アドバイス1 自分のことを最優先でいい。ご両親の貯蓄を使い切っていい
ご相談内容を拝見し、胸が締め付けられる思いです。ここまで、おひとりで、よくやってこられたと思います。お母さまとの同居をやめ、賃貸マンションに転居されたのは、正解です。これ以上、介護疲れさんが頑張らなくていいです。ご自身の健康を第一に考えてください。現在、お父さまの有料老人ホーム入居費用以外の負担をされているとのことですが、介護疲れさんの資産から取り崩すのは、もう少し後でもいいでしょう。ご両親の貯金は合わせて、800万円あります。まず、ここから、ご両親の介護費用、生活費を出すようにしてください。
今も年金の不足分をお父さまの貯金から切り崩しているということで、800万円がいつまで持つのかを明確にはいえませんが、ご両親の貯金がなくなった段階で、介護疲れさんが負担することにすれば、少なくとも、現状の赤字はなくなり、精神的にもラクになるのではありませんか? お母さまの通帳を確認できないようですが、お母さまの貯金が底をついたら、お父さまの貯金を使うようにすればいいのです。ご両親の貯金は、ご両親が使いきればいいのです。
また、あえて申し上げれば、お父さまがお亡くなりになったあと、遺族厚生年金がお母さまに支払われることになります。お父さまの年金が厚生年金であればですが、それなりの遺族年金額になると思われます。これについては、年金事務所で確認してみてください。介護疲れさんが、すべてを背負う必要はありません。
今は、できるだけ長く働き、ご自身の資産の取り崩しを少しでも遅らせることです。
アドバイス2 非正規雇用、パートでも年100万円あれば、大丈夫
介護疲れさんの雇用契約自体も不安定で、ご心労があることでしょう。仮に、来年以降、契約更新がなくても、年100万円をパートやバイトで確保するようにしてください。年100万円であれば、それほどハードルは高くないでしょう。現在の支出から、お父さまの費用負担をなしにすると、毎月の支出は10万円。年間で120万円です。年100万円の収入があれば、年間で20万円の赤字。これは資産から取り崩すことになりますが、来年から60歳までの5年間で100万円です。現在の資産は1900万円ですから、60歳時点で1800万円残ることになります。
60歳から個人年金の2万5000円が入りますが、65歳の公的年金の受給までどうするかです。働くペースを落として、年50万円でもいいので、収入を得ることで、資産の目減りを少なくすることができます。現時点では、そこまで考えられないかもしれませんが、それほど老後を悲観する必要はありませんよ。
アドバイス3 実家の活用も検討を。住むだけがベストな選択ではない
将来的に、ご実家を相続することになるとのこと。そうなれば、現在かかっている住居費が浮きますので、生活はだいぶラクになるでしょう。ただ、ご実家の固定資産税もやや高く、リフォーム代も400万円を想定しているとなると、別の選択もあるのではないでしょうか。リフォーム代の400万円は、今の家賃で考えると7年強で元が取れる計算です。加えて固定資産税の支払いもとなると、果たして実家に住み続けるのがベストなのか、ということです。相続後に、売却することも視野に入れていいでしょうし、今は難しいようですが、万が一、お母さまが今後、老人ホームなどに入居するようなことがあれば、ご実家を売却し、その資金に充てることもできるでしょう。ご実家に思い出や思い入れがあるかもしれませんが、どうか、ご実家に縛られず、ご自身の老後がゆとりあるものにしていただきたいと思います。
最後に、地域の社会福祉協議会やケアマネージャーさんと連携が取れているのは、素晴らしいです。一人で問題を抱え込まずに、地域の支援を活用してください。特にケアマネージャーさんとは、ご両親の状況の変化などの情報を共有するようにしてください。頑張らなくていいので、ゆっくり時間をかけて事態が好転することを、心から応援しています。
相談者「介護疲れ」さんから寄せられた感想
早速先生のお返事をいただき、ありがたく拝見しました。今迄不安に感じていた所も、具体的に道筋を立てていただき、少し前向きに過ごせそうです。また改めて残り少ない両親の日々に穏やかに接することができるようになりそうです。ありがとうございました。★「お金の悩みを解決!!マネープランクリニック」の過去記事はコチラへ
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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など
取材・文/伊藤加奈子
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