柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)とは
柴胡加竜骨牡蛎湯はとても幅広い精神症状の改善に効果があります
文献や時代によって多少生薬の構成に違いは見られますが、今日では上記の生薬構成がメジャーとなっています。「柴胡加竜骨牡蛎湯」という処方名が示す通り、柴胡、竜骨、牡蛎が中心となって不安感やイライラ感といった精神状態を改善します。
漢方薬を構成する生薬は主に植物の根、葉、樹皮、実、種などが使用されます。そのような中で柴胡加竜骨牡蛎湯を構成する竜骨は大型哺乳類の化石(骨)、牡蛎はカキの貝殻といった動物性の生薬を含んでいます。化石や貝殻が立派な薬になるなんて、不思議な感じがしますね。なお、両者とも鎮静作用を発揮する生薬です。
ストレス社会と言われる現代の日本において、精神症状を改善する力に優れた柴胡加竜骨牡蛎湯は特に有益な漢方薬といえます。本記事では柴胡加竜骨牡蛎湯の効果、どのような方に合っているか、そして使用上の注意点などを解説します。
柴胡加竜骨牡蛎湯の効果……不安感、イライラ感、不眠症にも効果あり
柴胡加竜骨牡蛎湯は精神症状を改善する代表的な漢方薬です。漢方医学的に説明すると、生命エネルギーのような存在である気の巡りを改善する漢方薬といえます。気の流れをスムーズにして、精神状態の安定化に寄与します。より具体的には不安感やイライラ感、過剰な緊張、焦りやすさ、驚きやすさなど幅広いメンタル系のトラブルに有効です。他にも不眠症に用いられることもあります。
不眠症に使用する場合は興奮して目が冴えてしまうような入眠困難の方により適している印象があります。一方で夜中に起きてしまう中途覚醒にも有効であり、幅広い不眠症状に用いられます。
不眠症と漢方薬につきましては「眠れない・目が覚める・夢見が悪い…不眠の悩みに効果的な漢方薬」記事もご参照ください。
柴胡加竜骨牡蛎湯は動悸、のぼせ感、消化器トラブルなどの身体症状にも効果的
柴胡加竜骨牡蛎湯は精神面への効果に優れているのでそれがクローズアップされがちです。しかしながら、精神的ストレスをきっかけとする身体症状にも有効です。具体的には胸や腹に感じる不快な動悸、胸苦しさ、顔などを中心としたのぼせ感、首肩のこりと緊張型頭痛、さらに吐気や食欲の低下といった消化器症状を改善する作用もあります。
柴胡加竜骨牡蛎湯はパニック障害や更年期障害にも効果的
柴胡加竜骨牡蛎湯は心身両面に作用するので、パニック障害や更年期障害にもしばしば応用されます。具体的にはパニック障害による突然の動悸、吐気、冷や汗、手足の震え、そして不安感や焦燥感などに有効です。しかしながら、西洋医学の抗不安薬のような即効性は期待できないので日頃から服用して心身両面のストレス耐性を高めておくのが良いでしょう。
更年期障害においてはホットフラッシュ(頻繁なほてり感、顔の紅潮、発汗過多)の発作、動悸、めまい、頭痛、これらにくわえてイライラ感などに効果があります。こちらも発作時のみではなく日常的に継続服用することで効果が発揮されます。
もしホットフラッシュによる諸症状が顕著なら熱性症状を鎮める黄連解毒湯(おうれんげどくとう)などと併用するのも良いでしょう。
ダイエットへの効果は? ストレスによる過食があるなら服用も検討
柴胡加竜骨牡蛎湯において直接的なダイエット効果は期待できません。一方でストレスを抱えると過食に走ってしまう方なら服用を検討しても良いでしょう。あくまでも運動や食事を軸に据えつつ、ストレス由来の過食に対するブレーキ役という認識が必要です。柴胡加竜骨牡蛎湯の副作用・注意点……便秘の有無が重要
冒頭で述べたように柴胡加竜骨牡蛎湯は収載されている文献などによって内容が異なる場合があります。その中でも大黄(だいおう)という生薬を含むものと含まないものがあり、後者を柴胡加竜骨牡蛎湯去大黄(さいこかりゅうこつぼれいとうきょだいおう)と呼びます。大黄は便秘を改善する生薬として有名ですが、不快なほてり感やイライラ感を除いたり血行を改善するはたらきもあります。もし便秘やほてり感などが顕著な場合は大黄を含んだ柴胡加竜骨牡蛎湯を服用するのがより良いでしょう。
