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新学期に子供が抱える不安感……不安定な心を親はどうサポートする?

新学期が始まる4月は、子供が不安やストレスを抱えがちです。親は子供の不安定な心の変化をどう受け止め対応していくのが望ましいのか。しっかりと見守っていきたいところですね。子育て心理学の側面からお伝えしていきます。

佐藤 めぐみ

執筆者:佐藤 めぐみ

子育てガイド

子供の不安定な心をサポート【新学年、新学期向け】

新学期、子供の不安定な心をサポート

4月は子供の心が不安定になりがちな時期、親はどう支えていけばいい?

新たな学年がスタートしました。お子さんの幼稚園生活、学校生活は順調でしょうか? この時期は、子供たちが不安を抱えやすい時期でもあるので、しっかりと見守っていきたいところ。

そこで今回は、この時期に子供によく見られる園や学校への不安感や抵抗感にフォーカスし、それに対し親ができる心理的サポートについてご紹介していきます。
   

4月にママが陥りがちな悩み

新しいクラスになって少したったこの時期。毎日楽しそうに通ってくれていれば、万々歳ですが、
  • 玄関で毎朝ぐずる
  • 教室の前で泣きつく
  • 明らかに楽しんでいない顔をしている
こんな状況を目の当たりにすると、ママは心配になります。その後、数日~1週間、なだめたり励ましたりしながらなんとか通わせても、いっこうに改善の気配が見られないと、しだいに「何でうちの子はいつまで経っても慣れないの?」と思い悩んでしまいます。

その時、ママの心の中では、様々な葛藤が飛び交います。よくあるのが、次の3つのパターンです。

■他の子との比較
「仲良しの〇〇ちゃんはもうすっかり溶け込んでいるのに、うちは全然ダメ…どうして?」

■自分の幼少時との比較
「私が小さい頃は毎日学校が楽しくて仕方なかったのに…どうしてあの子はイヤがるの?」

■自分の育児に対する不信感
「もしかして、私の育て方のせい? 私がこれまで守り過ぎたの? もっと外に出すべきだった?」

こんな思いが、頭の中をぐるぐるとめぐってしまうのです。

何か問題が発生すると、その原因を探ろうとするのは自然な心理であり、解決への一歩を踏み出そうとしているのですから、前向きな姿勢です。でも、その方向性を間違ってしまうと、母子で大きなストレスを抱えてしまうこともあります。上に挙げた「比較パターン」「自責パターン」は、いずれも、視線が我が子からそれてしまうため、残念ながら改善はしません。逆に、子供を責め、自分を責め、気分は落ち込むばかりです。
 

子供のせいでもママのせいでもない

新しい環境に対する反応というのは、その子それぞれ違うもので、実際、入学式当日から楽しめる子もいれば、1か月経っても慣れない子もいます。

なぜAちゃんには楽しい学校が、Bちゃんには怖い学校になってしまうのでしょうか?

それは、同じ刺激でも、その子によって感じ方はまったく違うからです。そしてその違いには、その子が持って生まれた気質が大きく関係しています。

アメリカの心理学者であるトーマス博士らが実施した「ニューヨーク縦断研究」では、子供の気質の分類を調べるために、心理テストや観察、両親、教師からの聞き取り調査などを行いました。それによると、生まれて間もない赤ちゃんの段階で、すでに固定化した気質や気性が備わっており、それに伴い行動の傾向や感じ方も違ってくるということです。

その研究データから、新学年スタートの今の時期に関係する項目をいくつか挙げてみると、
  • 活発なタイプか、消極的なタイプか
  • リズムある生活を好むか
  • 変化のある環境が好きかどうか
  • 新しい環境にすぐなじめるか
この辺りも、もともとの気質や性分である程度決まっています。つまり、今の時期特有の悩みは、その子の持って生まれた性格的なものが大きく影響しているわけです。
 

クラスに数人はゆっくり環境に慣れていくタイプ

この研究で得たデータをさらに解析すると、「ゆっくり適応するタイプ」の子が全体の15%いることも分かりました。4月に新しいクラスになって間もない今、クラスの1~2割の子がまだまだなじめない日々を過ごしているということです。

感情というのは、伝染することがよくあります。子供たちはとくにそうで、いったん楽しいモードになると、その輪がどんどんと他の子にも伝わっていきますが、不安感や恐怖心も同様に、みんながビクビクしていると、自分も怖く思えてきた、ということがよくあります。

新学年というのは、子供の1年の中でも一番大きな環境の変化と言えるでしょうから、データ上では15%ですが、実際にはそれ以上の子が、まだ不安な思いを抱えていると考えられます。

このように、この時期の不安感は、非常によくあることで、その子の気質と新学年という特有の雰囲気がもたらす現象です。気質というのは、ママが頑張っても変えられるものではありません。「ゆっくり適応するタイプ」で生まれた子が、「すぐに適応するタイプ」には変わらないのです。今、お子さんが不安を抱えている様子なのは、ママのやり方のせいでもありませんし、お子さん自身のせいでもありません。自分のペースでことを運んでいるため、ちょっと時間がかかっているだけなのです。
 

子供が送ってくる不安のサインは早めにキャッチ

他の子がすでに楽しそうに学校に通っている姿を見ると、うらやましくなってしまいます。早くそうなってほしいと、親は急かしてしまいがちですが、そうしたところで何もいいことはありません。焦る気持ちから、「頑張って、頑張って!!」と子供の背中を押し過ぎると、余計に泣かれたり、はたまた行き渋りを起こしたりといいことはありません。

うちの子は時間がかかるタイプらしいと分かったら、まずやっていきたいのは、子供の様子をよく見ることです。普段から、ママは子供のことをよく見て、よく知っているものですが、この時期は、さらによく見てあげてください。そうすることで、その子が発信している「不安のサイン」に気づけるはずです。
 
  1. いつもより、距離が近くなった、やけに近づいてくる
  2. 甘え行動が増えている
  3. 家に帰ってきたとたん、はしゃぐことが増えた
  4. 聞き分けが悪くなっている
  5. 表情がない 無口になった

1~3は、不安を素直に表しているサインです。ママと一緒にいる時間に、自分の不安感を相殺しようとして出る行動です。

4と5は、1~3を超えたレベルで、上手く吐き出せていないときに多く見られます。よく見られるのが、ママが盛り上げようと子供を応援し過ぎてしまうケースです。

「ほら、いってらっしゃい」
「今日も絶対に楽しいよ」
「頑張ってね」
「明日も頑張ろうね」

ママが見送るとき、出迎えるとき、「頑張って、頑張って」ばかり言っていたら、子供は不安な気持ちを相殺する場を失ってしまいます。ママとしては、明るく盛り上げることで、子供を軌道に乗せてあげたい一心なのですが、この時期の子供たちが何よりママにしてほしいのは、あふれ出る不安な気持ちを救い上げてもらうことです。「さみしいのね」「今日もとっても頑張ったよ」そんな気持ちを受け入れてくれるママを求めています。

ママに必要なのは、「プッシュ、プッシュ!」ではありません。学校で十分すぎるほどプッシュされているので、家では、その跳ね返りを受け止めてあげてください。

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