お金の悩みを解決!マネープランクリニック/60代以上の人のお金の悩み

66歳、貯金2780万円。病気で余命が長くありません。私が死亡後の妻の生活が不安です(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回は、病気のため余命が長くない可能性があり、奥様の生活を心配する66歳の男性からいただいたご相談です。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 今、仕事を辞めるなら急速に生活費を半分にする必要がある

思いもよらない病気になってしまったにもかかわらず、ご自分より奥さまのことを心配されていることが、よくわかりました。1208さんがお考えになっている2通りのパターンで今後の貯蓄と家計を試算いたしました。
 
まず、1208さんが年内で仕事を辞め、3年後からの奥さまの生活についてです。
 
想定外のことで、病気にさえならなければ、このままの生活ができたかもしれません。でも、来年から収入がなくなるとすると、急速に生活をコンパクトにし、現在かかっている生活費の半分、できれば6~7割の削減が必要になってきます。収入が年金のみで毎月約24万円。一方、毎月の支出が約70万円ですから、年間の赤字は約550万円、3年で約1650万円。現在の資産は3年後には1000万円程度まで減ってしまいます。
 
その後、奥さまは、遺族年金(おそらく10万円程度)と本人の国民年金5万円の15万円で生活していくことになります。現在の生活水準から考えると、月15万円での生活は難しいかもしれませんね。
 
次に、1208さんが70歳まで仕事を続けられ、その3年後からの奥さまの生活についてです。
 
現在、毎月の貯蓄は、定額ではないにしろ、22万5000円、年間で270万円。3年で810万円貯まりますので、現在の資産と合計して3590万円を残すことができます。その後の奥さまは、収入は前述のとおり、毎月15万円。支出に関しては、現在、奥さまにお渡ししている生活費33万円を25万円程度に抑えられるとしたら、毎月の赤字は約10万円、年間120万円を資産から取り崩していくことになります。3590万円をそのまま残すことができれば、約30年、奥さまが98歳、99歳まで安心して暮らすことができるでしょう。
 

アドバイス2 奥さまが、今後どのような生活を望むのかで、必要なお金は違う

1208さんの体調次第ですが、できれば働けるだけ働き、その間に生活を徐々にコンパクトにしていくこと、貯蓄額を増やしていくことが、結果的には奥さまの老後の安心につながるでしょう。つまり、この後3年を、ご夫婦でどのように生活していくのか、一緒に考えることが大事なのではないでしょうか。
 
車の購入費用の600万円も、現状では厳しいといわざるを得ませんが、奥さまとお話しすることで、人生最後の夢を叶えることができるかもしれません。1208さんは、奥さまが貯められている貯蓄やお金の使い方は詮索しない、ということですが、奥さま自身の老後にかかわることでもあります。ご夫婦で資産の棚卸しをし、今後の生活のシミュレーションをしてみてはいかがでしょうか。それによって、ここで試算した結果以上に、奥さまにお金が残せるかもしれませんし、お一人の生活なら、それほどお金がかからない、とおっしゃるかもしれません。車の購入は、それ次第ではないでしょうか。
 
1208さんのご相談内容からは、奥さまが今後、どのような生活をしたいのか、お一人になったときに、どうされたいのかがわかりません。1208さんのご心配はわかります。それだけに、奥さまとお話しをじっくりされ、これからのご夫婦での生活を楽しんでいただきたいと思います。
 

アドバイス3 奥さまと一緒に、エンディングノートなどを使って、気持ちと資産の整理を

ご自身の体調も含めて、心配ばかりが募る日々かもしれません。でも、しばらくは働くことを考えれば、収入面は安定しているわけですから、ご夫婦の趣味や楽しみに、いくら費やすことができるのか、貯蓄はどれだけあれば、安心できるのかを考え、逆算して、毎月の支出をできるだけ抑えていくことが大切です。
 
そのためには、こちらにご相談されたような内容も含めて、エンディングノートのようなものを作られたらいかがでしょうか。その際、1208さんだけではなく、奥さまも一緒になって資産の整理をすることです。経済的なことだけではなく、気持ちも書き出しておくといいのではないでしょうか。1208さんの奥さまを思う気持ちも残しておきましょう。奥さまも、お一人になったときの生活のイメージを作られておくといいですね。
 
また、奥さまのお母さまとの同居や、奥さまご自身の介護施設入居の有無も、希望を確認されてもいいでしょう。自宅の売却などによって、介護施設の入居資金に充てることを視野に入れておいてもいいかもしれません。
 
いずれにしても、1208さんがお一人で抱え込む問題ではありません。どうか、ご家族で一緒に考えてみてください。そして、できるだけストレスのかからない生活を過ごせることを願っています。
 

相談者「1208」さんから寄せられた感想

私のリタイア・死亡後の我が家の家計を大幅に見直さなければならないことは病気の発覚時に覚悟いたしました。これまで家族の生活を見てくれてきた家内にはこれからは自分自身の生活を楽しんでもらいたいという想いから私一人で老後資金計画を考えてきましたが、先生のアドバイスをいただき心機一転の覚悟で家内を交えて二人で見直しをしようと思います。ありがとうございました。


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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/伊藤加奈子

 
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