反対に下痢や軟便になりやすい方が大黄を含んだ方の柴胡加竜骨牡蛎湯を服用してしまうと、下痢の悪化や腹痛の原因にもなりますので注意が必要です。判断に困る場合はまず漢方薬局の薬剤師などに相談するのが良いでしょう。
漢方薬ならではのメリット……日中の眠気や運転制限、耐性などが無い
柴胡加竜骨牡蛎湯は心身をリラックスさせる作用がありますが、それが過剰に出てしまう心配はありません。したがって、柴胡加竜骨牡蛎湯を服用することで過度の眠気やだるさが出たり、それにより自動車運転に制限が生じることもありません。中長期的な服用で薬が効きにくくなる耐性、さらに薬が止められなくなってしまう依存性もありません。したがって、柴胡加竜骨牡蛎湯を含んだ漢方薬全般には西洋薬と比較して、生活上の制限なく服用できるメリットがあります。無論、顕著な精神症状がある場合は西洋医学的治療が優先されます。一方、軽度の症状でしたらまずは漢方薬を選択する価値はあります。
柴胡加竜骨牡蛎湯の効果が出るまでの期間……実感には2~3ヵ月程度は必要
柴胡加竜骨牡蛎湯が十分な効果を発揮するには2~3ヵ月程度は継続的に服用する必要があります。西洋薬のような即効性は期待できないので、毎日2~3回に分けて根気強く服用する必要があります。他の漢方薬との併用……問題になる組み合わせもあるので専門家にご相談を
漢方薬全般に言えることですが、漢方薬同士の併用はあまり好ましくありません。その理由として、ひとつの漢方薬は複数の生薬の連携、いわばチームプレーで機能しています。そこに異なった「チーム」が混ざるとうまく機能しなくなる可能性があるからです。つまり、効果が減弱したり、過剰に出てしまうケースもあるのです。複数の漢方薬を併用してみたい、またはすでに何らかの漢方薬を服用している場合などは薬剤師などに相談してみるのが良いでしょう。
柴胡加竜骨牡蛎湯の購入方法
柴胡加竜骨牡蛎湯はとてもメジャーな漢方薬です。漢方専門薬局ならほぼ間違いなく取り扱いがあります。他にもドラッグストアでも顆粒や錠剤の製品をしばしば目にします。一部を例として挙げると、ツムラが販売している柴胡加竜骨牡蛎湯エキス顆粒(20包)は大人の場合で10日分、希望小売価格2,400円(税抜き)です。クラシエが販売している柴胡加竜骨牡蛎湯顆粒(24包)は大人の場合で8日分、希望小売価格1,790円(税抜き)となっています。
同じくクラシエが販売している柴胡加竜骨牡蛎湯エキス錠(180錠)は大人の場合で20日分、希望小売価格3,900円(税抜き)です。
柴胡加竜骨牡蛎湯はどのメーカーのものを買えばよいか? 迷ったら剤形や味で好みのものを
効果の面で言えば漢方専門薬局が調合する煎じ薬の柴胡加竜骨牡蛎湯が最も効果を発揮できます。一方で煎じ薬にハードルを感じるようだったら上記のようなメーカーが作っているエキス顆粒や錠剤を選択するのが良いでしょう。メーカーごとに剤形や服用回数、味や香りが異なったりするのでまずは継続できそうなものを選択するのが良いでしょう。
エキス顆粒や錠剤なら携帯も可能ですし仕事や家事などで時間が取れない方でも継続しやすいかと思います。これらを服用しても十分に効果が感じられなければ漢方専門薬局の煎じ薬を検討するのも良いでしょう。
柴胡加竜骨牡蛎湯の服用方法
柴胡加竜骨牡蛎湯も含めて、基本的に漢方薬の服用は1日2~3回の食前または食間服用です。食前は食事の30~40分前、食間は食事の前後2時間程度を空けた時間帯です。おわりに
柴胡加竜骨牡蛎湯は幅広いメンタル症状の改善を得意とする代表的な漢方薬です。上記で挙げたような精神症状・身体症状がある方は柴胡加竜骨牡蛎湯を検討しても良いでしょう。一方で気の巡りを改善して精神状態を安定化する漢方薬は他にも多く存在します。どのような漢方薬が自分に合っているか分からない場合は漢方専門薬局で相談してみるのが良いでしょう。ストレスによる心身の変調にお困りの方は一度、漢方薬を検討して頂ければ幸いです。