大岡山北口商店街にオープンした、日常のためのベーカリー
昔ながらの風情を残した大岡山北口商店街。軒を連ねる個人店の中に、2018年11月1日、新しいパン屋さんが仲間入りしました。BAKERY CONTRAST(ベーカリー コントラスト)。店を営むのはパン職人歴13年余の亀井秀太さんと、同じく10年以上パンを焼いている、パートナーの良子さんです。店にはハード系を中心に、色よく焼けたパンが並んでいます。 「パンの焼き色や食感、風味などの濃淡を表現できるパン屋でありたい」と、亀井さんは「CONTRAST」という店名の由来を教えてくれました。そしてもうひとつ。「お客さまの日常生活の中に、非日常のような、ちょっとしたワクワクと彩りを添えることができたら、と思っています」。 おいしいパンの絶対的な要素のひとつに、食感のコントラスト、というのがあると思います。香ばしく焼きこんでパリッとしているクラストと、中のふんわりした部分のメリハリが、味覚と触覚に、心地よい感じをもたらすのです。
この店のハード系のパンには、それがありました。
料理とともに楽しむシンプルなパン
「CONTRAST」とそのまま店名を冠したバゲット(270円)は、灰分が高く風味の強い小麦粉を、ほどよいバランスで配合し、低温で18時間の発酵をとって焼かれています。同じバゲットでも、先のまるいものと尖ったものを、好みで選べるようになっています。バリエーションに「りんごのバゲット」(350円)があります。甘酸っぱい紅玉をキャラメリゼして、サワークリームとともに包み込んだもの。これは今の季節の楽しみですね。
もうひとつの看板商品ともいえる「ルヴァン」(420円)は、品のあるほのかな酸味のせいか、薄く切って何かつけながら食べていると、何枚でも食べられてしまう。どんなものにも合わせられ、たくさん食べられるカンパーニュというのは、なかなかないものです。これは好きになるひとが多そう。
亀井さんは、パンが好きなご両親の影響で、子供の時からパン職人になることを考えていたそうですが、ハード系のパンの魅力に目覚めたのは、実際に店で働くようになってからだそうです。
京都の「ル・プチメック」で働いていた頃のこと。「仕事の後で連れていってもらったビストロやレストランで、見たことも食べたこともないような料理に、自分たちの焼いたパンが添えられていたことが、とても印象に残っています。当時は20代そこそこでしたから」。その後も「ブルディガラ」(京都・東京)や「ベーカリー&レストラン SAWAMURA」(東京)などでパンを焼き、経験を積んできた亀井さんにとって、料理に添えるパンの存在はゆるぎないものになっていったのでしょう。BAKERY CONTRASTの主役は、料理に添えたくなるパンです。 料理に添えるパンでも、柔らかいのが好きなひとには、「フォカッチャ」(230円)があります。セモリナ粉とシチリアの塩を使い、ローズマリーの香る、歯切れのいいイタリア風のパンです。四角い形が切り分けやすく、家庭のテーブルでも映えることでしょう。
おやつパンにも、コントラストの絶妙なバランス
ハード系が主役なら、準主役は食パンでしょう。ふんわりもっちりとして、ほの甘い角食の「湯種食パン」(310円/1斤)のほか、山型のハードトースト(500円/2斤)があって、これは水分をたっぷり含んでいます。ゆっくり時間をかけてつくられた、すっきりと澄んだ味わいです。このハードトーストの生地でつくられた「紅はるか」は楽しいパンです。S字に焼かれたその中に、オレンジピールとサツマイモがぎっしり、包み込まれているのです。今の時期だけのパンは、まだいくつかあって、「ラムマロン」(230円)もおすすめです。これはサクサクの層が秀逸な「クロワッサン」(200円)の生地で、ラム酒漬の渋皮栗とアーモンドクリームを包んでいます。なにやら贅沢な気分になるのは、たっぷり使われた、芳醇なラム酒の香りのせいでしょうか。 何かが過剰だとか、変わっているとかいうものはなく、普通のパンなのですが、食べてみると、ちょっとした驚きがある。味や食感に楽しいリズムがある。それがBAKERY CONTRASTが提供する、日常の中の、非日常のひとときかもしれません。 光と影、明暗どちらもあるからこそ、かたちが立体的に際立つように、パンのおいしさもまた、職人がデザインする味や食感のコントラストの絶妙なバランスで、できあがっているのだなぁと感じました。
■BAKERY CONTRAST(ベーカリー コントラスト)
住所:大田区北千束1-62-1 石田ビル1F
電話:03-6421-4727
営業時間:9時~18時(売切れ次第終了)
定休日:月・火曜
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東急大井町線大岡山駅徒歩6分