「余生」は遥かかなたへ? 人生100年時代の新常識とは

60代で老後を語るのはまだ早い?「人生100年時代」をどう生きていくべきか

60代で老後を語るのはまだ早い?「人生100年時代」をどう生きていくべきか

定年まで勤め上げたら退職金をもらい、老後は年金でのんびりと余生を……。従来の価値観では、多くの人がこのような老後の生活が当たり前のものと考えていました。

しかし、日本の総人口が減少する中、2065年には2.6人に1人が65歳以上、4人に1人が75歳以上になるという予測もあり(平成29年版高齢社会白書)、将来的には年金のみを基軸にした生活は困難になることが予想されています。先進国でも同様に、平均寿命は延び続けています。海外の人口学者による研究では、2007年に先進7か国(G7)で生まれた人の半数が100歳以上まで生き、なかでも日本で同年に生まれた人の半数は、なんと107歳まで生きるという予測まであります。

人口減少と平均寿命の延伸が避けられない状況の下、政府では2017年に「人生100年時代構想会議」を設置し、人生100年時代を見据えた経済・社会システムを実現する政策の全体構想の検討を行う会議を重ねています。

これらの状況からも、65歳前後を現役引退・老後・余生と考える現行の概念は、早晩確実に崩壊していくと考えた方がよいでしょう。いくつになっても、身体と頭脳をできる限りフル活用して生きていく……。こうした生き方を真剣に検討していく必要がありそうです。

「働くセンテナリアン」に学ぶ100歳以上のポジティブ人生

「約半数の人が100歳以上生きる」……そんな世の中を想像しただけで気が遠くなる方は、少なくないかもしれません。しかし、100歳以上の人のことを「センテナリアン」と呼びますが、100歳を超えても現役として働き、社会に影響を与えている「働くセンテナリアン」が、現在でも実際に存在します。

聖路加病院名誉院長を務め、2017年に105歳で亡くなった医師の日野原重明さんは、「働くセンテナリアン」随一のロールモデル。大正3年生まれの女性カメラマン、笹本恒子さん(『好奇心ガール、いま101歳』小学館 2015年)や、明治45年生まれの現役サラリーマン福井福太郎さん(『100歳、ずっと必要とされる人』日経BP社 2013年)、73歳から絵画を習い始め、112歳になっても絵画展を開催した明治36年生まれの後藤はつのさん(『111歳、いつでも今から』河出書房新社 2015年)(享年113歳)、その他にも「働くセンテナリアン」のロールモデルが続々と登場しています。

働くセンテナリアンに共通する特性は、仕事を通じて人生を楽しんでいることです。仕事を苦労と思わず、働く喜びを実感していること。やりたいことに挑戦していること。様々な年代の人とかかわり、刺激を受けていること。よく笑い、よく食べ、体を動かしていること。身ぎれいにして、ときめきを忘れないこと。こうしたメンタリティや行動が、「働くセンテナリアン」でいることを可能にしているようです。

彼らのように、100歳を過ぎても現役で働く生き方は確かに驚嘆に値するケースです。しかし、彼らの生き方を参考にすると「人生100年時代」を生きていくことへの勇気が湧いてきます。「いい年をして」「老後だから」とレッテルを貼らず、常に自分を活かす道を探し、歩み続けていく姿勢が、超高齢社会を生きる私たちには必要なのではないかと思います。

新しいライフステージの時代の3ステップ

「このへんまで」と限界を設定せず、マルチプルな発想で仕事を開拓していく

「もういい年だからこのへんまで」と限界を設定せず、マルチプルな発想で仕事を開拓していく姿勢が重要になる

そもそも「人生100年時代」というテーマを世界に提起したのは、リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット共著によるライフ・シフト 100年時代の人生戦略(東洋経済新報社、2016年)という本です。同著の試算によると、100歳まで生きる人が増える場合、70代、80代でも働くことが求められる世の中になります。

こうした社会の変化に呼応し、同著では「教育→仕事→引退」という旧来型の3ステージの人生、すなわち、若い頃には教育に専念、中年までは仕事に専念、高齢期からは年金で余生を送る、といった「年齢によるライフステージの切り分け」がスタンダードではなくなっていくと予測しています。

これらに代わり、人々はどの年代でも未知の領域に挑戦し、新しいビジネスや生き方を開拓するマルチステージの生き方に移行していくと提起されています。その生き方には、エクスプローラー、インディペンデント・プロデューサー、ポートフォリオ・ワーカーという3つのステージがあります。

エクスプローラー
未知の物事を吸収し、異ジャンルの人々とかかわりながら、視野を広げていく探検者としてのステージ。

■インディペンデント・プロデューサー
独立した立場での生産活動を試行錯誤で始め、仕事や生き方を掘り起こしていくステージ。

■ポートフォリオ・ワーカー
異なる種類の活動を並行して維持、発展させていくステージ。

すなわち、従来のように「大企業に入れば一生安泰」「寄らば大樹の陰」といった発想では、人生100年時代を生き抜くことは難しいということです。安定した収入は細く長く確保しつつもその収入源だけに依存せず、個人での仕事のチャンスも切り拓き、マルチプルな発想で収入を得ていく発想が必要になります。

上記のマルチステージには、年齢の制約はありません。始めようと思った時に、いつでも始めることができます。また、リスクを分散させているために、一つの活動に不安が生じても他の活動でカバーすることができます。小規模から事業をスタートさせるため、利益化への見込みが薄い場合には、すぐに撤退することができます。また、いくつになっても新しい分野にチャレンジすることが可能です。

老化を恐れず、100年時代をポジティブに生きる心がけ

では、100年時代を生きていく私たちに今、求められることはどのようなことでしょう? 意識と行動の両方で考えてみましょう。

まず、意識の上では、人生を従来の常識よりも長いタームでとらえ、自分の人生を長期にわたって活かす道を考えること。「賃金労働者」や「年金生活者」という一定のペルソナにこだわらず、「現役と余生」や「若手と老人」という二極化の発想にもとらわれないこと。老後の延伸を恐れず、「活躍のチャンスが拡大している」と前向きにとらえること。

そして行動においては、多様な活動や人的交流を通じて刺激を受け、新しい社会の形成に参画する喜びを求めていくこと。常に新しい価値創造、ビジネス創造のチャンスを模索し、健康を増進しながら、収入を獲得していくこと。

このようにポジティブな意識を持ち、仕事の創造につながる生産的な行動をすることにより、老化に対する恐れや既成概念のリミッターが外され、生きるエネルギーが活性化していきます。すると、「自分の生命をギリギリまで有効に活用して生きていこう」という意欲が、自ずと湧いていくものと思います。
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