うつ病の発症率は4人に1人? 誰もが無関係ではない心の病

うつ状態で落ち込む家族

心の病気の中でも多い「うつ病」。もし家族がうつ病かもしれないと思った場合、どう対応するべきでしょうか?


うつ病は数ある心の病気のなかでも最も頻度の高い疾患の一つ。発症率に関するデータにはかなりの幅がありますが、数値の高い報告では、一生のある時期にうつ病と診断され得るほど抑うつ症状が強く現れるのは、およそ4人に1人とも推定されています。うつ病を発症する可能性は、誰しも無縁ではないと考えておくことが大切です。

そしてうつ病を発症した場合も、発症後の経過にはかなりの個人差があります。数週間で回復する人もいれば、数カ月を要する人もいますし、また、1年、2年と、抑うつ症状が年単位で長引いてしまう人もいます。

こうした多様な経過をたどる可能性がある中で、最も良好な回復につなげるためには、早期に必要な治療を開始することが大切です。今回は、家族にうつ病の可能性を見出した場合、気づいた家族はどうするべきか、当人に病院受診をどう切り出していくべきかなどを解説します。
 

本人にうつ症状の自覚がない場合、家族の適切な判断が重要

精神症状は周りの人から見ると異変が明らかでも、本人に自覚がないことも少なくありません。うつ病も同様です。気持ちが落ち込んでいて普段とはかなり違う状態でも、それがうつ病に関連がある症状であるという自覚がないこともあります。

本当にうつ病を発症している場合、うつ状態だという自覚がなくても、頭の中では繰り返しネガティブな思考が起こりやすくなります。食欲や睡眠の変化も現れやすくなり、周りにいるご家族などは、当人が何か問題を抱えていることに気付きやすくなるでしょう。うつ病は病院を受診して必要な治療を始めないと、状況が深刻化していく可能性もあることを、しっかりと頭に入れておいてください。

まずは家族が正しい判断基準を持ち、異変からうつ病の可能性に気づくことが大切です。
 

本人へのうつ病の可能性の切り出し方・病院受診のすすめ方

それでは、自覚のない本人に、うつ病の可能性や受診についてはどう切り出すのがよいでしょうか?

本人にうつ病かもしれないという自覚がない場合、周りの方がその可能性を指摘しても、話がしっかりと頭に入らないことがあります。また、場合によっては当人が元々うつ病に対して、ネガティブな印象を持っており、自分がうつ病かもしれないことを認めたくないこともあります。

さらに、うつ病になると何をするにも億劫に感じたり、頭の回転が通常より大幅に遅くなる可能性もあります。通常ならば合理的に理解できるはずの話でも、合理的に受け止められなくなることも珍しくありません。そのため、家族が親身になって、病気の可能性があることや受診の必要性を丁寧に説明しても、頑なに病院受診を拒んでしまうこともあります。

まずは丁寧に説明・説得をすることが大切です。そうした際に家族に求められるのは、精神論的なことになってしまいますが、何よりも辛抱、忍耐です。適切なアプローチ方法は状況ごとに違ってきますが、本人が怠け心などでそのような態度を取っているわけでないので、まずは感情的にならないことが大切です。

もし少し感情的になるような場合があったら、それがエスカレートしないようにありたいです。たとえば、「少し感情的になってしまったから、自分は頭を冷やしに少し散歩してくる。でもあなたを心配しているから、こうなったのよ…」など、その後のコミュニケーションにつながるような中断を置いてから、また当人にそれを切り出してみるなど、気長に接することも心がけてみてください。

一般的に多くの方に効果がある具体的な方法としては、家族に限定せず、当人が最も信頼を寄せている人、言葉を変えれば、その人の話ならしっかり耳を傾けられるような立場の方から病院受診を切り出してもらうことも方法の一つです。しばしばよい結果につながるアプローチ法だと言えます。
 

うつ病の家族への接し方・上から目線や誤解は禁物

病院受診を切り出す際、もしかしたら言われた方は上から目線でアドバイスをされたと感じて心を閉ざしてしまうことがあるかもしれません。

もちろん当人の単なる誤解であることも少なくありません。実際にうつ病による心理的な症状として、自分に自信がなくなったり、それゆえに劣等感を覚えやすくなったりすることがあります。こうした心理的な問題から、親切なアドバイスが上から目線の嫌な言葉のように捉えられてしまうことがあります。

一方で、実際にそれを言った方に、そうした気持ちを抱かせてしまうような態度があった可能性もあります。その原因として考えられるのが、うつ病に対するよくある誤解です。例えば、うつ病は心の弱い人がなる病気、といった誤解もよくあります。うつ病を発症したということは、心が弱いということだから、うつ病経験のない心の強い自分が、心の弱い相手にアドバイスしてあげなくては、といった気持ちがもし頭の中に少しでもあれば、それが相手に伝わり、上から目線で言われたような気持ちになってしまう可能性もあります。

うつ病を発症するか否かに心の強弱はあまり関係ありません。うつ病は脳内の機能に問題が生じるために起きる問題です。それは抗うつ薬などで対処すべき問題で、心の持ちようではありません。必要な治療を始めない限り、周りの叱咤激励などに効果があまりないことを、ご家族はしっかり頭においていただきたいです。
 

家族から死にたいという言葉が出た場合の対処法

また、仮にもしそうした状況で、自殺をほのめかすような言葉が当人の口から出るようなことがあれば、周りの方は決して聞き流さず、その言葉を深刻に受け止める必要があります。死にたい気持ちが強まることは、うつ病による最も深刻な症状の一つです。実際に自殺者の半数近くが、その時点でうつ病と診断されるレベルの問題を抱えていたと推定されています。

もしも死にたいといった言葉が出た場合は、それを聞いた人だけでなく、家族全員で緊急性の高い問題という認識を持ち、対処すべきです。適切な対処としては、基本的にはその時点ですぐ病院を受診することが望ましいです。そして実際に病院を受診されるまで、不測の事態を防ぐためにも、ご家族の誰かが必ず当人のそばについて一人きりにしないようにするなど、その場に応じた可能な限りの最善の対処を家族全員で考え実行したいところです。
 

最後に・うつ病の家族の病院受診に家族が付き添うべき理由

以上、今回は病院受診を前にご家族が当人にいかにそれを切り出していくかなど基本的なポイントを解説しました。

そして、実際に病院受診される際は、ご家族が付き添って、可能であればご家族全員で揃って行かれることを強くおすすめします。それは精神症状を評価する際、どのような問題が当人にあらわれているのかをはっきりさせていくためには、当人が感じている症状だけでなく、周りのご家族が感じている問題も伝えることがとても重要だからです。

また、病院受診時に当人の症状がうつ病のようであっても、その後の経過からうつ病以外の心の病気を発症していたことが判明する可能性もあります。

最後に繰り返しますが、うつ病やその他の心の病気は、より早く必要な治療を開始することが、スムーズな回復にはとても重要です。早期対応ができるよう、適切なタイミングで受診につなげてください。
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