アドバイス1 当座の生活費を残すために、住宅ローンの一括返済は来年末に
ご自分でしっかりと計算されていて、素晴らしいです。住宅ローンも低金利の住宅ローンに借り換えを済まされていて、しっかりなさっています。ただ、住宅ローンの一括返済については、7カ月後の2020年5月ではなく、来年末まで待ってください。仮に来年5月に一括返済するとして、それまでに貯められるお金は96万円(毎月8万円×7カ月+ボーナス1回分40万円)です。今ある貯蓄1270万円と合わせると1366万円になります。現在のローン残高1380万円から7カ月後はもう少し減っているとは思いますが、一括返済してしまうと、貯蓄の残りはゼロになってしまいます。
その後も順調に貯蓄していけば、問題ないように思えますが、やはり、当座の資金として100万円程度は残しておいた方が無難です。何かあれば、失業保険や傷病手当金といった制度もありますが、現金が必要になる出来事があった場合に対応できません。生活費の7~8カ月分ぐらいは確保しておくと安心です。
そのためには、来年5月ではなく、少なくとも来年末まで遅らせるべきでしょう。来年末には、187万円(毎月8万円×13カ月+ボーナス83万円)貯められますので、住宅ローンを一括返済しても100万円程度は残せる計算になります。ローンの残高を確認して、100万円残せる時期に一括返済するようにしてください。
また、住宅ローン完済後の医療保障は、共済への加入で大丈夫でしょう。1年更新ですから、貯蓄が十分になったら、更新せず医療費は貯蓄でまかなうようにしてもいいと思います。
アドバイス2 年金は3年の繰り下げでOK。貯蓄の取り崩しをしなくてすむ
その後は、Mさんの計算どおり、年間239万円貯蓄ができ、10年で2390万円の金融資産を作ることができますね。60歳時点でこれだけの金融資産があれば、Mさんの生活スタイル、支出の状況から考えれば、何も問題ないと思われます。ただ、年金額に不安があるということですので、繰り下げて年金受給額を増やすというのは、よい選択だと思います。ただ、70歳まで繰り下げる必要はなく、68歳で十分です。月額12万3300円になりますので、これなら収支上、赤字になることはないでしょう。年金で生活費をまかなうことができれば、貯蓄は別の目的のために使うことができます。
68歳までの間、年間100万円程度の収入が得られれば、旅行などに30万~40万円使っても、68歳時点で2200万円ぐらいは残っているはずです。基本的に経済的に困ることはありませんから、もっと楽しみのために使ってもいいのではないでしょうか?
また、確定拠出年金がそのままになっているのが、気になるようでしたら、個人型確定拠出年金に移行し、毎月の貯蓄から少しだけ掛金を積み立ててもいいかもしれません。今までどおり、預貯金だけでもOKなので、個人型確定拠出年金については、やってみようと思えなければ、そのままでも大丈夫です。
アドバイス3 雇用延長で仕事のモチベーションが保てるか?60歳以降はバイトでもOK
60歳までに、老後資金として十分な資金を準備することができますから、60歳以降の働き方としては柔軟に考えてもいいと思います。それまでの働き方と同じなのに、収入が減ってしまうことでモチベーションが維持できないようでしたら、雇用延長ではなく、別のパート、アルバイトでもいいと思います。ただ、Mさんは看護職ですから、今後10年で職場環境の変化があるかもしれません。そのときに、どうするか選択して大丈夫です。最後に、弟さんとの同居ですが、今は、お互い健康で暮らしているのであれば、結論を急ぐこともないでしょう。それぞれがマンションを資産として所有できているわけですから、高齢になったときに、その資産をどう活用するかだけ、弟さんと話し合われておくといいかもしれません。
とりあえず、住宅ローン完済の時期だけ間違わなければ、定年退職後の生活は安心ですので、このままの貯蓄ペースを維持していってください。
相談者「M」さんかに寄せられた感想
アドバイス1について住宅ローンの一括返済は、生活費の7~8カ月分を確保100万円程残したほうがいいとのこと。私も完済したいと焦りタイトな計画を立てていました。ご指導通りに来年末にして余裕を持って完済したいと思います。医療保険も共済への加入で貯蓄十分になったらそれでまかなうようにします。アドバイス2について年金受給時期は3年繰り下げで貯蓄の取り崩しをしなくてすむとアドバイスをいただき、少し気持ちが軽くなりました。アドバイス3と重なりますが60歳以降は柔軟な考え方でバイトでもOKということなので、心に余裕ができました。年間100万円の収入の看護師のバイトであれば、年齢的にも精神的体力的にも負荷のかからないところを探すこともできそうです。弟の同居の件も結論を急がず、高齢になった先の話し合いをしていきたいと思います。この度、老後2000万円問題もあり、私は転職を繰り返しており心配になり相談させていただきました。今の生活水準をキープして、備えていきたいと思います。先生のアドバイスは大変参考になりそして安心することができました。本当にありがとうございました。マネープランクリニックのネットラジオ番組『2020年の家計防衛』を始めました!
ぜひご視聴ください!
教えてくれたのは……
深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など
取材・文/伊藤加奈子
【関連記事をチェック】
47歳貯金2000万円。1年前にがんが見つかりました、仕事は60歳で引退したいと思います
40代独身で頑張ってきた唯一の夢、4000万円の1LDKマンション購入を実現したい!
45歳会社員、貯金はゼロ。買い物依存で、カードの借入が50万円ほどあります
48歳一人暮らし、貯金260万円。働くことにいいイメージが持てず、貯蓄が増えない
46歳貯金150万円。ようやく貯蓄できますが、セカンドライフが心配