貯蓄

つみたてNISAとiDeCoどっちが得か調べてみた

仕事柄、ぼくも「iDeCいいよ!」「つみたてNISAいいよ!」なんて話をすることが多いのです。今回は、この2つのどちらの方がお得なのか?調べてみました。

中原 良太

執筆者:中原 良太

エビデンスに基づく資産活用&マネープランガイド

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つみたてNISAとiDeCo、結局どっちの方がお得なの?

これまで、「iDeCoの節税効果は何百万円なのか?」「つみたてNISAの節税効果は月何万円なのか?」などなど、最近は節税効果を確かめる記事を書いてきました。
 
仕事柄、ぼくも「iDeCoいいよ~!」「つみたてNISAいいよ~!」なんて話をすることが多いのですが、こんな話をしていると必ず聞かれる質問があります。
 
それは、「つみたてNISAとiDeCo、結局どっちの方がお得なの?」という質問です。そこで今回は、このご質問にお答えするべく、どちらの方がお得なのか?調べてみました。
 

「つみたてNISA」って何?

「つみたてNISAって何?」という方は、過去に何度か取り上げてきましたので、それぞれの記事をご参照ください。
 
●つみたてNISAに関わる記事一覧 つみたてNISAとは、資産運用に使える貯蓄制度です。この制度を使うことで、資産運用を一定期間、非課税で行うことができます。
 
通常、株式投資などで得られた売買差益のうち、約20%が課税されます。たとえば、100万円の利益が出たら、20万円は税金で取られる計算です。
 
しかし、つみたてNISAを使うと、この課税が20年間なくなります。100万円の利益を出したら、そのまま100万円を受け取ることができます。20万円の税金を取られることはありません。(=20万円を得する!)
 
つみたてNISAに関する制度の説明としては、図説が豊富なこのページが参考になるかと思います。本記事と併せてご活用ください。
 

「iDeCo」って何? 

そもそも「iDeCoって何?」という方は、過去に何度か取り上げてきましたので、それぞれの記事をご参照ください。
 
●iDeCoに関わる記事一覧 iDeCoとは「個人向けの確定拠出年金」を指します。平たく言うと、「自分のために、自分で貯める年金」みたいなものです。最近は「じぶん年金」という言葉が流行っていますが、iDeCoは「じぶん年金」を作る上でも魅力的な制度です。
 
iDeCoは「節税をしながら貯金ができる」有利な制度です。具体的な節税効果としては、「積み立てしたお金は所得控除できる!」「運用で利益を出したら非課税にできる!」「受け取るときも控除対象にできる!」と、三段構えの節税効果が得られます。
 
原則一定期間引き出すことができない点が難点ですが、そもそも年金は引き出せてはいけません。ですから、むしろ、お金が引き出せないことは、メリットと言い表すこともできるでしょう。また、iDeCoの利用には若干のコストがかかりますので、この点には注意が必要です。
 

結局、「つみたてNISA」と「iDeCo」のどっちを選ぶべき?

ひととおり復習が済んだところで、本題へ移りましょう。ズバリ、つみたてNISAとiDeCoは、どっちの方がお得なのでしょうか?
 
結論から言ってしまうと、答えは「ケース・バイ・ケース」です。つみたてNISAを選ぶ方がお得な人もいますし、逆にiDeCoを選んだ方がお得な人もいます。
 
「つみたてNISAとiDeCo、自分にはどっちの方がお得なのか?」を知りたい方は、これからお尋ねする2つの質問に答えていただければ、おおよそどちらの方がお得かが分かります。ぜひ、回答してみてください。
 
●質問1:あなたの年収はおいくらですか?
●質問2:あなたの年齢はおいくつですか?

 
この2つの回答結果によって、あなたに「つみたてNISA」が向いているか、「iDeCo」が向いているかが分かります。これから、それぞれの点について詳しくご説明しましょう。
 

視点1:所得税や住民税の支払いが多い人は「iDeCo」が得!

