自動車保険/自動車保険の選び方と比較ポイント

自動車保険料が下がっているって本当なの?

2018年は多くの保険会社が保険料を平均で値下げする改定を行いました。「保険料が下がっている要因」「直近の改定の見通し」「自動ブレーキ(ASV)割引」など、保険料の注目動向をご紹介します。

執筆者:平野 雅章

  • Comment Page Icon
自動車保険がさがり驚く女性

自動車保険料が下がっている

2018年は多くの保険会社が保険料を平均で値下げする改定を行いました。このところ保険料が下がっている要因、直近の改定の見通し、そして衝突被害軽減ブレーキが装着されている自動車の保険料を割引する「自動ブレーキ(ASV)割引」の新設について、ご紹介します。
 

自動車保険料に大きな影響を与えているのは?

各損害保険会社による保険料の決定に大きな影響を与えているのが「参考純率」です。私たちが支払っている保険料は、事故が発生した場合に保険会社が支払う保険金にあてられる部分(純保険料)と、保険会社の必要経費などにあてられる部分(付加保険料)からなります。損害保険会社が純保険料率を算出する基礎として使用できるのが参考純率です。参考純率は損害保険料率算出機構が、会員である損害保険会社から報告された契約・支払いに関するデータを基に、社会環境の変化も考慮して算出し、会員会社に提供しているものです。

自動車保険の参考純率は、毎年度、適正な水準であるかどうか検証されています。改定の必要があれば、同機構が金融庁長官に改定の届出を行い「合理的か」「妥当か」「不当に差別的ではないか」という保険料率の3つの原則について審査を受けます(適合性審査)。適合している旨の通知を受けると、参考純率が使用できますが、使用は義務ではないため、参考純率改定への対応内容や時期などは損害保険会社によって異なります。改定の届出からおよそ1年から2年弱で各損害保険会社が対応することが多いといえるでしょう。そのため、直近の自動車保険の参考純率の改定届出の内容を見れば、各保険会社の保険料改定のポイントや背景、次の改定の見通しがわかるのです。
 

2017年5月届出の参考純率改定の内容

それでは、ここ数年の参考純率の改定内容を確認してみましょう。まず、2017年5月に届出された改定です。大きくは次の3つの内容です。損害保険料率算出機構が挙げている理由と共に確認していきましょう。
 
(1)自動車保険の参考純率を平均で8%引き下げ
(2)運転者限定で「家族限定」の区分を廃止
(3)新規契約に適用する等級における年齢条件区分を廃止

 
(1)の背景としては、対物賠償および車両保険において、契約1台あたりの保険金が近年減少していることがあります。理由として、ASV(先進安全自動車:Advanced Safety Vehicleの略)の普及が進んでいる点です。ASVとは、AEB(衝突被害軽減ブレーキ:Autonomous Emergency Brakingの略)などの運転者の安全運転を支援するシステムを搭載した自動車のことで、国土交通省は交通事故を減らす目的でASV推進計画を進めています。日本国内で発生した交通事故の件数を見ても、2015年は約53万7千件、2016年は49万9千件、2017年は約47万2千件(前年比-5.4%)と着実に減っているといえるでしょう。 (警察庁交通局 「平成29年中の交通事故の発生状況」)
 
(2)の背景としては、運転者の範囲を限定しない契約と「家族限定」の契約との間のリスク較差がなくなっていることが挙げられています。世帯構成の変化やライフスタイルの変化などにより「家族限定」にしていた契約が「本人・配偶者限定」の契約に移行したこと、「友人など」家族以外の者に車を貸す機会が減少したことが理由です。
 
(3)の背景としては現在、若年者が新規契約する場合は非常に不利な保険料率になってしまうためです。新規契約者は過去の事故歴がないため一律6等級新規になりますが、この新規等級には年齢条件区分(全年齢補償、21歳以上補償、26歳以上補償)が設けられています。通常の年齢条件区分は新規契約者も継続契約者も適用されるため、継続契約との公平性の観点から適切とは言えなくなり、新規等級に設けている年齢条件区分は廃止されることになりました。
 
 実際の各保険会社の対応を確認すると、(1)に関しては2018年に数%の保険料引き下げを行った保険会社も多く、下げ基調にありました。しかし2019年は10月に予定されている消費税率の引き上げで事故時に負担する保険金の支払額が増えることが見込まれています。直近では豪雨や台風などによる自動車の損害も大きく、大手損害保険各社は2019年の自動車保険料を据え置く方針との報道もあります。また、(2)と(3)については、現時点(2018年10月)で2019年1月からの導入を発表している保険会社もあり、2019年以降に導入されるものと思われます。現在、「家族限定」で契約している人は、運転者限定なしの契約にすると保険料が上がることになるため心配されるかもしれませんが、家族限定の割引率は約1%前後と既にわずかであり、ほとんど影響はないと考えても差し支えない程度でしょう。

参考:損害保険料率算出機構「【自動車保険】参考純率改定のご案内」(2017年5月11日金融庁長官への届出、2017年5月30日適合性審査結果通知受領)
  • 1
  • 2
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます