お金の悩みを解決!マネープランクリニック/教育費が準備できるか不安な子育て世代

30歳貯金470万円。第2子も生まれます。自営業になった妻にはいくら稼いでもらえばいい?(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、妻が退職し、個人事業を始めるという30歳の会社員男性の方。来年には第2子も生まれる予定で、妻の収入はどのくらいを目安にすべきか悩んでいるとのこと。ファイナンシャル・プランナーの平野泰嗣さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 準備すべき教育資金は多めに見積もっておきたい

ご相談として「子ども2人を国立大学に行かせるために、妻の収入はどのくらい必要か?」ということですが、まずは教育資金について考えます。
 
文部科学省の「学習費調査(平成28年度)」によれば、公立の場合、1年間にかかる教育費(学校外活動費も含む)は小学校が32万円、中学校が48万円、高校が45万円となっています。また、国立大学にかかる学費は現在、入学金が28万2000円、学費が年間53万5800円。これらを参考に小学校~大学までの費用を算出すると、およそ720万円。また、幼稚園は無償化となりましたが、習い事などの費用は別途発生します。
 
また、これはあくまで統計であって、当然、かかる費用は個々に違ってきます。また、想定どおりに進学するとも限りません。ある程度、多めに見積もっていくおく必要があると考えます。
 
さらに言えば、お子さんには教育費以外にも子育て費用が発生します。データは古いですが、内閣府の「国民生活白書(平成17年版)」によると、教育費以外にかかる基本的経費(住宅関係費を除く養育費)として、お子さん1人目は22年間で722万円、2人目は578万円かかるという結果が出ています。
 
したがって、お子さんをどう育てるか、お子さんとどう過ごしたいかという点も、ポイントになります。これまでご夫婦ともバイクレースやキャンプが好きで、年間100万円近いレジャー費を計上していました。現在、貯蓄を意識されて、そういった支出はセーブされていますが、お子さんの成長とともにまた始めるかもしれません。当然、さらに支出は増えることになります。
 

アドバイス2 ライフプランは確実な収入をベースに

では、それを踏まえて、奥様がどのくらいの収入があればいいのか、ということですが、現時点でそれを割り出すことはあまり意味がありません。
 
仮にお子さん2人でトータル3000万円必要として、22年間で用意するとすれば、単純にそれを月割りすると、ざっと毎月11万4000円となります。新たにこれだけ生活コストが発生するわけですが、そのことと奥様が継続的にそれだけの収入を得ることは、別の問題だからです。
 
個人事業は目標売り上げを決めても、なかなかその通りにはなりません。しかも、まだ、スタートしたばかりです。今後、売り上げの確保、費用負担など、不確定な部分も多くあります。目標収益を設定すること自体、悪いことではありませんが、それを達成することを前提にマネープランを立てることには大きなリスクがあると考えるべきです。
 
家計的には、まずミライさんの収入と奥様の個人事業から確実に見込める収入(売り上げから諸経費を除き、家計に入れられる金額)を設定して、そこからライフプランを作った方が安心でしょう。
 
加えて、奥様がどういう気持ちで個人事業を行うのか。会社員をしながら2人のお子さんを育てることはもちろん大変です。対して、自宅で働けるなら通勤がなく、働く時間を自由に決められるというメリットもあるでしょう。しかし、一定の収入を10年、20年と得ていくことは、会社員以上に大変というケースが多いのも事実。その意味で、奥様の思いを家族全員で共有し、そのビジネスを支えていく姿勢が大切だと思います。
 

アドバイス3 妻の個人事業への思いを共有し、協力していく

ミライさんの世帯がすべきは、もうすぐ第2子も生まれるわけですから、まずは再度家計を見直すことです。
 
年金積立や社内預金、持株会、確定拠出年金など、活用できる制度をしっかり活用している点はいいと思います。貯蓄と投資のバランスもいいでしょう。
 
反面、支出管理の面で、見直しの余地があります。家計収支では月3万7000円の行方が不明です。年間で44万円にもなる金額です。もし支出しているなら、その内容は把握しておくべき。個別の支出費目についても、例えば雑費は本当に5000円で済んでいるのかどうか。また、お小遣いは「0円」として、必要なときにその都度というのであれば、そこも実際にかかる金額は明確にしておきたい。教育資金など、必要な資金を用意するためにもっと貯蓄ペースが上げなくてはならないなら、生活費を下げる必要も出てきます。その場合、どこをどう削減するのか。それを考える上で、家計収支はきっちりと把握することが重要です。
 
長期的には、定年後の働き方もポイントです。ミライさんは60歳からセミリタイアを希望されていますが、そうなれば生涯賃金も退職金も、公的年金の受給額も変わります。資金的に余裕があれば別ですが、そうでなければ、その分、奥様の収入に依存することになります。そこは慎重に検討すべきです。
 
最後に、奥様が国民年金に加入した方がいいかというご質問ですが、奥様が収入(売り上げ)ベースで130万円以上であれば、加入の義務が発生します。そうなれば国民健康保険への切り替えも必要です。130万円未満であれば、夫の扶養となりますが、パート勤務と違い、自営でそれを調整するのは難しい。むしろ、扶養の範囲を超えても、きちんとビジネスとして捉え、将来的な展望や販路を積極的に考える方が、家計としてもプラスになるはずです。
 

相談者「ミライ」さんから寄せられた感想

妻の収入を前提にしたライフプランはリスクがあるとのご指摘にすごく納得しました。考え方を改めて、私の収入をベースに支出を再度見直し教育資金等の積立を行い、妻のタイミングをみて、本格的なビジネスへと移行しようと思います。平野先生、本当にありがとうございました。


★「お金の悩みを解決!!マネープランクリニック」の過去記事はコチラへ
★「お金のことで悩む人に、貯金のコツを伝授!貯蓄達人の貯めワザ」コチラ

教えてくれたのは……
平野 泰嗣(ひらの やすし)さん
 
 

 


ファイナンシャル・プランナー、キャリアコンサルタントとして活躍。FPの妻と2人でFPオフィス Life & Financial Clinicを創立し、「自分らしく生きること」をモットーにライフ・ファイナンス・キャリアの3つの視点でのアドバイスをする。中小企業診断士として経営者・従業員のライフプラン支援も行っている。著書に『30代夫婦が働きながら4000万円の資産をつくる 考え方・投資の仕方』(明日香出版社)。All Aboutマネーの連載『ふたりで学ぶマネー術』も人気

取材・文/清水京武

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