角部屋と中部屋の違い
角部屋(かどべや)とは、マンション住棟の端に位置し、基本的に住戸を囲う壁4面のうち3面が外気に開放されている住戸のことで、中部屋(なかべや)とは基本的にバルコニー側と共用廊下側の2面のみが外気に開放され、両脇は別の住戸に挟まれた住戸を言います(【図1】参照)。
角部屋のメリット
角部屋は、住戸の3方面が開放されていることから以下のメリットを享受できます。・窓が多いので、通風や採光条件がよい(【図2】参照)
・一方向だけでなく、多方向の景色・眺望を楽しむことができる
・窓が多くとれるため間取りの自由度が高くなり、個性的な間取りを見つけることができる
・住棟の両端にあるため、面する共用廊下を歩く人は中住戸よりも少なくなる。従ってプライバシー性が高くなり、共用廊下からの騒音の心配が少ない
・中部屋より住戸面積を広く取っている住戸が多い
・隣戸への騒音、または隣戸から受ける騒音の心配が中部屋より少なくなる
・3方向が開放されているため、開放感がある
角部屋のデメリット
角部屋は、外気に面する壁が多いということから以下のデメリットが考えられます。そのデメリットに対し、なにかしらの対策が取ってあるかどうかが大切です。■防犯性への考慮が必要
角部屋は窓の数(開口部)が多くなるため、その分防犯性を考慮することが必要です。
【対策例】バルコニーや雨どいなど不審者が侵入する足がかりがある「狙われやすい窓」には、ダブルロックや面格子、防犯センサーなどの防犯対策を取っている。
■光熱費が高くなることも
室内の冷気・暖気は主に窓を介して外に流出するため、窓が多い角部屋は室内環境を保つために中部屋より光熱費が多くかかる傾向があります。
【対策例】ペアガラスやLow-Eガラスなど断熱性能に優れた窓の採用。
■夏は暑く、冬は寒くなる傾向がある
外壁や窓が多い分、中部屋に比べ室内の温度は夏は高く、冬は低くなりやすいです。
【対策例】断熱性の高いサッシの採用、壁や床下などに十分な断熱を施してあること。
■外部騒音の影響を受けやすい
交通量の多い道路や線路、駐車場などが近くにある場合、それらの外部騒音の影響を受けやすいです。
【対策例】騒音元に面した窓には遮音性の高いサッシを採用している。
■住戸価格や賃料が高くなる
住戸面積が広くなり、通風・採光条件が良いなどのメリットを考慮して、住戸の価格が中部屋に比べ高くなる傾向があります。
【対策例】角部屋のメリットと中部屋との価格差に納得がいくかどうか検討する。
中部屋のメリット
中部屋は、基本的にバルコニー側と共用廊下側の2方向のみ外気に開放されており、そのことから以下のメリットが考えられます。・窓の数が限られるため、戸締りがラク
・窓の数が限られるため、少ない光熱費で室内環境を保ちやすい
・窓の数が限られるため、角部屋よりも外部騒音の影響を受けにくい
・角部屋よりも住戸面積がコンパクトな間取りが多く、面積が小さい分、販売価格や賃料、マンションの共益費が安く済むことも
中部屋のデメリット
中部屋は、窓の位置・数が限られることから角部屋に比べ以下の傾向が見られます。ただし、住まいに何を求めるかは各家庭それぞれであり、その傾向を「特に問題ない」と思えばデメリットではなくなります。■画一的な間取りになりやすい
窓の数が限られることから角部屋に比べると間取りの自由度が低いです。そのため例えば田の字プランに代表される画一的な間取りが多くなる傾向があります。
【対策例】ご自身にとってその間取りの使い勝手がよいか、広さはちょうどよいかなどを確認。
■通風・採光はバルコニー側と共用廊下側に限定される
通風・採光を得るのはバルコニー側と共用廊下側の2面に限られるため、通風・採光条件は角部屋より劣ります。
【対策例】玄関ドアの脇に通風用の小窓を設けたり、リビングドアに通風ガラリを設けるなど通風に工夫をしている間取りもある。
■共用廊下からの騒音
共用廊下側を歩く靴音や話し声が気になることもある。中部屋は共用廊下側に寝室が配されることが多いため、共用廊下で発生する音をどう対処するかがポイントになります。
【対策例】防音性のあるサッシの採用、プライバシー性や防犯性に配慮してルーバーを設けるなど。室内側に遮音カーテンを設けるなどの対策も効果が見込める。
角部屋と中部屋、どう選ぶべきか
賃貸住宅の中には角部屋も中部屋も同じ間取りで賃料を一律にしている物件もありますが、分譲の場合は角部屋の面積を広くするなど付加価値を高め、その分高く販売するケースが多く見られます。角部屋と中部屋とどちらを選ぶかどうかは、通風・採光・眺望条件へのこだわりや周辺環境、間取り、広さなど、それらの条件と住戸価格や賃料のバランスを見て検討すべきであり、一概にどちらが良いと言えるものではありません。
その家にいる時間が長いのか、外に出ている時間が長いのかなど、住む家族の生活スタイルによっても住まいに求める条件は異なります。ぜひ、ご自身にあった住まいを見極め、選ぶようにしてください。
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