時代を超えた不朽の名作が来日『コーラスライン』
8月15~26日=東急シアターオーブ、8月29日=神奈川県民ホール大ホール、8月30日=アクトシティ浜松大ホール、8月31日~9月2日=オリックス劇場、9月5~9日=東京国際フォーラムホールC
【『コーラスライン』見どころ】
演出・振付家マイケル・ベネットの代表作と言われる本作を今回、手掛けるのは、初演でコニー役を演じ、演出助手も勤めたバーヨーク・リー。はじめのセッションから参加し、本作を知り尽くす人物です。キャスティングではベネットに倣い、俳優たちと話をし、キャラクターに近い感情を引き出せた者を採用しているそう。おのずから“はまり役揃い”のキャストが、個性豊かなキャラクター達をどう演じるか、注目されます。
観劇レポート:夢を持ち続け、“懸命に生きる”ことの輝かしさを示す舞台
「これで合格だ!」と喜んだのもつかの間、12人の俳優たちは演出家ザックから「自分自身について話してくれ」と言われ、戸惑いながらも俳優の道を選んだ理由を語り始める……。
実際のオーディションさながらの”リアル”さを追求
緊迫感漂うなか、てきぱきと運んでゆく舞台。ザックの感情を排した声と、俳優たちの一喜一憂がコントラストを成し、またしばしば客電(客席の照明)がフルに明るくなることで、観客は本物のオーディションに紛れ込んだかのようなリアリティを味わいながら、成り行きをみつめます。屈託なく自分史を語る者もいれば、容姿や性、家庭環境に起因する心の傷を思い切って、あるいは淡々と語る者も。
細やかで味わい深い”キャシー・ダンス”
様々な人生が語られ、それぞれに印象を残しますが、とりわけ目を奪うのが演出家の元・恋人で一度はスターの座を掴みながら、ハリウッドで売れず、NYに戻ってきたキャシー。プライドを捨ててオーディションに参加した彼女は演出家に直談判し、その訴えは本作のビッグ・ナンバーの一つ“音楽と鏡”へと続きます。この日のキャスト、マディソン・ティンダーさんは、はじめは自分のダンス・テクニックを確認するように鏡に向かい、徐々に自信を得て最後には何かに突き動かされるように踊る過程を、きめ細やかに表現。頂点とどん底を味わってきたキャシーの“執念”を、あますことなく伝えます。
自身をさらけだし、俳優という仕事への情熱を確認しあう俳優たちの間には、ある種の連帯感が生まれ、観ている側にも彼らへの愛着が湧いてきますが、ザックは選考結果を発表。夢は見る人すべてが叶えられるものではない、という非情な“現実”を突き付けます。
それでも……と、とっておきのフィナーレが用意されているのが、本作の特色。眩いばかりのその数分間は、夢の成就に関わらず、それに向かって懸命に生きる人生がどれほど輝かしいものかを、マービン・ハムリッシュの心躍るナンバーに乗せ、雄弁に語ります。キャラクターそれぞれのエピソードをナチュラルに“自分の物語”化して演じるキャストを得た、今回の『コーラスライン』。今を生きる観客にビビッドに届き、エネルギーを与えてくれる舞台となっています。
『コーラスライン』公式サイト
*次頁で『オペラ座の怪人 ケン・ヒル版』をご紹介します!