マンション物件選びのポイント

西向きのマンションや部屋のメリットとデメリット

日本では日当たりのよい南向き住戸に人気があり、その次に東向き、北向き、西向きと続きます。しかしタワーや高層マンションでは南向き以外の住戸も充実し、迷った人もいるでしょう。今回は「夏に暑い」イメージがある西向きの住戸のメリット・デメリット・対処法に注目します。

井上 恵子

執筆者:井上 恵子

住まいの性能・安全ガイド

西向きはダメなのか

日本では日当たりがよく明るい「南向き」住戸に根強い人気があります。そのため、マンションでも一般的に南向き住戸をなるべく多くとれるような配置計画を行います。一方、近年では大規模マンションを中心に同じマンションの中に「東西南北」どちらの向きの住戸もあるという物件も増えています。

大規模マンションでは東西南北全てに面する住戸があるケースも多い。

大規模マンションでは東西南北全てに面する住戸があるケースも多い。


このように住戸の向きの選択肢が増えた今、「南向き以外でも大丈夫なのだろうか」と悩んだ人もいるのではないでしょうか。そこで今回は南向き以外の方位の中から「西向き」マンション・「西向き」部屋に注目し、メリット・デメリットを考察してみましょう。

西向きの部屋の例

【図1】はタワーマンションの間取り例です。住戸自体は南西角に位置していますが、リビングダイニングと3つの個室が西向きに配置されています。

【図1】南西角住戸の間取り例

【図1】南西角住戸の間取り例


3つの個室は「西向き」の窓しかありませんが、「真西」ではなく方位が少し南寄りに触れているため、南向きの特徴と西向きの特徴を享受する部屋となります。

西向きマンション・住戸の特徴

西向きの部屋のイメージは「夏に暑い」ではないでしょうか。その理由としては、夏場、朝から時間が経つにつれ各室の室温が上がったところで、午後になると西向きの部屋には直接日射が入ってくるため、さらに部屋が暖まりやすく、西向きの部屋で特に暑さを感じやすいからと考えられます。夕方に向けて時間が進むと太陽高度が低くなり、部屋のさらに奥深くまで日射が入ってくるでしょう。

一方、部屋が暖まりやすいということは、冬場はその分、光熱費をかけずに暖かい室内環境を得やすいと考えることができます。

西向きマンションのメリット

西向き住戸の西向きの部屋は、午前は窓から直射日光は入りませんが間接的な明るさがあり、午後になると窓から日射が入り込むため部屋はより暖かくなり、夕方遅くまで日が当たる明るい部屋となります。

【図1】の住戸は少し南に振れた西向きなので、西向きの窓しかない3つの個室には昼前から直射日光が入ってくるでしょう。反対に、北に振れている西向き住戸であれば、直射日光が差し込むのは昼過ぎになります。どちらの方向に振れているかによっても多少条件が変わってきます。

昼過ぎに干しても洗濯物が乾きやすい

昼過ぎから活動を始める暮らしをしている人であれば、午前中に窓から差し込む日射によって眠りを妨げられることはなく、昼過ぎに洗濯物を干しても乾きやすく、夕方まで室内が明るいという西向き住戸のメリットを享受できるでしょう。

西向き住戸なら洗濯物を干す時間が遅くても乾きやすい

西向き住戸なら洗濯物を干す時間が遅くても乾きやすい


安く購入できることも

もう一つの大きなメリットに住戸の販売価格があります。同じマンションで南向きとそれ以外の方位では、南向き住戸に最も高い価格がつけられることが多々あります。もしあまり南向きにこだわっていないのであれば、その他の方位の住戸を選ぶことで費用を抑えることができます

西向きマンションのデメリット

西向きマンション・西向きの部屋のデメリットは、繰り返しになりますが室内が暖まりやすいため「夏場に部屋が暑く感じる」ことです。この現象については、建物側の工夫や、入居後の工夫で和らげることができます。

西向きマンション・部屋の対処法(1)庇、バルコニーの出幅

もし西向きに大きな窓がついている住戸であれば、その窓の上に直射日光を防ぐ深い庇やバルコニーがついているかどうかをチェックしてください。上階のバルコニーの出幅が充分であれば、直射日光をカットしてくれるでしょう。

