アドバイス1 子どもの独立を機に家計をダウンサイズする
現在の家計を見ると、食費7万円、電気・ガス・水道料金4万円などコストがかかり過ぎです。ただ、その理由は明白でお子さん二人と同居しているから。年金生活がスタートする前にお二人は独立するとのことですから、家計のダウンサイズはそれほど難しくはないはずです。節約しようと思わなくても削減できる分だけでなく、年金額を意識して家計を見直してください。エリコさん定年以降の世帯収入は、ご夫婦の公的年金と小規模企業共済や個人年金などで月15万円くらいは確保できそう。現在の支出から定年以降はなくなる保険料と貯蓄を引くと約18万円ですから、あと3万円くらい家計を小さくすることができれば基本的な生活費は年金などの収入でカバーできます。これが実現できれば、老後のマネープランはかなり見通しが明るくなります。
アドバイス2 余裕はないけれど老後資金は何とかなる
基本的な生活費は、公的年金などの収入でまかなえそうなことがわかりました。ということは貯めたお金は住宅のメンテナンスなどの特別支出や、介護が必要になったときなどのための予備費ということになります。貯蓄や投資などで現在、貯まっているお金が1115万円、これからエリコさんが定年を迎えるまでに貯められるお金が6万円×12カ月×4年=288万円ですから、合わせて約1400万円。これを十分と思うか足りないと感じるかは人それぞれですが、私は不安に思うほどの家計ではないと思います。もちろん、それほど余裕があるわけではありませんがもっと苦しい家計の人はいっぱいいますから、もう少し楽観的になってもいいかもしれません。車の買い替えも、退職金の金額程度のものであれば問題ないと思います。夫婦二人の生活になるのですから、車種は取り回しのしやすい小型車。ただし自動ブレーキなど、安全支援システムは充実したものを選んでください。
ひとつ気になるのが投資。年齢からいうと守りに入る時期ですから、タイミングを見て株式は売却しましょう。損をしているとなかなか売れないものですが、個別株で運用している人は損をしている人が多いものです。売却した資金で投信積立を継続することをおすすめします。
アドバイス3 できるだけ長く働くことが、老後のお金の余裕につながる
ご主人は75歳くらいまで仕事を続ける予定とのこと、ぜひそれは実行してください。前述の老後資金の試算にはご主人の収入が含まれていませんから、働けば働いただけ余裕資金になります。おっしゃる通り生きがいになり、健康を維持するモチベーションにもつながるはずです。そのお金は旅行など、ご夫婦での楽しみに使ってもいいでしょう。ご自宅の庭へ柿やミカンを植えたり、葉物野菜を作っていらっしゃるとのこと。いまは節約目的なのでたいへんなだけかもしれませんが、退職後は趣味として楽しめるようになるはずです。家庭菜園は足腰が鍛えられて健康が維持できますし、土と触れ合うことは心を癒してくれる効果があるといいます。家庭菜園を老後の楽しみにするために、お金を払って畑を借りて車で通う人もいるくらいです。それがご自宅でできるのですから恵まれた環境と思って、第二の人生を楽しんでください。
相談者「エリコ」さんから寄せられた感想
藤川先生、アドバイスを読んで、道が一本、すっと見えた気がして、気が楽になりました。これから、小さな幸せを大事にしながら、夫婦で堅実に暮らしていきたいと思います。本当にありがとうございました。教えてくれたのは……
藤川太さん
All About「資産運用」ガイド。「家計の見直し相談センター」で10年以上にわたり1万5000世帯を超える家計の見直しを行ってきたFP。資産運用、家計管理、マイホーム購入、不動産投資などに詳しく「普通の人」でもお金を貯める・増やせるようになる方法をアドバイスしています。
取材・文/鈴木弥生
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