お金の悩みを解決!マネープランクリニック/貯蓄ができない、赤字家計に悩むファミリー世帯

37歳主婦、自宅は雨漏り、貯蓄はほぼなし。3人の教育費も足りません(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、以前はまったく家計管理をせず、結果的に貯蓄がまったくできないままにここまで来てしまったという37歳の主婦の方。やっと家計管理ができ始めたが、老朽化する住宅、3人分の教育費と問題は山積み。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 3年間で100万円貯まる貯蓄ペースを目指す

家計管理の必要性を感じ、2年前から家計簿をつけ始め、何とか貯蓄できる家計にされたとのこと。そのことはとても大きな前進ですし、家計が苦しいとどうしてもローンやキャッシングを利用しがちですが、現時点で借り入れが一切ありません。これも立派。頑張ってよくやられていると思います。
 
とは言え、まだ貯蓄ができるまでには至っていません。多少貯まっても、不定期支出等で引き出してしまったとしたら、年間で見ればまだ収支はトントン、家計は黒字にはなっていないということになります。

ともあれ、雨漏りさんの世帯にとっての最優先事項は、手持ち資金を増やすこと。したがって、想定される不定期支出等も予算として組み込んで、その上で、現在の月2万円貯蓄が継続してできること。それが重要です。そしてボーナスからはできれば半分は貯蓄に回したい。それで年間37万円。3年間で100万円を超えるペースとなります。これを最初の目標としてください。投資も考えているとのことですが、今は現金だけにしましょう。現状では、投資を含めどんなリスクも取れません。
 

アドバイス2 返済型奨学金の利用も選択肢に入るが、あくまで慎重に

併せて同時に取り組むべきは、教育資金の確保です。ただし、時間的余裕はありません。しかもお子さんは3人ですから、進学等の資金準備は結果として綱渡り的になります。
 
最初に第1子の方の高校進学があります。高校は前提として公立とします。それでも3年間でかかる教育費は100万~150万円。高校入学までの約3年で、先の貯蓄ペースが維持できていれば、手持資金は100万円。これで進学費用は準備できます。さらに卒業までの3年間でまた100万円貯まりますので、50万円は手元に残る計算になります。同時に、第1子の方の学資保険の満期金100万円(祝い金も加算した額)が出ますので、合わせて150万円。その翌年には第2子の方の高校進学となりますので、それを進学費用にあてます。そういったやりくりで、第3子の方の高校進学費用もカバーできます。
 
ただし、大学もしくは専門学校に進学となると、雨漏りさんも言われているとおり、この貯蓄ペースでは資金準備は不可能といわざるを得ません。

3人のお子さんの高校費用を合わせて450万円とします。学資保険3本の満期金の合計が340万円ですから、不足分の110万円は貯蓄から捻出することになります。その貯蓄ですが、第3子の方が高校卒業までの14年間、そのペースを継続したとして518万円。ただし、途中児童手当の支給がなくなり、一方で学資保険の保険料の支払いや、現在計上している教育費も順次なくなります。

ご主人の治療も終わるでしょう。それを踏まえて計算すると、他の生活コストがずっと変わらないなら、実際に貯蓄できるのは、350万~370万円ほど。そこから先の110万円を引けば、残る資金は250万円前後。この間、2台のクルマを買い替えが発生すると、計200万円。手持ち資金は50万円しか残らないことになるからです。
 
では、奨学金利用はどうか。確かに、国の給付型奨学金利用もひとつの方法です。しかし、給付される額はあくまで大学進学等の費用を補助程度で、ほぼ全額を奨学金に頼らざるを得ないケースでは、同時に他の奨学金も利用しなくてはなりません。まずは、大学独自に給付型奨学金を制度として持っている場合がありますので、それを調べておく。

また、自宅通学はきびしいので生活費も必要となります。お子さんのアルバイトも限界がありますので、どこまで奨学金でカバーできるか。そうなると、本来は避けたいですが、従来の返済型奨学金の利用も選択肢に入ってきます。それでも利用は慎重に。借入額は可能な限り低く抑えたいところです。
 

アドバイス3 妻の収入アップが唯一の確実な手段

次に住宅購入ですが、教育資金の準備ですでに「高校まで」となっていますので、現状ではきびしいということになります。現在の住宅コストが月1万円。住宅ローンを組んで、これを下回る支払いは現実的にはあり得ません。例えば、住宅の建設費として想定されている諸費用込み2000万円を、頭金なし、返済期間35年、変動金利0.5%という、もっとも支払いが低い設定で借りたとしても、毎月の支払いは5万2000円。この時点で、家計は即、赤字に陥ります。現在のお住まいの老朽化が激しいとのことですが、必要な補修費用は負担しながら、あとはご主人自らが直して、住み続ける。現状では、これしか選択肢が見当たりません。
 
もちろん、家計の見直しである程度、貯蓄ペースを上げることもできるでしょう。しかし、家計を見る限り、その余裕はあまりありません。それどころか、現時点ですでによく家計をやりくりしていると感じます。そうなると、打開策はひとつ。雨漏りさんの収入アップしかありません。現在の勤務先で、もっと勤務時間を延ばして収入を上げることが可能なのか。あるいは転職して正社員を目指すのか。副業についても触れていますが、確実かつ継続的な収入アップが必要ですから、それに期待することはやや無理があります。

仮に毎月の収入が3万円アップすれば、年間36万円。20年間で720万円。お子さん1人当たり240万円となり、奨学金の借入額を大きく減らすことができます。5万円アップすれば、20年間で1200万円。お子さんの進路によっては、住宅購入はまだ無理としても、現在の住まいの建て替え、リフォーム費用は準備できるかもしれません。

そういっても、収入アップは簡単ではないでしょう。体力的に無理をして、体を壊しても何の意味もありません。それを踏まえて、どこまで収入アップが可能か。そこがポイントになると考えます。
 

相談者「雨漏り」さんから寄せられた感想

深野先生の記事はいつも興味深く拝見しており、今回自分の相談を受けていただけてとても嬉しく思っています。家計管理をし始めて、これまで計画的でなかった支出がコントロールできるようになり、上手くいけば持ち家も……と有頂天になっていたので、今回の現実的な話を聞いて気持ちが引き締まりました。世間一般的な暮らしよりきびしい状況・未来ですが、提案していただいた貯金計画を確実に遂行することや、自分自身の収入アップなど、我が家は我が家なりの最善を尽くそうと思います。この度はお忙しい中、お話を聞いていただきましてありがとうございました。

教えてくれたのは……
深野 康彦さん
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/清水京武



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