アドバイス1 ライフイベント実現のために貯蓄意識をより高める
ともりさんが希望されている大きなライフイベント、第2子と住宅購入、ともに実現することはマネープランとして可能かどうか。その試算の前に、少し家計を見直して、目標とする貯蓄ペースを考えてみましょう。現在、毎月の家計からの貯蓄は毎月10万円。それを差し引いても家計収支ではまだ2万円の黒字です。それも自然に貯まっているのであれば、問題はありません。ただ、貯蓄はやはり毎月10万円であれば、2万円は何かに支出されていることになります。
支出先は「外食」が考えられるとのことですが、それを削って貯蓄に回すことが可能かどうか。また、例えば通信費、趣味娯楽費、雑費あたりから5000円でも節約できるかどうか。ともに可能なら、毎月の貯蓄額は12万5000円。年間150万円ですから、それだけで30万円アップします。さらに、ともりさんのボーナスも貯蓄に回るということなので、年間190万円の貯蓄ペースになるということです。
家計自体、今でもよく管理されていると思います。さらなる節約、家計の見直しはハードルが高いかもしれませんが、大きなライフイベント実現のために、無理のない範囲でより貯蓄意識は高めていきたいところです。
アドバイス2 キャッシングの返済は一括も可能、iDeCoはまだ先の話
一つ目のご希望、マンション購入ですが、住宅資金を貯める時間が必要なので、その時期を5年後とします。新たに貯めることができるのは、年間190万円×5年=950万円。今ある貯蓄と合わせて1050万円。ここから諸経費150万円、頭金500万円を捻出します。物件価格を想定されている2500万円とすると、借入金は2000万円。20年返済、金利は全期間固定の1.5%とします。返済額は毎月9万6500円(ボーナス払いなし)。マンションであれば管理費、修繕積立金等が発生します。これに固定資産税も加えると毎月の住宅コストは12万5000~13万円といったところ。
では、毎月これだけのコストを負担できるでしょうか。
単純計算で、現在の家計に対して、住宅コストが5万5000円程度上がることになります。年間で66万円ですから、貯蓄ペースが190万円から124万円に。それでも定年までの14年間で、新たに1736万円貯まることになります。
また、途中でご主人のキャッシング返済、ともりさんの奨学金返済が完済となりますし、学資保険の支払いも13年後にはなくなります。一方で、児童手当の支給は15歳まで。それらを相殺していくと、住宅以外の生活コストが変わらなければ、定年までにさらに650万円ほど貯蓄できますので、ざっと2400万円は貯まることになるわけです。これに、住宅購入時に残った手持資金300万円を加算すると、2700万円となります。
ただし、ここから教育費を差し引かなくてはなりません。大学を私立文系として400万円、高校はできれば公立希望とのことですが、そこはまだ不透明。とりあえず私立進学にも備えて高校費用に300万円。現在計上している、教育費1万5000円は中学までの家計から捻出する学費と、成長に合わせて増える生活費としてこのまま大学卒業まで加算していきます。
したがって、700万円を貯蓄から捻出しなくてはなりません。学資保険の満期金が100万円ありますので、実際は600万円を差し引き、定年時に残る資金は2100万円。これにご夫婦の退職金を加算した額が、準備できる老後資金の目安となります。
あと、話が前後しますが、ご主人のキャッシングについて。一括返済すべきかどうか悩まれていましたが、190万円かそれに近い貯蓄ペースが保たれるなら、残高は不明ですが、一括返済してもその後のマネープランにおいて問題はないと考えます。それと、老後のためにiDeCoへの加入を検討中とのことですが、資金づくりの優先順位は教育資金、住宅資金が明らかに先。今は少なくとも加入は考えてなくていいでしょう。
次に、第2子ができた場合です。前提として、育児休暇が終われば、当初時短勤務もあるでしょうが、職場復帰して同様の収入を得ることができるとします。
お子さんがもう1人増えることによるコストですが、進路等で一概には言えませんが、収入としては確実に児童手当を200万円受け取ります。それを差し引いて、概算ですが、子育て費用としてかかる費用は1000万円ほどとしましょう。また、育休と時短勤務で、その間、フルタイムよりも300万円程度減収になると考えると、実質1300万円、先の老後資金から差し引くことになりますから、800万円+退職金が老後資金となります。
大事な点は、その額の老後資金で足りるかどうかということ。ただし、それについて不確定要素が多く、判断はできません。ただし、老後の働き方次第では、資金的に大きく困ることはないでしょう。つまりは結論として、マンションを購入して、第2子ができても、資金的には大丈夫ということです。
定年以降で大きく家計負担となるのは、住宅ローンの支払い。完済がご主人66歳のとき。定年後も毎月13万円近い住宅コストが発生します。ただし、ご主人が定年を迎えたとき、ともりさんはまだ50歳。ご主人にアルバイト程度の収入があれば、老後資金を取り崩すことなく、ともりさんの収入で支払っていけるのでは。しかも、夫婦とも厚生年金加入であることは、老後において大きな強みでもあります。
そう考えると、希望されるライフプラン実現のポイントは見えてきます。まず、ともりさんは正社員を定年まで継続する。そして、ご主人も定年後、収入は高くなくていいので、できるだけ長く働く。逆に言えば、これがきびしくなると、老後そのもののリスクが高まってしまいます。
アドバイス3 物件価格は2500万円が上限
もうひとつ気をつけたいのが、購入されるマンションの価格。通勤の便を考えると、2500万円の物件は価格的に無理かもしれないとのこと。ただし、例えば3000万円の物件なら老後資金が単純に500万円減るわけです。その分、老後リスクが高まります。やはり2500万円程度に抑えておきたいところです。そうなると、多少通勤を犠牲にしても、違う地域で探すといったことも選択肢に入ってくるはず。まだ時間はあります。じっくり検討してみてください。
ところが、世帯収入から判断して、販売業者は3500万円程度の物件を勧めてくることが考えられます。すると借入金は3000万円。それでも30年返済、ボーナス併用ならば、毎月7万円の支払いとボーナス月20万円の加算でローンが組めます(金利は先の試算と同じ固定1.5%)。「毎月の支払いは家賃並みです」と言われると、そう負担に感じないかもしれません。しかし、完済は76歳のとき。しかも、定年以降、ボーナスがないのにボーナス月の支払いが16年も続きます。決して目先の数字にとらわれず、ローンは慎重に組んでください。
最後に保険について。割安な保険商品に加入されているのはとてもいいのですが、現状、持ち家ではなく、4歳のお子さんのいる世帯としては、夫婦とも死亡保障が足りません。まず、ご主人は共済を解約して、ともりさん同様の医療共済か、単体の医療保険に加入します。そして、夫婦とも新たに定期保険で死亡保障1500万円ずつ確保します。とりあえず10年定期でいいでしょう。保険料は合わせて4000円台半ばといったところです。
相談者「ともり」さんから寄せられた感想
この度は丁寧にご教示いただきありがとうございます! とても勉強になりました。先生からのお話を元に家計の長期計画を立ててみようと思います。お金に対する不安からあれもこれも始めようとしていましたが、まずはしっかり貯蓄に励みます! 本当にありがとうございました。教えてくれたのは……
深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など
●マネープランクリニック・深野先生のラジオ番組を始めました!第一話配信中
取材・文/清水京武
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