お金の悩みを解決!マネープランクリニック/40代独身の人のお金の悩み

41歳シングル貯金500万円。3000万円の住宅ローンを組んでしまいました(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、浪費傾向が強く、これまでまったく貯蓄ができなかったにもかかわらず、3000万円超の住宅ローンを組むことになった41歳の会社員女性。加えて、今後も同じ収入を維持できるか不安とのこと。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 削らなくていいがこれ以上は増やさない

ご相談者の状況としては、貯蓄がなかなかできない中で、注文住宅という大きな買い物をしてしまったわけですが、購入そのものを取り止めることは現実的ではありません。したがって、今後その返済を含めて、どう家計管理をしていくべきか考えてみます。
 
まず、ご相談文を拝見して、家計管理について、精神的な部分を自身でどうコントロールするかが大事になってくると感じました。すなやまさんは「精神的な不安定さや自分への甘さがあり」「身の丈に合わない住宅を購入してしまい」「何か欲しいと思えば我慢がきかず」というように、自分を客観的に見ることができ、何がいけないのかも理解している。それがわからない人は、それに気づくことでこれまでの行動を修正できる可能性があるでしょう。しかし、わかっているのに結果的に浪費を繰り返してしまう。ここに難しさがあると思います。
 
例えば、この状況での一般的なアドバイスなら、住宅購入をキッカケに家計を見直しましょう、となります。具体的には、趣味娯楽費とペット費用、雑費で計12万円。手取り月収の3分の1を占めていますので、ここを家計的に削ることになります。しかし、すなやまさんの場合は、新たにかかるヨガ教室の費用も含めて、支出は今のところ現状維持でいいと思います。
 
理由は、ある程度の支出をすることで、気持ちのバランスが取れていると考えられるからです。しかも現状なら、貯蓄もまだできています。削ることでかえって支出が増えるといった反動も考えられます。とくに、ペットに関しては、その存在そのものが生活の大きな部分を占めていますから、少なくとも強制的にコストを下げる(例えば、ペットの数を減らす)ことはすべきではないでしょう。
 
ただし、住宅ローンを抱えた以上、これだけは守ってください。これ以上、支出は増やさない。それが今後、家計管理で失敗しないための大前提です。
 

アドバイス2 自己資金200万円を出して借入額を抑える

次に、住宅ローン発生後の家計を考えてみます。

借入額は当初3000万円でしたが、建築費用が400万円ほどオーバーしそうとのこと。ここを削るかどうか、またそれが可能かどうかは、ここでは判断できませんので、仮に400万円上乗せになったとします。

3400万円をフルに借り入れれば、想定されている金利1.2%、34年返済で、毎月の返済額はおよそ10万1500円。3000万円の借り入れだと、毎月8万9500円ですから、1万2000円のアップとなります。価格差はさほど大きく感じないかもしれませんが、これが34年間続くのですから、この差は決して小さくありません。
 
現在の貯蓄から自己資金を出して、借入額を3000万円に抑えることもできるでしょう。しかし、収入は高いとはいえ、ほぼ手持ち資金がなくなります。そこで、自己資金として200万円(別途、諸経費に100万円程度)を入れ、3200万円の借り入れとしてはどうでしょう。これで毎月の返済額は9万5500円。借入額も減りますし、返済額は多少増えても、現在の住宅コストから3万円アップですから、まだ月5万円の貯蓄が可能です。
 
また、ボーナスから今まで同様、半分の30万円が貯蓄に回れば、年間の貯蓄額は90万円。定年までの20年間で1800万円。住宅資金捻出時点の貯蓄の残高を200万円とすれば、計2000万円。ただし、途中、クルマ(軽自動車)の買い替えが数回あるので、定年時に手元にある資金は1800万円前後ということになります。
 

アドバイス3 繰上返済より貯蓄アップを優先

住宅ローンでの懸念材料は返済期間が34年ということ。完済が75歳のときです。現在は十分支払いが可能な住宅ローンも、60歳以降はきびしいと予想されます。
 
解決策としては、繰上返済で返済期間を短縮する方法がもっとも効果的です。実際、住宅ローン発生後でも2、3年に1回、100万円程度の繰上返済は十分可能です。しかし、少なくとも今後10年間は繰上返済はすべきではないでしょう。

その理由として、転職の可能性があります。夜勤が年齢的にきびしくなってきた場合、結果的に転職せざるを得なくなると、年収にして200万円下がるとのこと。もし、その想定どおりとなれば、現状の家計では貯蓄を取り崩す可能性も十分あります。さらに怖いのは、転職が順調に進まず、収入が途絶える時期ができてしまう場合です。
 
したがって、まずは現金を貯めることを優先してください。万が一に備えることができます。貯蓄もなく、住宅ローンの支払いが滞れば、それこそ大変です。NISA等、投資によってリスクを取ることも今はすべきではありません。保険もこのままで十分です。
 
繰上返済の実施は、今後の収入次第ですが60歳以降と考えていいかもしれません。ちなみに、60歳の時点で500万円を繰上返済(期間短縮型)すれば返済期間は5年間短縮され、支払い利息は約74万円の軽減。1000万円なら9年9カ月短縮されて、支払利息は約116万円軽減されます。慌てずとも、20年後でも十分効果はあります。
 
また、住宅ローンを支払いながら家計管理をし、貯蓄も一定額を継続してできるようになれば、家計支出を減らす意識や工夫が出てくる可能性もあります。そもそも、すでに奨学金の一括返済もしていますし、食費や水道光熱費など、抑えている部分もあります。家計管理ができる下地はあると考えます。まずは焦らず、着実に貯蓄を増やしましょう。そして、日頃から心身の健康管理に気を配り、より長く働けることを目指してください。
 

相談者「すなやま」さんより寄せられた感想

もっときびしいお言葉が並ぶものと覚悟しておりましたが、私自身の問題も含め、現状に合わせたアドバイスを頂けて嬉しかったです。退職時の手元資金の試算を見ると、収入が維持できると仮定してこれなのですから、やはり今の生活にかけ過ぎなのですね。繰上返済の時期、投資のこと、住宅ローン借り入れのことなど、迷っていたことに道筋をつけて頂けてよかったです。これからは、もう少し自分に振り回される振り幅を小さくしていけるよう、取り組んでいきたいと思います。このような貴重な機会を与えてくださり、本当にありがとうございました。深野先生はじめ、オールアバウトの皆様、この度は本当にありがとうございました。


教えてくれたのは……
深野 康彦さん
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など


取材・文/清水京武



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