まず覚えておいてほしいのは、「所得税や住民税の支払いが多い人ほどiDeCoが得だ!」という点です。
 
iDeCoでは、積立資金が所得控除の対象になります。一方、つみたてNISAでは積立資金は所得控除の対象になりません。よって、もともと所得税や住民税を多く支払っている人ほど、iDeCoの方がお得である可能性が高いといえるでしょう。
 
たとえば、dodaの調査(1)によると、50代の方の平均年収は600万円ほどなのだとか。基礎控除や配偶者控除、社会保険料控除などを考慮すると、iDeCoで資金を積み立てると、積立資金の15%くらい(所得税率5%+住民税率10%)の所得控除を受けることができるかと思います。(※自分の場合に当てはめて、ぜひ試算してみてください)
 
基本的には、「所得税や住民税を支払っている人は、iDeCoの方がお得だ!」と覚えておくとよいかと思います。(たまに例外はあるでしょうが、おおよそ間違っていないと思います。)
 
一方、「そもそも、所得税や住民税を支払っていない」という方は、所得控除による節税ができません。さらに、iDeCoは口座の維持や、受取時に手数料がかかります。つみたてNISAは口座維持に手数料がかからない分、所得税や住民税を支払っていない人は、つみたてNISAの方がお得だと言えます。
 
とはいえ、所得の少ない方でも、「それでもiDeCoの方がお得!」になる場合があります。そんな方は、2つ目のポイントについても確認するとよいでしょう。
 

視点2:所得税や住民税の支払いが少なく、40歳以上なら「つみたてNISA」が得!

2つ目に覚えておいてほしいのは、「所得税や住民税の支払いが少なく、40歳以上ならつみたてNISAが得!」という点です。
 
iDeCoとつみたてNISAでは、運用で得られた利益を非課税にすることができます。具体的には、iDeCoは「積立資金を受け取るまで」、つみたてNISAは「一律20年間」の非課税期間があります。
 
iDeCoでは原則60歳から受け取りが開始ですから、たとえば、20歳にiDeCoを始めた場合は、非課税期間は40年と長くなります。つみたてNISAの非課税期間は20年ですから、年数は2倍です。運用期間が長期になるほど複利効果により運用益が膨らみ、節税効果も高まると期待できます。
 
一方、iDeCoを50歳から始めた場合は、非課税期間は10年と短くなります。つみたてNISAでは非課税期間が20年ありますから、およそ半分の年数です。
 
よって、所得の少ない方が「つみたてNISA」か「iDeCo」かを選ぶ場合は、自分の年齢と相談しながら選ぶとよいでしょう。目安としては、「40歳未満はiDeCoでも、つみたてNISAでも、どちらでもよい可能性があるのでグレーゾーン!」「40歳以上はつみたてNISAで確定!」くらいに考えておくとよいと思います。
 
とはいえ、iDeCoでは「一度始めたらずっと積み立てなくてはいけない」「積み立てに手数料がかかる」「受給にも手数料がかかる」「積立金を原則受給時まで引き出せない」といった不安材料があります。
 
所得控除のメリットが小さな人は、無理してiDeCoにせず、つみたてNISAにして、運用資産の流動性を確保しておくのが無難でしょう。
 

まとめ

これまでの話をまとめると、「たくさん所得税や住民税を払っている人はiDeCo!」「そんなに所得税や住民税を支払ってない人のうち、40歳未満はグレーゾーン!」「そんなに所得税や住民税を支払ってない人で、40歳以上なら迷わずつみたてNISA!」といったところでしょうか。
 
いろいろとお話ししてきましたが、とはいえ、今回の話はあくまで「節税効果」に限ったお話です。養育費や引っ越しなど、人生では突発的な支出もあります。節税効果の最大化も大切ですが、自分のおサイフ事情に合った制度を選ぶのが一番だと思いますよ。
 
たまに「積立投資は、積み立てるだけだからつまらない!私は個別株投資でいく!」という方がいますが、経済学者らの調査(2)では「個人投資家は、市場平均よりも利益を出せていない!」なんてことも分かっています。個別株投資に夢を抱くのは個人の勝手ですが、まずは手堅く、iDeCoやつみたてNISAでインデックス投資から始めて、足場を固めるのが先決でしょう。
 
●参考文献
 
  1. ウェブサイト:転職サービスdoda, 2020, "平均年収ランキング2020【年齢別】", 2021年4月1日時点
  2. ハンドブック:Brad M. Barber and Terrance Odean, 2013, "Handbook of the Economics of Finance", Volume 2, Part B, pp. 1533-1570

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