西向きマンション・部屋の対処法(2)複層ガラス

次に、窓ガラスの種類を確認してください。窓ガラスと言えば以前はガラス一枚の単板ガラスが一般的でした。単板ガラスの窓の場合、窓を通して外気の影響を受けやすく、家が夏は暑く冬は寒くなる原因となっています。しかし、新築マンションをはじめ比較的新しいマンションでは複層ガラスが普及しています。複層ガラスは2枚のガラスで空気(またはアルゴンガス)をサンドイッチしており、光は通しつつ熱の出入りを最小限にとどめ、断熱効果を高めています

西向きマンション・部屋の対処法(3)Low-E複層ガラス

複層ガラスよりもさらに断熱効果を高めた「Low-E複層ガラス」を使用しているとなお良いでしょう。複層ガラスの一方のガラスの内側に特殊な金属膜をコーティングし、より断熱効果を高めています。西向きの窓では日射の侵入をカットしたい「遮熱型」のLow-Eガラスが入っていると良いでしょう。Low-Eガラスは複層ガラスよりも高額になるため、一般部には複層ガラス、気になる窓にはLow-E複層ガラスと使い分けをしている物件もあります。

西向きマンション・部屋の対処法(4)風の通り道

暑くなりがちな西向きマンション・部屋ですが、室内に風が取りぬけると暑さはかなり和らぎます。マンションの上階になるほど良い風が取りこめます。平面図を見て、風の入口となる窓と出口となる窓が対面についていると理想的です。

西向きマンション・部屋の対処法(5)
遮熱カーテン、ハニカムブラインド

西日対策には、上記対処法の(1)~(3)までご紹介したように「室内に入る手前」で何かしらの対策を行うことが最も効果が見込めます。しかしマンションの場合はすでに形や窓の仕様が決まっており、購入者がどうにかできる部分ではありません。

ハニカムブラインドは断熱効果が高いブラインドです

ハニカムブラインドは断熱効果が高いブラインドです


もし上記の対策が見込めない場合、入居後に自分でできる対策として、窓の内側に設けるカーテンに「遮熱レースカーテン」「遮熱カーテン」の採用を検討してみてください。窓際から室内に入る日射をカットしてくれます。

また、最近注目されている「ハニカムブラインド」を採用してもよいでしょう。ハニカムブラインドは断面が六角形になっている、断熱効果の高いブラインドです。トーソー、ニチベイ、ハンターダグラス、セイキ総業、ルーセントホームなどのメーカーが取り扱っています。

おわりに(方角を気にする人へのアドバイス)

日本では南向き住戸に根強い人気がありますが、先ほども触れたように、南向き住戸の販売価格は同じマンション内の他の向きの住戸より高くなる傾向があります。

例えば夫婦共働きで日中は留守にすることが多いなど、ライフスタイルによってはあまり日当たりや明るさにこだわらず、柔軟に、別な向きのマンション・住戸を検討しても良いかもしれません。その分、同じ価格でより面積の広い住戸を見つけたり、より駅に近いマンションが選べるかもしれません。

眺望やその他の部屋の条件も併せて総合的に判断する


タワーマンションをはじめとする高層マンションの上階で周囲に何も遮るものがなければ、どの方位でも暗いということはない。南向きや西向きの部屋ではしっかりとした遮熱対策が必要になる

タワーマンションをはじめとする高層マンションの上階で周囲に何も遮るものがなければ、どの方位でも暗いということはない。南向きや西向きの部屋ではしっかりとした遮熱対策が必要になる


大規模マンションでは、同じマンション内でも南向き以外の向きの住戸も充実し、選択肢が増えます。タワーマンションをはじめとする高層マンションの上階で周囲に遮るものがなくなると、南向き以外、例えば北向きの住戸でも間接的な明るさを得るため、暗いということはありません。そして眺望という付加価値も加わるため、総合的にどの方位を選ぶか検討することになるでしょう。

またリビング・ダイニングが「西向き」だとしても、妻住戸や角住戸であれば、そのほかの部屋は南、東、北に向いている間取りもあります。リビングダイニングだけではなく、その他の部屋についても各方位の特徴と照らし合わせ、ご自身のライフスタイルに合う快適な室内環境を得られそうか、合わせて確認するようにしてください。

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