伝説のミュージカル・レビューが久々に登場『DOWNTOWN FOLLIES Vol.11』
3月8~10日=よしもと幕張イオンモール劇場、3月14~17日=ルミネtheよしもと、3月21~24日=TTホール 『DOWNTOWN FOLLIES Vol.11』の見どころ実力派のエンターテイナーたちが、歌にダンス、コントに物真似と“何でもあり”の世界で、爆笑を誘う究極のミュージカル・レビュー。2002年に初演以来、回を重ねてきたこのショーが、前回公演から4年ぶりに、島田歌穂さん、北村岳子さん、平澤智さん、HIDEBOHさんという顔ぶれで上演されます。
構成・演出をつとめるのは高平哲郎さん。『笑っていいとも!』の構成作家や編集者、作家としてマルチに活躍してきた高平さんが、時流に乗りながらもユニークな視点で書いたスケッチの数々を、島田さんはじめ、一人で十人の俳優に匹敵する実力の持ち主たちが大真面目に、かつおバカに徹して演じてくれます。
11回目となる今回は、4人がタップを踏みながら狂言風にラップを歌う(語る)“ダウンタウンフォーリーズ・コード”などお馴染みのシーン、そして昨年話題をさらった某・新作ミュージカルに因んだネタなど、エンタメ好きにはたまらない爆笑ネタが続々。もちろん難度の高い某名曲の合唱など、4人の技術もさく裂予定。“これぞエンタテインメント!”と唸りながらも、存分に大口を開けて笑えるひとときとなることでしょう。
構成・演出 高平哲郎さん×出演 北村岳子さんインタビュー
高平哲郎 東京都出身。コピーライター、編集者を経て構成作家として活躍(『笑っていいとも!』等)。ミュージカルは98年から演出。著書も多数。 北村岳子 京都府出身。劇団四季を経て『恋と音楽』等多数のミュージカルで活躍。11年から大阪芸大・芸術学科講師として教鞭もとっている。(C)Marino Matsushima
“面白さ”の創造に必要なものとは
――まずは本作が誕生したいきさつから教えていただけますか?
高平「島田歌穂さんの事務所の当時の社長が、4人のショーを作りたいと言ったんですよ」
北村「大人のお客様に楽しんでいただけるものを、と」
高平「ブロードウェイのショーに『Forbidden Broadway』というのがあるでしょ。あのショーのように、男女二人ずつと、ピアノ一台でいいんじゃないか、と」 ――シーンの数々はどんなコンセプトで作っていらっしゃるのですか?
高平「“不真面目”、かな(笑)。コンセプトというほどのものは無いんですよ。広告で“馬鹿で危険なミュージカル”と言っているけど、そんなところかな。一つ一つのアイディアは、ミュージカルや映画を観ているとパロディを作りたくなったりしてね。初めの頃は最初にどんなものをやりたいか相談してから書いていたけど」
北村「今はまず台本をいただいて、私たちが右往左往するという(笑)」
――“できる方々”が集ってこそ、のショーなのですね。
高平「誰でも出来るショーではないですよ。例えば今回、4人で“ボヘミアン・ラプソディ”のコーラスをやるんだけど、このシーン(の面白さ)が成立するのも、彼らが(見事に)歌えるという前提があるから。(音楽監督の)島健さんもそういう意識でやっています。歌にせよダンスにせよ、レベルが低かったら成立しないですよね。もしプロデューサーから“今回は~~さんを入れたいんですが”と言われても、はっきり“だってその人、踊れないでしょ。そういうショーはよそでやって”と言います」
――客層は意識されていますか?
高平「僕はこれまで、どの仕事をしていても意識したことないです。コピーライター、雑誌。テレビ。だってそんなこと考えたら、ものなんか作れません。自分が面白ければ面白いんだ、と思わないと。子供からおじいさんまで楽しいコメディなんてありえない。自分が面白いと思うものを信じるしかない、それができないならこんな仕事できません」 ――今回の見どころは?
高平「全部ですよ。各要素がバランスよく並んでいるのが見どころなんじゃないかな。あと、今回はHIDEBOHが新たに参加していて、タップがうまいのはもちろんだけど、歌がいいんです。うまいと噂には聞いていたけど、あれだけソフトに歌うと思わなかった。すごくきれいに歌っていますよ」
――では高平さんはお稽古に戻られるということなので、ここからは北村さんにうかがいます。このショーは北村さんにとってどんな作品でしょうか?
北村「ほかでは絶対できないことをさせていただけるショーですね。男役をやったりおばあさんになったり、声色も高いところから低いところまで使ったり。芸域が広がるけれど、その分手ごわい。題材をぽん、と渡されるので、いかにこなすかが大変です」
――これ無理でしょ、と思われたことも?
