2019年度の税制改正大綱のポイントとは?
税制は、毎年、いろいろな改正が行われるため、その内容を確認しておくことは重要です。気になる改正は人それぞれですが、個人に影響しそうな、主なポイントを挙げてみます。なお、税制改正については、どのように変わるのか、という点が重要ですが、いつから変わるのか?という点も非常に重要になりますので、注意してみましょう。<目次>
1. 住宅ローン控除の特例の創設
現在、新たに住宅ローン控除の適用をうけることができる控除期間は、10年間となっていますが、2019年10月1日から2020年12月31日までの間に居住した場合(消費税等が10%の場合に限る)には、控除できる期間を3年延長し、13年間とするというものです。主なポイントは、
① 2019年10月1日から2020年12月31日までの間に居住すること
② 消費税等が10%であること
③ 控除期間は13年間になること
です。
11年目から13年目までの特別控除額の計算方法は、以下のイメージです。(一般住宅の場合/以下のうちいずれか少ない金額)
① 住宅借入金等の年末残高(4,000万円を限度)×1%・・・現行限度額と同じ
② 住宅取得等の対価の額(税抜き)(4,000万円を限度)×2%÷3
例:住宅の取得価格が3,000万円(税抜き)で、住宅借入金等年末残高が2,500万円だった場合。
① 2,500万円×1%=25万円
② 3,000万円×2%/3=20万円
控除限度額は、① > ② ∴ 20万円 となります。
要するに、消費税等が8%から10%に2%増えた分(例の場合60万円)が3年間で控除されるというイメージです。
2. 自動車税(種別割)の改正
自動車に関する税金は、いろいろありますが、主には以下の3つです。① 自動車取得税・・・購入時にかかる税金
② 自動車重量税・・・購入時・車検時にかかる税金
③ 自動車税・・・毎年かかる税金 (自動車税・種別割に変更予定)
上記③の自動車税つまり、自家用乗用車に係る種別割の税率の改正案の内容は以下のとおりです。(三輪の小型自動車を除く)
(総排気量) 現行 改正案
1,000cc以下 29,500円 25,000円
1,000cc超 1,500cc以下 34,500円 30,500円
1,500cc超 2,000cc以下 39,500円 36,000円
2,000cc超 2,500cc以下 45,000円 43,500円
2,500cc超 3,000cc以下 51,000円 50,000円
3,000cc超 3,500cc以下 58,000円 57,000円
3,500cc超 4,000cc以下 66,500円 65,500円
4,000cc超 4,500cc以下 76,500円 75,500円
4,500cc超 6,000cc以下 88,000円 87,000円
6,000cc超 111,000円 110,000円
1,000円~4,500円軽減される案となっています。
なお、2019年10月1日以後に新車新規登録を受けたものから適用予定です。
また、①の自動車取得税は、2019年9月30日をもって廃止され、新たに、2019年10月1日から導入される自動車税(環境性能割)が適用されます。
自家用乗用車の自動車税(環境性能割)の改正案は下記となっています。
現 行 改 正 案
非課税: 平成32年度燃費基準値より 平成32年度燃費基準値より
10%以上燃費性能の良いもの 20%以上燃費性能の良いもの
1% : 平成32年度燃費基準値を 平成32年度燃費基準値より
満たすもの 10%以上燃費性能の良いもの
2% : 平成27年度燃費基準値より 平成32年度燃費基準値を
10%以上燃費性能の良いもの 満たすもの
以上のように、条件が厳しくなっています。
なお、2019年10月1日から2020年9月30日までの間に取得した自家用乗用車に係る環境性能割については、税率1%分が軽減される予定です。
また、自動車に関する税金は、燃費性能などにより、軽減されていますので、自分の自動車がどれに該当するか、について確認してみてはいかがでしょうか。
エコカー減税 (自動車重量税・自動車取得税) の概要(国土交通省HPより)
燃費基準達成車ステッカー(国土交通省HPより)
4. 空き家特例の要件緩和
老人ホーム等に入所をしたことにより被相続人の居住の用に供されなくなった家屋及びその家屋の敷地の用に供されていた土地等についても、一定の要件に該当する場合には、空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除の特例の適用が可能となる予定です。また、適用期限も4年延長する予定です。
2019年4月1日以後に行う譲渡について適用される予定。
5. 個人事業者の事業用資産に係る相続税の納税猶予制度の創設等
個人事業者についても、事業承継を促進するための相続税・贈与税の新たな納税猶予制度が創設される予定です。ポイントは、
(1) 事業用の建物及び一定の減価償却資産を対象とする
(2) 税額の猶予割合は100%とする
(3) 相続のみならず生前贈与にも適用可能とする
(4) 10年間の特例措置とする
(5) 現行措置との選択適用とする
2019年1月1日から2028年12月31日までの間に相続等により特定事業用資産を取得し、事業を継続していく場合に適用予定。
6. 成年年齢
(1)相続税の未成年者控除の対象となる相続人の年齢を18歳未満(現行:20歳未満)に引き下げられます。(2)次に掲げる制度における受贈者の年齢要件が18歳以上(現行:20歳以上)に引き下げられます。
・相続時精算課税制度
・直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率の特例
・相続時精算課税適用者の特例
・非上場株式等に係る贈与税の納税猶予制度
上記(1)及び(2)ともに、2022年4月1日以後に相続若しくは遺贈又は贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用予定です。
7. 特定事業用宅地等に係る小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の見直し
特定事業用宅地等の範囲から、相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等(当該宅地等の上で事業の用に供されている減価償却資産の価額が、当該宅地等の相続時の価額の15%以上である場合を除く。)が除外されます。2019年4月1日以後に相続等により取得する財産に係る相続税について適用予定です。ただし、同日前から事業の用に供されている宅地等については、適用されません。
8. 教育資金の一括贈与非課税措置の見直し及び 結婚・子育て資金の一括贈与非課税措置の見直し
信託等をする日の属する年の前年の受贈者の合計所得金額が1,000万円を超える場合には、当該信託等により取得した信託受益権等については、本措置の適用を受けることができないこととなる予定です。適用期限も2年間延長予定です。2019年4月1日以後に信託等により取得する信託受益権等に係る贈与税について適用予定です。
いかがでしたでしょうか。このほかにも、配偶者居住権の評価額なども、たくさんの改正が予定されております。自分に関係する改正がないかどうか、ぜひ、一度、税制改正大綱を確認することをおすすめします。