思いますので、まずはできることからで構いません。運動しなくてはと構えすぎず、日常的に体を動かすようにしましょう。「自分は運動が苦手だったけど、子どもには運動が得意になってほしい」と思っている親御さんは、小さい頃からスポーツに触れさせることも大切ですが、一つの種目にとらわれすぎず、色々なスポーツを楽しみながらさせてみることも大切だと思います。
 

遺伝よりも環境! 運動神経を鍛えたい人は積極的に運動を

運動に関与する体力的な要因は、遺伝が関連してくるものよりも、環境によって左右されるものが大きいと考えられています。「生まれつきだから」「親も運動は苦手だったから」という思い込みで諦めるのではなく、運動神経の神経回路を刺激するような動作を繰り返したり、新しい動きを習得できるように新しいスポーツに挑戦したりと、積極的に体を動かすようにしていきましょう。

■参考書籍
深代千之著「子どもの学力と運「脳」神経を伸ばす魔法のドリル」カンゼン



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