北村「いっぱいあります(笑)。漫才をやる、と書かれていた時は、“やばい”と思いましたね。最初は“うーん”と頭を抱えていたけど、だんだん心地よくなってきました(笑)。でもコントって、あまり稽古すると変な方向に行ってしまって、直観でやったほうがいいこともあるんですよね。“あの時直観でやったのはどういう感じだったっけ”と思うこともあります。
リピーターのお客様の中には先取りで笑ってくれる、下手をすると出てきただけで笑ってくださるお客様もいて、それに対して自分も笑ってしまったりしますが(笑)、まぁそんなこと他のショーではないですね」
――これまで演じた中で、お好きだったキャラクターは?
北村「自分の中では、居酒屋の女将のナツコというのがダントツですね。ちょうど『マンマ・ミーア!』が流行っていた時で、女将や会社員やOLが『マンマ・ミーア!』の演歌バージョンという趣向でした。あとは島田歌穂ちゃんだけがジェット団で、あとの3人はベルナルドを歌い踊る『ウェストサイド物語』とか、全員でマイケル・ジャクソンのスムース・クリミナルを踊ったりとか。馬鹿なことをやっているんだけど、それをちゃんとやる。皆さん芸達者だからこそ出来るんですよね」 ――先ほど、高平さんは今回の見どころを全部とおっしゃっていましたが、構成案を拝見したところ、内容的にはバラエティに富んでいますね。
北村「そうなんですよ。某監督の映画を全部ミュージカルにしてみたらどうなるか、というシーンでは、“おいおい”と突っ込みたくなるパロディがあったり。私の大好きな古き良き浅草風の世界も登場するし、HIDEBOHさんのタップがたっぷり観られるくだりもあります」
――今回、ご自身の中でテーマにされていることはありますか?
北村「いかに“良い加減にやるか”。毎回そうなんです。今はまだちょっと力が入ってまして、これが抜けるときっとお客さんといいものを共有できると思いますね」
――今回のご共演者について、一言ずついただけますか?
北村「HIDEBOHさんはずっと観ていたいくらいの素晴らしいタップを踏まれる方。でもタップにしても台詞にしても、どこか乾いているというか、押してこないのが素敵です。いっぽう、平澤(智)さんは逆に押してくるタイプで(笑)、色っぽさもある。でもそういう方が時に“ふわ~”と抜けると、たまらなく魅力的ですね。歌穂さんは歌唱力もさることながら、タップも踏めるし踊れるし、お芝居も安定。そばでやっていて大・安心感があります。私のほうが年上なのに、座長ということもあってお姉さんみたいな存在ですね。
4人ともお付き合いは長くて仲はいいです。私が“今日はもう稽古やめようよ”なんて言い出しても、みな受け入れてくれますし(笑)。でも一緒に呑みに行ったりすることはあまりないですね。何十年も一緒にやってきているので、もう呑む必要もないのかもしれません」 ――どんなショーになりそうでしょうか?
「力のある人たちがいろんなことを面白がってやっているのを観て、くすっと笑っていただけたら。大人たちが楽しんでくれるショーが出来るといいなと思っています」
“頑張りはしても、比べない”精神で
――北村さんはミュージカルの世界で長く活躍されていますが、元気の秘訣は何でしょうか?
「至って普通ですが、8時間寝ることです(笑)。6時間だとダメで、絶対8時間ですね。あとは適度に呑むことと、昨日のことは忘れる! それじゃ台詞忘れちゃうって?(笑)。生きているとだんだん、いろいろ詰まってきますからね。すっきりしていれば、次に行けると思っています」
――劇団四季にもいらっしゃったのですね。
「79年に研究所に入って、3,4年いましたね。よく稽古するところで、朝8時過ぎからレッスンするのは当たり前でした。公演がある日でも、バレエをやってから劇場に行くんですよ。いろいろビッグなミュージカルをやらせていただいて、80年に初演した『キャッツ』にも出ました。チケットを手売りしていた時代から、『キャッツ』が軌道に乗ってやっと楽になったころに辞めたんですよね」
――近年では『WORKING』のお掃除おばちゃん役に哀感があり、素敵でした。
「あれは大変でしたね、歌が難しくて。でも東宝ミュージカルアカデミー出身の若い子たちが歌唱力があって、みんなすごいと思いました。いい作品でしたね」
――様々な作品に出演される中で、モットーはお持ちですか?
「最近は無理をしないというか、頑張りはしますが、人と比べないようにしています。樹木希林さんがおっしゃっていたんですよ、人と比べず、面白がってやる、って。いい言葉ですよね。なかなかそうはなれないし、ここは難しいなということもたくさんある。でも“すごい人はいっぱいいるけど、私は私”と思って、面白がっていく方向に持っていければ、不思議とクリアしていけるものなんです」
*次頁で『プリシラ』をご紹介します!