お金の悩みを解決!マネープランクリニック/50代以上の家庭のお金悩み相談

55歳貯金4200万円。老後が心配でダブルワークで貯め続けることに疲れました(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、老後のためにダブルワークで懸命に働いてきたという55歳の会社員女性。しかし、最近は貯めることにも疲れてきて、仕事をひとつに絞りたいと考えているとのこと。そのためには、どのくらい資金が必要なのか、ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 3年後でシングルワークでも資金的には問題ない

まずは想定として、下のお子さんが大学卒業となるまでの3年間は現状のまま働き、その後はシングルワークとなって70歳まで働く場合を試算してみましょう。
 
現在の貯蓄ペースは、毎月8万円ほど、年間100万円を設定されているとのことですから、3年間で300万円貯蓄を上積みできます。これで金融資産は4550万円(投資商品は評価額が変わらないとする)。ただし、そこから教育費として用意している400万円を差し引きますので、遊子さん58歳の時点で手持の金融資産は4150万円となります。
 
58歳以降はシングルワークとなり、収入は手取りで10万円。生活費が変わらなければ、毎月9万3000円の赤字です。62歳までの4年間で約450万円になりますが、これを貯蓄から捻出すると、残りは3700万円。

62歳から65歳までの3年間は特別支給の老齢厚生年金が支給されますので、こちらが年間82万円。したがって、この間の赤字は年間30万円。3年間でざっと100万円とすれば、65歳の時点で3600万円が手元に残ります。

65歳からの老齢厚生年金は70歳からの繰下げ受給と決めているとのことですから、この間は年間112万円の赤字、5年間で560万円となります。その他の支出も考慮して、ざっと600万円とすれば、70歳の時点での手持資金は3000万円ということになるわけです。
 
ただ、希望として「元気なうちに、年に数カ月、海外を旅して、好きなアートをゆっくり楽しみたいのです」とあります。58歳からの70歳までの12年間、その予算を仮に年間100万円とします。計1200万円。これを差し引いても70歳の時点でまだ1800万円ほど残ります。「無謀でしょうか」とありますが、決してはそんなことはありません。今までご苦労をされてきたのですから、これからは生活を楽しむ。それだけの資金は一般的に考えてあるといえるでしょう。
 

アドバイス2 施設入居後のランニングコストがポイント

もうひとつの希望として、ケアマンション(所有権の発生しない「住居型有料老人ホーム」)の入居があります。その時期は未定でしょうが、70歳で仕事も辞め、そのまま入居したと仮定します。入居費用は2000~3000万円を想定とのことですから、例えば2500万円とすると、親御さんから相続が予定されている2500万円をそのまま充てることができます。

問題は、施設のランニングコスト。毎月どのくらい発生するのか。理想は、施設で発生するコストも含めて、毎月の生活費が70歳から受給する年金額の範囲内で収まる範囲。受給額が20万円とのことですので、税、社会保険料を差し引いて17万円前後でしょうか。施設探しや入居準備はまだ先でしょうから、資金面ではそこをポイントにするといいでしょう。
 
もし施設入居後、生活費が年金でカバーできれば、70歳で手元に残る資金1800万円がほぼ予備費となるので、例えば月2~3万円、そこから捻出しても20年間で600万円、30年間で900万円ですから、資金的には安心です。
 

アドバイス3 金融資産に対する投資の割合は徐々に減らしていく

また、試算ではシングルワークを3年後としましたが、それを「今年から」とさらに前倒しするという選択肢もあります。それでも計算上は、70歳で1500万円が手元に残ります。今後は資金も大事ですが、もっと大事なのは心身の健康です。貯めることに疲れ果てたのであれば、すぐにでも休んでいいのでは。

資金的にも、施設入居後の生活費にもよって多少は変わりますが、元気であれば70歳以降も旅行やアート鑑賞など、好きなことを楽しめるだけの余裕はあると考えていいでしょう。
 
とはいえ、これら数字はあくまで試算した結果に過ぎません。このとおりとはならないケースも当然あり得ます。それでも、遊子さん自身、家計管理はしっかりしているので、状況を踏まえながら予算を組んで老後を楽しむことはできるはず。そうであれば、資金面で大きく困ることはないと考えます。
 
最後に投資について。分散投資やNISA活用など、いろいろ考えてされていると思います。ただ、資産の割合としては、今後の働き方や現在の年齢、それも含めたライフプランを考慮すると、投資商品がやや多い気がします。現在も投資額が増えているのであれば、そろそろペースダウンし、同時に利益が出ている商品は売却して、利益確定をしていく。とくにシングルワークとなってからは、現金の比率を増やしていくことを心掛けていく必要があるでしょう。
 

相談者「遊子」さんから寄せられた感想

この度は、家計相談にのっていただき、ありがとうございました。深野先生の回答の内容を何度も何度も読み返しました。将来、子どもに迷惑や心配をかけず、国のお世話にもならず、老後を楽しんでもいいのだということがわかり、本当にホッとしました。これまでは老後が心配で、隙間でも時間があればやみくもに働いてきたのです。深野先生に、今からシングルワークにしてもやり繰り次第では大丈夫とご指摘いただき、驚くと同時に安堵しました。モヤモヤしていた気持ちがスッキリすると、もうちょっと、できる範囲でがんばってみようと前向きになったことに、自分でも驚いております。もともと仕事をして得られる充実感はとても好きですし、収入をちょっと減らしたっていいのだと思うだけで、気持ちがずいぶんと軽くなりました。あちこち絵を観に行こうと計画を立てるだけで、ワクワクしています。不安が解消され、心から感謝いたしております。いただいた回答は、御守りがわりに大切に保存いたします。

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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/清水京武


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